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Heroes Guild Online  作者: ムムム
合魔物
82/100

合魔物7 作戦会議1

長くなったので2話に分けてあります。

次話は1時間後です。

「それではPKのクロイス討伐会議を始めます。その前にまずは自己紹介でもしましょうか。では姐さんからどうぞ」

「姐さんじゃねえ!親方と呼べ!」


 全員がそろい丸テーブルに着いたところでヤクミチが口を開く。

 ところでそのやり取りは毎回やるつもりか?

 それとPKの名前初めて知ったな。


「あー、とりあえず今回の発起人はあたしだ。名前はカンリ、武器士をやってる。よろしくな」

「次は俺ですね。ヤクミチ、薬士をやってます。とは言えここに居るメンバーとは全員顔見知りなんで必要もないんですけどね」


 まず生産職の二人からの自己紹介。

 微妙にヤクミチの丁寧語が気持ちが悪い。


「順番から行くと私でしょうか」


 自己紹介の順番は席の座り順らしくヤクミチの隣に座っていた姫様が口を開く。


「名前は春香と言います。春風騎士団のリーダーをやっています、風魔法術士です。よろしくね」

「自分の名前は天平。春香様親衛た、ごほん。春風騎士団の副リーダーで春香様を守る戦盾士だ」


 今、親衛隊と言おうとしてなかったか?


わたくしの高貴なる名前はレム、称え敬いなさい。職業は天才人形士よ」

「姉さんまたそんなことを、僕はノット。魂魄士です、よろしくお願いします」


 大盾を持った人形士の姉と軽装備と片手剣の弟の技能職コンビか。

 同じ技能職だから親近感が沸くな。向こうはどうだかわかんないけど。


「名前はセン、ミリオンカラーってチームのリーダーだ。職業は封札士」

「あ、あのアンズです。封札士です」


 これで一通りの自己紹介が済んだわけだが。


「封札士だと、役立たずの代名詞が二人もいるのか。自分たちはずいぶんとぬるい基準で集められたのだな」

「ダメよ天平くん、そんなこと言っちゃ」


 まあ、これだけ人が集まればそんな人も居るだろうとは思っていたが、まさかここまではっきり言われるとは思わなかった。


「そうではないか、そもそもPKひとり相手に8人も雁首そろえるなど、自分ひとり居れば事足りる」

「天平くん・・・」

「このような集まり意味は無い、春香様、役立たずどもは置いておいて早々に我々だけでPKを、ぐぁら!!」

「もう、私はダメって言ったよ、天平くん」


 何があったかと思えば春香さんの手からバチバチッと電気が発生していた」。

 あれってもしかして・・・。


「あ、これね。私雷魔法の使い手なの」


 あれは確か「雷手エレキハンド」。

 接近戦専用の雷魔法だ。一度だけだがスイが使っていたところを見たことがある。

 そしてその相手はレトだった・・・。

 レトに言わせると「スゲー痛い!」魔法らしいが・・・それを躊躇無く当てやがった。


「うちの天平くんが失礼しました」


 そう頭を下げてはいるが、足元に居る天平の頭をグリグリと思いっきり踏んづけているぞ。


「ハァハァ、春香様のお仕置き、ハァハァ・・・」


 あ、これってアンズに見せちゃいけないやつだ。

 すぐさまアンズの耳を塞いで顔を背けさせる。


「師匠なにかありました?」

「アンズは何も知らなくていいんだよ」


 いつからこのゲームは成人指定になったんだよ。


「・・・とりあえず座ってくれ。その辺りもことも含めてちゃんと説明するから」

「ふん、それはちゃんと納得いく説明なんだろうな」


 すでに立ち上がって先ほどの醜態など無かったかのように上から目線で問いかけてくる。すごいなこの人、呆れを通り越して感心するよ。ああはなりたくないけどね。


「そうだな、まず人数を揃えた理由だが、これは示威行為だと思ってくれればいい」

「示威行為ってことは、それを示す相手がいるってことですよね」

「ああ、そうだ。PKの後ろにはPK行為を利用している、正確には指示している奴らが居るんだよ」


 PK行為を利用?・・・あ、もしかして。


「人払いか」

「その通りだ。あの一帯からプレイヤーを追い払うことが、あのPKの目的だ」

「そういうこった。正確に言えばあそこでデミバンクルを狩ってるプレイヤーってことなんだろうが」


 ヤクミチの回答にカンリ姐さんが追加情報を加える。

 しかし人払いをして何の意味があるんだ?


「そいつらのチームを組んでないから名前は無いんだが、まあ敵対組織とでも呼ぶとしてだ。敵対組織そいつらの目的はデミバンクルから取れる属性石の独占だよ」


 つまりこういう事らしい。

 PKの妨害によってデミバンクルがマトモに狩れなくなるため属性石の需要が上がる。

 ただしPKを利用している連中は妨害が無いため安定して取ることが出来る。

 そして需要が高くなっている属性石を高く売りさばく。

 とこういった構図なわけだが・・・。

 そんな上手くいく訳が無いだろう、と言うよりかなり稚拙で単純な計画に見えるんだけどな。


「な、なんて緻密な計画なの、考えた人は天才かなにかなの・・・」


 思わず椅子から落ちそうになった。

 この人レム、結構ポンコツだ。


「はぁ・・・姉さん、そんなことないよ。色々ツッコミどころがいっぱいだよ」

「な、何言っているのかしら。そそ、そんな・・・こと・・・ないわよね」


 反論しようとしたんだろうけど周りの視線に気づいて声が小さくなっていく。


「稚拙で穴だらけの計画ではあるんだが、実際に効果は出てんだよ。属性石の値段は少しだが高騰している」

「2度とそいつらが馬鹿げた事が出来なくさせるようにする必要がある。そのためには下手なことをすれば徹底的に潰されるってことを理解させるのが一番いい」


 今回のようにPKを利用した商売はクラフトマンズ・ワークが提唱する「健全な商い」に反している。

 所属は違えど今回の様な行為がまかり通るようになれば生産職全体の信用にも関わることと重くみたらしい。

 ここで甘い対応をすると第2第3のPK計画が行われるかもしれない。

 そうさせない為に過剰とも言える戦力を揃えて徹底交戦らしい。


「これが人数揃えた意味なんだが分かってくれたか」

「・・・そういうことか」

「ふふん、わたくしは当然分かっていましたわ」


 抑止力。

 つまり今回だけでなくこの後のことまで考えた作戦ってことなんだろうな。

 下手なことをしても直ぐに潰す、自分たちにはそれだけの資金力と戦闘力がある。

 それを今回の相手だけでなく周りにも見せつけるのが目的なんだろうな。

キャラクタープロフィール

・カンリ

・武器士

・生産者チーム、クラフトマンズ・ワークのリーダー。

 武器職人としては一流、その生き方や考え方にほれ込む人が多い。

 ただし、なんでリーダーなんだと疑問に思われるぐらい何もしない人。

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