弱者の迷宮3 地水火風~問題編~
《地は割れ、水は増え、火は駆け巡り、風は轢く。始まりの数は3である》
これが第2階層の扉に書かれた問題だ。
「どういう意味だと思う」
「・・・そうね、これだけだとまだ確信は持てないけど多分、」
「ちょっと待ってミニちゃん」
ミニッツが問題に対しての考えを答えるところでスイから待ったがかかった。
「なによ、スイ」
「ここは私にもやらせて貰えないかしら」
「どういうこと?」
「いやね、ミニちゃんだけに負担かけるわけにはいかないでしょ。ひとりで全部を熟そうとするのは大変じゃないかしら」
「本音は?」
「せっかく面白そうな迷宮なんだから参加しないわけにはいかないでしょ」
同感だな。
確かにミニッツに任せればこの手の迷宮のクリアは簡単だろう。
そうすると俺とスイはただ付いていくだけになる、それは流石に面白くないな。
「だな、楽しまなきゃ損だ」
「センも同じ意見なのね」
「まあな、俺とスイで最初考えるから、無理だと思ったら任せるよ」
「ふぅ、仕方ないわね。私一人で全部答えるのも確かにつまらないものね」
「・・・と言うよりミニちゃんが全部答えられるのは確定しているのね」
「当り前でしょう」
「何をいまさら」
改めて問題に向き合う。
扉に書かれている文字そのものには特別何か仕掛けはなさそうだ。
「地水火風、所謂四大元素よね」
「それに始まりの数の3ってのは何だろうな」
「ねえ、ミニちゃん。念のため聞くけど答え解っているのよね?」
「今はまだ答えはまだ解らないわよ」
今は、か。
「取りあえず先に進んでみようか、そうすれば何か分かるかもしれないからね」
「そうね、問題もメモったし行くわよ」
扉を開けるとそこは一本道になっていた。
念のため蝙蝠の耳を発動させるが何の仕掛けもないただの通路だ。
警戒しながらも通路を進んでいくとやがて教室大の広さの部屋に出た。
そしてそこに居たのは3匹のスライムだった。
色は赤くコアの部分が若干炎の様に揺らめいているところ以外は変わったところが無い。
「名前はフレイムスライムか。謎解きの迷宮でも戦闘はあるみたいね」
「そうみたいだな」
刀を鞘に納めたまま二人を守るように前に出る。
まだ距離があるからなのか震えるだけでスライムからの攻撃はまだない。
「倒していいのだろうか・・・」
「大丈夫よ。問題ないわ」
ミニッツが言うなら大丈夫だろ。さっさと倒すか。
「・・・センくんのミニちゃんに対する信頼感が若干怖いわね」
「当り前でしょう。私たちは幼馴染なんだから」
「それだけじゃないようにも見えるけどね」
後ろの方から呑気な会話が聞こえてくる。
気にしてもしょうがないので一気に間合いを詰めて居合斬撃でスライムの1匹に攻撃を加える。
1匹目はあっさりと死亡。そのまま返す刀で2匹目に対しても攻撃こいつも一撃で倒すことが出来た。
仲間を倒されてやっと動き出した3匹目はミニッツの放った銃弾でこれまたあっさりと死亡。
スライム3匹を倒すのにものの十秒も掛かっていない。
「弱いわね」
「弱いね」
「まあ、こんなもんでしょ。強くする意味なんてないんだし」
スライムのあまりの弱さに拍子抜けしたがミニッツだけは納得している。
ひょっとして弱いことが問題に関係あるのかな。
「関係は無いわよ、強くても弱くても同じ。まあ強かったら倒すのに苦労するかなって程度ね」
心読まれた?
「でもコアの様子は炎って部分は重要よ」
「扉の問題にあった「火は駆け巡り」の部分ね」
「そうは言うけど駆け巡りって言うほど速くも強くなかったよな」
「そうね」
ミニッツはこちらの言い分に同意する。
つまり強さは駆け巡りに関係は無いってことか?
その後念のために部屋の中を探索するが何も見つからず、そのまま真っ直ぐに出口に向かう。
しばらくまた分岐の無い通路を進んでいくと次の部屋に到着した。
部屋の大きさは炎スライムと同じ程度の広さだが変わった点がひとつあった。
「・・・これってプールかしら」
そう、その部屋は全面に水が張ってある。言うなればプール部屋だった。
「水は増え・・・の部分かしら。つまりこの部屋の水は増えた状態なわけ?」
「そうなのかしら、そうじゃないかもしれないわよ」
部屋は段になっているので通路にあふれてくることはないが部屋の向こう側に行くには水の中を進まなければならない。そしておそらくこの部屋にも魔物はいると思われるがどうも水が光を反射していて魔物の様子はよく見えない。いることは分かるんだけどな。
「蝙蝠の耳でも駄目だな。水の中までは聴けないや」
「そう、困ったわね。水の中にどんな魔物が居るか気になるんだけど」
「それなら任せなさい、伊達に水魔法を習得してないわよ。こういったときに使える魔法が有るのよ」
徐にスイが持っている杖を水の中に浸けてからスキルを発動させる。
「水流探知」
スイがスキルを発動させると水の透明度が増したのか水の中を泳いでいる魚のような魔物が5匹見える。
水深はだいたい胸辺りまでかな。
「このスキルで出る情報はパーティーで共有できるのが強みなのよね。使いどころが少ないけど・・・」
「十分よ」
そういって銃を取り出し1体1体確実に仕留めていく。
「さ、終わったわ。次行きましょ」
「いいのか?」
「何がよ?」
「いや、何か確認しなきゃいけないのが有ったんじゃないのか?」
「ええ、有ったわね。でもすでに確認済みよ」
ミニッツは一体何を確認したんだろうな、聞いても良いんだろうけどそれだとつまらないしな。
とりあえずこの部屋での出来事は水の部屋で魔物を確認してそれをミニッツが撃ち倒して終わりっと。
一体何を確認したんだろうな。
「・・・それよりセン。お願いが有るんだけど」
「なに?」
ミニッツにしては珍しく、少し口ごもっている。
「その・・・肩車してくれないかしら」
「・・・ああ」
一瞬何を言われたのか理解できなかったけど部屋の様子を見てすぐに思い至った。
ミニッツは泳げなかったんだよな。
ミニッツを肩車しながら部屋を横断、魔物も居ないのでただ濡れるだけである。
「そういえばゲームなのにカナヅチって関係あるのか?」
「確かに水泳って泳げるようになるスキルはあるわね。尤も無くても泳げなかったって報告は無いのだけれど。あれば速く泳げるようになるって感じだし。そもそもカナヅチな人での検証がないから何とも言えないわね」
「・・・水泳ね」
覚える気満々だね。
「出来たら結果教えてね」
スイはブレないな。
3つ目の部屋は一つ目の部屋と同じように何も仕掛けの無い部屋だ。
そこに在ったのは5つの岩だ。
いや、もしかして在るじゃなくて居るかな?
「ふーむ、名前はロックボール。れっきとした魔物みたいね」
梟の眼で確認したスイが教えてくれる。
なるほど、つまりここは「地は割れ」の部分になるわけか。
「こちらから仕掛けなければ何もしてこなさそうだけど倒しといたほうがいいのかな」
「無視して通り過ぎた場合のパターンもいづれ取りたいけど今は普通にクリアしたいわね」
「了解」
せっかくなので封札してある合魔物ルートを呼び出しいっしょに戦ってみる。
結果はまあ、相手が弱すぎて参考にならなかったとだけ言っておこう。
3つ目の部屋の先の通路を抜ける。
次の部屋に在ったのは魔物ではなくパソコンのディスプレイのような板、それと0から9までの数字が書かれたボタン。つまりテンキーがあった。
《我が問に答えよ。この階層の示す数字は何だ》
ディスプレイの上には扉に書かれていたのと同じように問題が書かれている。
「つまりここに扉に書かれていた問題の答えを打ち込めば良いわけね」
「そうみたいだな。それでスイ、答えは解ったのか?」
「・・・そういうセンくんは?」
お互いに沈黙。
「ミニッツ一応聞くけど答えは解っている?」
「ええ、打ち込んでみないと合っているか判らないけどたぶん正解よ」
たぶん正解なんだろうな。
とりあえずまあ考えますか。
解答編は12日の0時投稿予定です。




