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Heroes Guild Online  作者: ムムム
弱者の迷宮
90/100

弱者の迷宮5 人物当て~問題編~

《この階層に隠された歴史上の人物を答えよ》


「今度は人名みたいね」


 第2階層を抜け第3階層に到着。

 その扉に書かれていた問題だ。


「流石にこの時点で答えは解ってないわよね」

「解ってたら人間じゃないわ」


 流石にこの問題に妙な仕掛けは無いだろうからそのまま扉を開け先に進む。

 何の変哲もない通路を抜けて最初の部屋に着く。


「ここは?」


 それほど大きくはない部屋、敵も居ないでそのまま素通り出来そうな部屋だ。

 特徴を上げると言えば右側の壁に何かしらの文字が書かれているぐらいだ。


「罠が有ったりしないわよね」

「この迷宮の性質上あまり気にしなくても良いとは思うわよ。それに警戒はセンがしてくれているのでしょう」


 当然だ、部屋に入る前にもちゃんとスキルで調べてある。何もなかったけどな。

 それでも念のため警戒しながら壁の文字に近づくとそこにはこう書かれていた。


《彼は幼い頃から朝早く「早起きは三文の得だ」と周囲の人間に話していた》


「・・・歴史上の人物を当てるのよね?」

「・・・たぶん、そのはずだが」


 何と言えばいいんだろう?牧歌的?道徳的?


「早起きと言えば・・・ナポレオン?」

「それは3時間しか寝てないって話で早起きとは関係ないような」


 ナポレオンが言ってたらギャグだよ。

 ナポレオンもそうだが、こんなエピソードを持つ歴史上の人物は覚えが無いな。


「兎に角これが第一のヒントなのよね」


 スイがメモを書いている間、周囲をもう一度調べるがやはり何も見つからない。

 と思ってたら何故かミニッツがうつ伏せになり耳を床に付けていた。


「ミニッツ・・・何しているの?」

「・・・・・・水」

「は?」

「セン、スキルで床下を調べてみてくれないかしら」


 ミニッツに言われた通りに蝙蝠の耳で床下を調べてみると。


「隙間?それに水かな、流れがあるな」


 スキルで分かるのは床の下に空間があり水が流れているってところか。

 水の中まで調べる事が出来ない蝙蝠の耳では流石に水深までは調べられない。

 ミニッツに言われなければ気づかなかっただろう。


「・・・なるほど、この部屋で苗字ね、他に見るものは無さそうだから次の部屋に向かいましょ」

「そうなの?他にヒントはないの?っていうか苗字?」

「無いわね。ここに書かれている文章と下に流れている水がこの部屋のヒントの全てね」


 この文章、それに水の流れと苗字か。


「スイ解ったか?」

「ダメね、欠片も解らないわ・・・」


 だよなぁ。

 だけど今回はミニッツもヒントを出してくれている。

 水や苗字がそうだな。逆に言えばヒントを出さないと答えられない問題だと判断されたのかもしれないな。

 とりあえず次の部屋にあるヒントで何か解ることを期待しよう。

 そのまま分岐の無い通路を進み次の部屋を目指す。


「今の部屋で苗字なら次の部屋で名前のヒントがあるってことかしらね」

「流れ的にはそうなるんだろうな、だけど正直この階層の答えを出せる自信が無い」

「私もよ」


 既に答えを出す気力が無くなっている。

 それでもミニッツは解っているらしく進む歩にも迷いは無い。

 そうして進んで行ったのだがその先に在ったのは黒い壁だった。


「行き止まり?」


 スキルを使い壁などもチェックしていたが隠し通路のようなものは無かったはずだ。

 どこか見落としでもあったのか?

 そう思いながらも黒い壁に向かってスキルを発動させると、そこには何も反応が無かった。


「これ、通れるな。行き止まりじゃないぞ」


 突き当りの壁に触れようと手を伸ばすとそのまますり抜けていく。

 そのまま部屋の中に顔を入れるがそこは真っ黒で何も見えない。


「あぁ、闇魔法で部屋の中を見えないようになっているみたいね。セン、あなたは見えるの?」

「一応ね、見える。と言うよりスキルで認識しているんだけど」


 行き止まりでは無く、文字通りの「一寸先も見えない闇」か。探知系のスキルが無ければこの階層は詰むな。


「そう、とりあえず部屋の中に入りましょうか、ほら、早くしなさい。私は暗闇の中を迷わず進めるようなスキル持ってないんだから」


 そういって差し出してくるミニッツの手を握る。

 VRヴァーチャル越しとはいえミニッツの手を握るのは小学生の時以来か。


「あ、それなら私も、持ってないわ」

「な、うぁ!!」


 空いている方の腕を抱え込むようにスイがしがみ付いてくる。そうなると当然、柔らかい感覚が二の腕の辺りにしてくる。なんだこれ!


「ちょっスイ!離れなさいよ!」

「あら、私だって暗闇の中では何も見えないんだからこうするしかないじゃない」

「だ、だからってそんな風にしがみ付くなんて、ハレンチだわ!」

「ふっふぅ。そうね、じゃあ手をつなぐだけにしましょうか」


 スイが離れた、少し残念だ。


「・・・セン」

「な、なにも考えてませんよ!」


 ・・・般若ミニッツに睨まれた。


「繋ぐのは手だけにしておいてくれ、後が怖い」

「当然よ。・・・私だってまだそこまでやってないのに」

「仕方がないわね、今日のところはここまでにしといて上げるわ」


 改めて手を繋いで部屋の中に入る。

 部屋の中は完全な暗闇で何も見ることは出来ない。

 スキルの使用によって周囲の状況は分かるので俺自身は問題が無い。

 ただ手を繋がれているだけの二人にはかなり怖い思いをさせているんだろうな。


「二人とも大丈夫か」

「ええ、問題はないわ」

「私もよ」


 頼もしい限りで。

 スキルを使いながら部屋の中を進んでいく。

 蝙蝠の耳のスキルで把握できるのは自分を中心に半径5メートルほどだ、その為それより広い部屋の中全てを一度に把握できることは出来ない。

 少しづつ部屋の中を把握しながら進んでいくとそこに一軒の建物があった。


「これは、何の建物だろう」

「何か見付かったの?」

「ああ、建物みたいなんだけど。なんだこれ?


 一見するとただの民家だ。

 もちろん世界観に合わせた様式には成っているが何の変哲もないただの一軒家だな。


「詳しく調べる前に一度部屋を抜けたほうがいいよな」

「そうね、何もないとは思うけどこんな何も見えない暗闇のなか取り残されるのは勘弁したいわ」


 部屋を少し進むと出口に到着、二人をそこに置いたまま部屋の中に引き返し部屋の中をもう一度探索。

 そこで分かったことは部屋の中は学校の体育館程度の広さで中にあるのは途中で発見した家だけ。


 平屋建ての家で扉には鍵は掛かっていなかったので中に入ってみた。

 入ってすぐに食事をするための部屋らしくテーブルと料理をするための炊事場がある。

 その奥に続く扉を開けると廊下があり、いくつかの扉。

 扉を開けると眠るための簡易なベットがあるだけだった。

 収穫もなく部屋を抜けて二人が待つ通路に向かう。


「戻ったよ・・・スイどうした」


 暗闇を抜けて通路に出ると何故かスイが頭を抱えていた。


「ああ、センくん。なんかね、ミニちゃんはもうこの階層の答えが解ったみたいなのよ」

「・・・は?」


 ちょっと待て、問題らしい問題は最初の部屋にあった一文だけだろ、それでなんで答えが出てくるんだ。


「さあ、先に進みましょう。おそらく三番目の部屋は無いわよ」


 ミニッツの宣言通り通路の奥には解答を打ち込むためのキーボードとディスプレイがあった。



《この階層に隠された歴史上の人物を答えよ》


 最初の部屋と同じ問題が書かれていたが、分かりませんとしか答えようがなかった。


自分で作成しといて今回の問題は流石に理不尽かと思っている。

解答編は12日の0時に投稿します。

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