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Heroes Guild Online  作者: ムムム
弱者の迷宮
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弱者の迷宮6 人物当て~解答編~

《徳川家光》


 ミニッツがディスプレイに答えを打ち込むと部屋の右側の壁が開き次の階層への階段が現れる。


「解説はいる?」

「「お願いします」」


 スイと一緒になって頭を下げる。

 なんでこんな答えになるのかが理解できない。


「まず最初の問題文を思い出しなさい」

「確か「彼は幼い頃から朝早く「早起きは三文の得だ」と周囲の人間に話していた」だっけ」


 スイがメモを見ながら答える。

 徳川家光はこんな事言ってたのだろうか?


「そこじゃないわよ、最初の問題文は《この階層に隠された歴史上の人物を答えよ》よ」

「あ、そっち」

「ポイントになるのは《隠された》って部分ね。この階層で隠されているものが名前のヒントになるのよ」


 どういう事だろうか?


「今回の問題だと「早起きは三文の得」の部分だけど、正確には得じゃなくて徳なのよ」


 指で空中に字を書きながら解説する。

 「早起きは三文の」これが正しいことわざらしい。


「つまりこの時点で徳が得にすり替えられ隠されているわけよね。次に床下の水、流れがあるところから「川」だと思うのよ、つまりあの部屋には「徳」と「川」が隠されていたってわけ」

「つまりその隠されたふたつで「徳川」になるわけか」

「徳と得の違いに気付かなかったら川に関しても解らなかったでしょうね。「徳」が解ったから「徳川家」って連想が出来たんだし。「徳」の字を持つ歴史上の人物だと「徳川家」が真っ先に浮かぶでしょ」


 何とか納得は出来た。

 それでもデタラメな推理な気がしないでもないがな。


「じゃあ「家光」の方は?」

「二つ目の部屋の様子ね、おそらく「光」を隠したから部屋中が真っ暗闇になっていてその暗闇の中に「家」を隠したってところでしょ」

「暗闇だから光を隠したって発想は普通出てこないと思うんだけど・・・」

「まあ、普通ならね。ただ「徳川家」って部分には行き付いていたから、あとは歴代の将軍の中で該当するのを考えていけばいいのよ」


 その二部屋を合わせて「徳川家光」って答えなのか。


 普通の人では絶対に答えなんか出せないぞこれ。


「正直ミニちゃんの頭の中身がどうなっているのか一度見えてみたい気がするわ」

「見ることが出来ても理解出来ないと思うけどな」

「まったく、好き勝手言ってくれるわね。論理的に考えて答えを出しているだけよ」


 論理的ではあっても常識的ではないな。


「まあ、答えが出たみたいだし次の階層に進みましょうか」

「そうだね」


 その後もミニッツ無双とでも呼ぶべく状況が続いた。


「ここは途中にあった数字の羅列がいくつか有ったでしょその数字を逆から計算していけばこの問題の答えに行き付くわよ」

「その数字は32桁で5か所もあったんだけど・・・」



「車輪の絵の違和感に気付かなかった?本来、女神には目隠しがされているのが正しいのよ」

「いや、タロットの絵柄は普通知らないから!」


 随時こんな感じで進んでいく。

 ミニッツの頭が良いのは分かっていたつもりだけどまだ本気じゃなかったみたいだね。


 そうして第9階層をクリアして10階層に足を踏み入れる。

 10階層の扉にも今までと同じように問題が書かれていたがその内容が今まで通りでは無かった。



《最終問題・勝利しろ》


「どうやらここが最後みたいだけど、勝利しろってどういう事かしら」

「ゲーム的に考えれば対戦相手が存在するってことでしょ」

「レイドボス的なのが居るのかしら?だとしたら3人じゃ勝ちようが無いわよ」


 スイもそうは言いながらもそれは無いと考えているのか軽い感じだ。

 何せここは「弱者の迷宮」強さではなく知恵が試される迷宮ダンジョンだ。

 となれば知恵比べが行われると考えるのが妥当か。


「ここで考えてもしょうがないわ。入るわよ」

「了解」「分かったわ」


 念の為としてスキルで罠を確認しながら扉を開け中に入る。

 その部屋はサッカー場の半分より少し広い程度であり天井は見上げても確認できないほどの高さがある。

 だがそんな部屋の広さ以上に目を引く存在が部屋の奥に存在していた。

 何せその部屋の広さの半分近くも占領している巨大な人面獣身の魔物。

 謎解きと言われれば真っ先に思い出すであろうその魔物の名前は――。 


「よく来たな挑戦者たちよ。我がこの迷宮の最終関門だ」


 スフィンクス。

 有名な謎かけモンスターがその場に鎮座していた。


「そういえばこの迷宮は砂漠のフィールドにあったんだっけ、なるほどね」

「・・・冷静に分析してないでよ」


 ミニッツは巨大な魔物を前にしても欠片も怯える気配はなく、逆にスフィンクスを観察しだす始末。


「我を見ても怯えぬか。流石、我が相手に相応しい娘よ」

「あら、その様子だと今までのぞき見していたのかしら。あまりいい趣味とは言えないわよ」

「今まで見ていたのは確かだ。故に我が出てきたのだ」

「その口ぶりだとあなた以外の相手も居るってことなのね」

「然り、挑戦者の力量によって問いも階層数も最後に相手をする我も変わる。汝の相手は最難関である我が相手をすることになる」

「挑戦者によって?なるほどね。センの耳があったからスキルを使わなきゃ解けないような問題が出てきたのね」


 スフィンクスと会話をしながらも情報を集めていく。

 この辺りの駆け引きは流石としかいいようが無いな。


「それであなたとは何で勝負すればいいの?まさかこのまま戦闘バトルって訳じゃないでしょ」

「そうだな、汝らがそれを望めばそれでも構わぬが、そうなると汝らの勝ち目は無いぞ。尤も知恵比べで合っても我は負ける気はないがな」

「そうね、戦闘バトルだと勝ち目は無さそうだけど知恵比べならこちらも負ける気はないわよ」


 お互いに一歩も引く気が無い挑発合戦、緊張が高まっていく。


「くくくっ、このような楽しい会話を続けるのもやぶさかではないがいい加減勝負と行こうか」

「ええ、それで何で勝負をするつもり」

「勝負の方法、それは「しりとり」だ」


 ・・・は?

 しりとり?

 物凄く緊張が高まっていたお蔭でしりとりの単語が出た瞬間、気が抜けたぞ。

 尤もそうなったのは俺とスイだけで対峙している二人(?)はそうでもないみたいだ。


「もちろん、ただのしりとりでは無い」

「まあ、当然よね」

「準備をする、しばし待て」


 そう言った瞬間スフィンクスの足元から巨大な魔法陣が出現し部屋いっぱいに光があふれだしてきた。

 光が収まるとそこには無数の武器、防具、アイテムが散乱していた。

 剣、槍、斧のような武器から盾、鎧、革靴、兜などの防具。

 それにポーション類に装備品を作成するための素材まである。


「勝負名は「デリートアイテムワード」この場にある道具を使ったしりとりだ」


読者に挑戦的なお話しはここまでです。

次回、ミニッツVSスフィンクスの頭脳対決!

になったらいいなと考えている。

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