新メンバー2 タイガの森
その後いなかったメンバーも全員そろい、久しぶりのフルメンバー。
ギルドのレストルームの一角を占領した状態になっている。
二人はなんとか落ち着きを取り戻し今は大人しくしている。
「全員そろったね」
集まるだけで一騒動合ったけどそれはそれ、気を取り直していこう
チームメンバー総勢11名それにクル姉も加えて12名。
流石に大所帯になってきたな。
「さて、今日は報告が3件ある。1件目は新メンバーの紹介だ。クル姉」
「は、はい。クルクルです、棍術士です。よろしくお願いします」
先ほどとは打って変わって丁寧なあいさつをしている。
普段のクル姉はこっちなんだよな。
「よろしくな」
「どもっす」
「よろしく~」
「新人さんだ、信じんられないよ」
クル姉に続いて他のメンバーも挨拶をしていく、普段のクル姉は大人しめの文学少女と言った雰囲気なので初対面で喧嘩腰になるようなことはまず無い。
「・・・・・・」
無いはずなのだが何故かミニッツはいきなり喧嘩腰だ。
「まあ、一応歓迎するわ。よろしく」
「こちらこそ、さっきは子供相手に大人げない態度見せちゃってごめんね」
「良いのよ、確かに私の見た目は子供っぽいものね。でも大丈夫中身が子供の人よりずっとマシだから」
「・・・あらそう」(ニッコリ)
「・・・ええ」(ニッコリ)
怖ええっ。
何だこのヤバげな雰囲気、お互い笑顔のはずなのに文字にすれば一触即発だ。
周りのメンバーも心なしか青ざめているよ。
「センさん、ほら他の報告もお願いします」
「ああ、そうだね」
ヒナゲシに促されては無しを進める。
「次も新メンバーだね、尤もまだログインしてないけど。武器士で俺が使っているこの刀の製作者で名前はキアだ」
噂に関しては全メンバーが知っているので敢えて触れない。
「そして最後の報告、というか方針だが。そろそろチームルームを作ろうと思う」
チームルーム。
ギルドの奥にある水晶から行けるチーム専用の部屋。
実はチームランク2から作れたのだがなんやかんやと後回しにしてしまっていたな。
そのチームルームを作ろうと言うわけだ。
流石にメンバーも増えてきたし、そろそろギルドのレストルームの一角を占領するのも心苦しいしね。
「ついに専用の部屋っすか」
「楽しみですね~」
やっぱり専用って言葉は魅力的だよな。
早速ギルドカウンターへ向かいクエストの受領を行う。
「ああ、楽しみだわ。封札士でのチームクエストはどんなのになるのかしら」
ある意味このクエストを一番楽しみにしていたのはスイだ。
チームクエスト。チームで受けるクエストの総称だが、チームリーダーの職業によってその内容が微妙に変わる。
封札士という職業に就いているプレイヤー自体少ないし、尚且つリーダーまでやっているプレイヤーはそれこそ居ないだろう。俺以外には。
なので情報魔のスイにとって喜ばしい状況なのだろうな。
「早速、受けるか。っとその前にクル姉の加入だな」
ギルドに行きまずはクル姉の加入手続きを済ませ、その後にクエスト申請をする。
申請は無事受領され、「ミリオンカラー」に12人目の新しい仲間が出来た。
「改めてよろしく、クル姉」
「うん、お姉ちゃんはセンちゃんの為がんばるよ!」
出来れば俺だけじゃなくてみんなの為にがんばってほしいな。
「次はルームクエの申請か」
「わくわくっ。新しい情報が手に入るわ。これでまた攻略サイトが充実するわ」
スイ楽しみなのは分かったかから口にだして言うのはやめようね。
・チームルームクエスト
チームルームを作るのに水晶動力炉に使う水晶が足りない。
タイガの森に居る狩人ライツのもとに向かい依頼を遂行して水晶を譲ってもらおう。
「場所はタイガの森か、どういったところだ?」
「ほぉ、懐かしいな」
「タイガの森ってモンドくんが金剛壁なんて二つ名が付くきっかけになった場所じゃない」
そういえば以前そんな風に呼ばれていたな。
「あそこにはニードルタイガーってレイドボスが居てな。ベータ時代でのラスボス扱いだったんだよな」
そんなのが居たのか、まさかそいつを倒せなんてならないだろうな。
「狩人ライツってことは弓士がリーダーだったときと同じパターンね。会いに行くと森での採集依頼を受けるのよ、何を取るかはランダムなんだけどね。その代り量が多いからメンバー全員でかからないと時間内に終わらない仕様になっているのよね」
スイからの補足情報、なるほどそれならトイスが活躍する場面かな。
「良し、早速向かいますか」
タイガの森は商都の南東方向、魔都からすれば真南に位置する森で海に面している。
名前の由来は森を二分する大河と森のボスに当たるニードルタイガーの二つかららしい。
「森の西側はサカイの森に近いせいでたまに混同する人がいるのよね。でも出現する魔物の強さが違うから間違って入り込むと瞬殺されるわよ」
「それにしても大河って言うほど川幅は無いっすね」
トイスの言う通りせいぜい広めの川っと言った程度だろうか。
その大河(?)の川べりに一軒の小屋がある。そこにNPCのライツが居るみたいだ。
「ちなみにいつ行っても居るよ」
「狩人じゃなくてニートですか~」
そこは言ってやるなよ。NPC的には正しいんだからさ。
小屋の扉の前に椅子を置き、そこに座っているNPCががライツかな。
「すみません、ギルドから依頼を受けてきたのですが」
「はい、話は聞いていますよ。水晶炉に使う水晶ですね」
声を掛けてみると対応してくれた、スイの情報によればこれからライツから依頼を出させるはずだ。
「実は水晶を渡す前にひとつお願いを聞いてほしいんですよ。見てのとおり足を怪我してしまいましてね。それで私の代わりに森の中から素材を集めてきてください」
確かによく見てみると足に包帯が巻いてある。
なるほど予想通り収集系のクエストか。
森の中は危険な魔物も徘徊しているし収集物の量もあるみたいだしな、たしかにこれはチームでやらなきゃクリア出来ないクエストなんだろう。
「集めて来てほしいのは「針虎の牙」でしてな。これを一つ持ってきてください。対象の魔物はニードルタイガーです」
・・・・・・ん?
いま何か有り得ない対象とアイテム名を言われた気がするぞ。
クエスト情報を確認してみると確かに「針虎の牙」と書かれている。制限時間もだ。
「なあセン、俺の聞き間違いじゃ無ければニードルタイガーとか言ってなかったか」
「・・・そうね、私もそう聞こえたわ」
「そうだな、クエスト情報にも書かれているよ」
ニードルタイガーって森のボスだろ!なんでクエスト対象になっているんだよ!
「スイ、どういう事か分かる?」
「そんなこと言われても。ルームクエストで対象がニードルタイガーなんて聞いたことないわ」
スイも知らないか。それ以上に問題なのは。
「モンド、この人数と構成で倒すことは出来るのか?」
「まず、無理だな。少人数でも倒す方法は確立されてはいるが今はまだ無理だ」
「牙だけ取る方法は」
「無いな、牙は討伐ドロップアイテムだ」
「残り時間1時間。街に戻って人数募集は」
「厳しいな、レイドボスは事前の準備をするのが一般的だよ。今から行って人を集めようとしても殆ど集まらないよ」
「そもそもチームクエストだからチーム所属してないといけないわよ」
割と八方ふさがりの気がする。
「ルームクエストの採集目標はランダムだって聞いたことあるわ、まさかそれでボスドロップになった可能性が?」
スイが推測をしてくれている。
「ほーほっほっほっお困りの様子ね。私が来たからにはずばっと解決してあげるわ!」
「あ、どうもこんにちは」
やたらと高飛車な笑い声と女性と気の抜けた感じの声を掛けてきた男性。
「久しぶりね。封札士師弟コンビ!」
自称天才人形師のレムと魂魄士のノット。
技能職姉弟コンビがそこにいた。




