合魔物4 森の入口
準備万端、これから森へと向かう途中で知り合いに遭遇した。
「おう、センじゃねぇか」
「ヤクミチかこんなところで会うなんて奇遇だな。こんなところで何しているんだ?」
「まあ、ちょっと野暮用でな」
薬士のヤクミチだ。
前に会ったのは確かアリ退治の時以来か。
「そういやお前、チームリーダーになったんだな」
「そうだけど・・・なんでヤクミチが知っているんだ?」
特にそのあたりの話はしてないはずだけど?
「そいつはギルドにあるチーム一覧で知ったんだよ」
ヤクミチの説明ではギルドで登録されているチームは申請すればチーム名とそのリーダーの名前をチェックすることが出来る。
ついでに言えばチームリーダーの場合自分のチームのアピールなども書き込み出来るのだとか。
プレイヤーが自分に合ったチームを探す時に重宝するらしい。
「その中に見知った名前が有ったからな。覚えていたんだよ」
「そうなのか、ヤクミチはチーム探してるのか?」
「いや、そうじゃない。俺の場合は商売相手探しでだな」
「商売相手?」
「おう、俺は今「クラフトマンズ・ワーク」って生産者チームで副リーダーやっててな。生産者がチームに居ないようなとこを探して装備品の販売や素材の買い取りなんかの取引を持ち掛けたりしているんだよ。そのための情報集めに使っているわけだ」
なるほどね。
「どうだ、お前のとこも契約しとくか?」
「そうだな、考えておくよ」
リーダーを任されてはいるけど流石に即決できる内容ではないよな。
「そうだ、話は変わるんだがお前のとこから預かっている奴もだいぶマシになってきたぞ」
「預かっている?」
預かっている?誰だ?
「ほら、ミニッツの嬢ちゃんから紹介されたキアだよ」
キアか。
紹介ってミニッツはいつの間にそんなことをしてたんだ。
「あのバカがお前さんにやったことを聞いてな。うちのチームは健全な商いってのをポリシーにしているし。ああいった行為は他の生産職にも影響が出かねないし、当然御法度なんだよ。だからうちで預かって一から鍛えなおしてるところでなうちの鬼軍曹とも呼ばれるリーダーがかなり怒っていて性根を叩き直す!って張りきってるんだよな」
そうだったのか。
別にキアに対して俺個人はもう怒っているわけではないけれど他の生産職の人からすれば生産職をやっている人の全体の信用に関わる問題になっていたようだ。
まあキアのは自業自得だし、すでに俺に対しての行いと言うより生産職の信用に関わる問題になっているようだから、もう俺が口出しするような事じゃ無くなっているな。
「じゃあ俺はもう行くぜ。今度は何か買って行ってくれよ」
「ああ、じゃあまたな」
思いもかけず知り合いの近況が知ることができた。
ヤクミチと別れて森に向かうことにする。
準備もして森に到着。
ここで昨日のうちに森について調べたことを説明しておこう。
魔都の森、正式名称は「マナの森」と言うらしい。
森の中だけあって見晴らしも悪く、足場も悪い。
その為未だに森の奥の方は調査が終わってはいないので洞窟の存在が予想されている。
と、こんな感じに攻略サイトには書かれている。
つまりは広いだけで森自体には特殊な効果は今の所見つかってはいない。
その代りでは無いのだろうが魔物たちの方が色々厄介な特徴を持っている。
代表的なところでは傘犬こと「フライングアンブレラドック」。
姿を消す「ステルスネーク」。
ただの木にしか見えないが近づいたら攻撃を仕掛けてくる「ナチュラル・プラント」
見た目はただの石だが実は爆発して周囲に針を飛ばす毬栗「ボムマロン」。
この辺りだろうか。
この4種の魔物、ボムマロンは正確には魔物ではないがほぼ森の全域に生息していると報告されている。
そしてもっと厄介な魔物は「ワンダーエッグ」と言う魔物だ。
昨日のプレイヤーが言っていた化け物みたいな変な魔物ってのもこいつの可能性が高い。
こいつは特殊な行動をすることが多い魔都の森の魔物の中でもさらに特殊性が高い魔物だ。
姿はそのまま卵の様な姿なのだがプレイヤーが近づくと自分を中心に結界の様なものを作り出しそのプレイヤーを自分ごと結界に閉じ込める、そして卵自体を壊せばすぐに結界は消えるのだが、卵を割った時に魔物が生まれてくるのだ。。
その生まれる魔物はランダムで、ほとんどの場合は適正レベルの魔物が生まれるのだが、稀に手におえないような高レベルな魔物が生まれることが有る。
そうなった場合はまず確実に街に死に戻ることになるだろう。
卵から生まれた魔物自体は一定時間で消えるようなので後々のことは問題はないようだが、昨日のプレイヤーはおそらくだがまだ消えていなかった魔物と出会ってしまったのだろうな。
とりあえず攻略サイトでの森の解説はこの辺でいいかな。
そして肝心のクエストについてだ。
スランダが森での採集に指定したのは属性石。
この属性石は森に落ちているわけでは無くてある魔物を倒したときに出るレアアイテムだ。
その魔物の名前は「デミバンクル」。
額に石を付けたイタチのような姿をした魔物だ。
容姿を想像すれば分かると思うが所謂カーバンクルの亜種のような感じだ。いや、亜種と言うより劣化版かな。
カーバンクルの場合は額に宝石が付いているがこちらについているのは何の変哲もないただの石だ。
そのただの石が稀に属性石として取れるわけだ。
「早速、探すぞ」
「はい、師匠」
ただ探すと言っても森は広い。
さらにデミバンクルは数が少ないレア魔物扱いでしかもプレイヤーが近づくと逃げる特性がある。
そんなデミバンクルを最低でも10体・・・いや二人分だから20体は狩らないといけないのか・・・。
一日じゃ終わらないよな。
「とりあえず周りを警戒しながらデミバンクルが出やすいと情報のある地点に向かおう」
「はい、あっ師匠。あの石」
そうアンズが指定した場所にはこぶし大の石が落ちていた。
蝙蝠の耳のスキルで探査してみると中身の中心に栗がありその周りには針がビッシリと詰まっていた。 どうもボムマロンの様だな。
「よくわかったな」
「はい、あの石だけ他の石より少し温かかったので変だなって・・・」
蛇の眼か、意外と便利だな。
「あの石と・・・それとあの石もそうですね。それから・・・」
アンズが次々と落ちている石を指さしていく。
いくらなんでもあり過ぎだろう・・・。
「噂通りの油断できない森みたいだな。気を付けていくぞ」
「はい、師匠。・・・あの石もです」
かなり先が思いやられるな・・・。




