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Heroes Guild Online  作者: ムムム
合魔物
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合魔物2 魔都への道

「スランダってあんなキャラだったっけ?」

 

 スランダの住居兼研究室である倉庫を出てからの第一声がこれである。

 前にクエスト受けたときはそんなにしゃべるキャラをしてなかったと思うんだが、もしかして研究がうまくいきそうだからと興奮でもしているんだろうか?


「そうですか?RUクエのときもあんな感じでしたけど」

「そうだっけか?」


 そういえばそうだったような?

 確かあの時は今にも這い出てきそうな合成魔物クリーチャーのほうが気になって話聞いてなかったからな。

 もしかしてあの時に同じようにしゃべっていたのかもしれないな・・・。

 そうなのか?


「スランダのキャラことはこの際脇に置いておこう」


 掘り下げてもいいことはなさそうだしな。

 それでスランダから受けたクエストの詳細だがこういった感じだ。


・スランダからの依頼

 属性石を10個持った来てくれ。

 属性石(クエスト用) 0/10


 所謂、収集系のクエストだな。

 属性石とはスランダの台詞の中にも有ったが武器や防具などの製作の時に一緒に使うことによってその装備に属性を付与できるようになるわけだ。

 例えば火属性石の場合武器に使った場合は火属性攻撃に、防具に使った場合火属性耐性が付与されるといった感じだな。

 その為需要も多くまたレアな素材の為高値で売買されていたりする。

 正直高くて買えません。1個2個ならまだ買えるけど10個は無理。

 と思っていたら(クエスト用)と書かれていた。


 このクエスト用って表記が有る場合は通常のアイテム、今回の場合は属性石だがそれもクエストクリアのアイテムにカウントされるしそれ以外にも属性石(クエスト用)も同じようにカウントされるようになる。


 たとえば通常の属性石2個とクエスト用の属性石8個でもクリア条件は整うわけだ。

 そしてクエスト用と表記されている場合通常のものより集めやすくなっている。ただしクエストクリアにしか使えないので売ったり武器防具などに使うことは出来ない。

 実際レア度の高い属性石10個を自力で集めるのは無理っぽいしな。


「アンズは魔都には行ったことは?」

「まだないです。いずれ行かなきゃいけないんでしょうけど・・・」


 アンズは魔法系のスキル構成だしな。新しい魔法スキルを覚えるにも魔都は欠かせない場所だ。


「魔都へは徒歩での移動だな」

「はい、行きましょう。師匠」




 まずはハイジマの勇士像から商都まで転移して必要な消耗品アイテムを購入してから東門へ、ここからは徒歩になる。

 魔都への街道は戦都の時と同じで道に沿って進めば魔物には合わない仕様になっている。

 違いがあるとすれば戦都は砂漠の中に在ったため徐々に木々が無くなり荒れ地になっていったのに対して魔都は森の中にある街なので逆に木々が濃くなっていくところだろう。


「一応道を進んで行けば安全だとは理解しているけど・・・」

「今にも何か飛び出してきそうですね・・・」


 森は深く背も高いため街道の道幅は5メートルほどと余裕はあるはずなのに圧迫されているかのような感じを受ける。

 頭では大丈夫だとは分かるんだけどアンズの言うように何か出てきそうなんだよな。


「そんなこと言ってると本当に何かでるかもな」

「あ、それ知ってます。フラグってやつですね」


 一瞬の沈黙。

 お互い思わず顔を見合わせてしまう。


「そんなことないよな」

「そうですよねぇ」


 そういってお互い笑い合ってこの話は終わりと言った流れになったところで森の中から奇妙な叫び声のような声が聞こえてきた。


 再びお互いに顔を見合わせてから何が起きてもいいようにお互いに封札している魔物を呼び出し戦闘態勢に移る。

 徐々にその雄叫びの様な音が近づいてきているようだ。

 そして――。


「だああぁあぁぁぁぁ!!」

「!?」「ひゃ!」


 奇妙な雄叫びと共に森の中から一人のプレイヤーが転がるように飛び出してきたのは剣と盾を装備した典型的な片手剣スタイルの男性プレイヤーだった。


「ピンチ!ピンチ!どうする・・・。あんたら良いところに居た。ちょっと手伝ってくれ!」


 男性プレイヤーがこちらに向かって助けを求めてきたのだが・・・。

 森の中から緑色した空気の塊(のように見える)魔法攻撃が男性プレイヤーを吹き飛ばす。


「あ・・・光輪回復ライトヒール!」


 アンズがプレイヤーに対して回復魔法を飛ばしたがあの様子だと間に合ったかどうか微妙なところだな。


「くぅ~ん」


 プレイヤーを追いかけるように森の中から魔物が飛び出してきた。

 開いた傘を器用に前足で掴みフワフワと空中を滑るように飛んできた小型犬の魔物。

 「フライングアンブレアドック」、通称傘犬だ。

 見た目こそかわいらしい小型犬だが実に厄介な魔物として紹介されている。

 まず傘を使って音も無く飛んでいる為、察知系のスキルを持っていないと確実に先制攻撃を受けることになる。

 またその攻撃も風魔法なのでスピードが速く察知しづらい要因になっている。

 そして女性プレイヤーから「見た目が卑怯」なので攻撃が出来ないとも言われている。その理由は推して知るべし。


「ううう、わん!」


 回復魔法を使ったからか標的ヘイトをアンズに向けた傘犬が魔法をこちらに向けて放ってきた。


「っと封印シール


 だが魔法攻撃ならこちらのもの。遠距離攻撃は封札士には効かないよ、不意打ちですらない魔法なら封印してしまえば良いのだからね。

 封印が成功して魔法を封じられた傘犬は魔法が撃てなくなったためアタフタと慌て逃げようとするが、こちらも逃がすつもりはない。


光弾ライトブリット!」


 アンズからの攻撃魔法が傘の部分に当たり失速する、これなら追いつけそうだな。


斬撃スラッシュ!」


 走行ランの効果で一気に距離を詰めて背後から斬撃の一撃を加える。

 その一撃がクリティカル気味に決まり傘犬に止めを刺すことが出来た。




「そか、復活アイテムは無いのか」

「はい、すみません」

「ごめんなさい・・・」

「いいよいいよ。死んだのはこっちが悪いんだし」


 今自分たちが話をしている相手は先程吹き飛ばされたプレイヤー(絶賛死亡中)である。

 道の脇に死体の状態で倒れていてその上に半透明、通称幽霊の状態で浮いている。

 復活アイテムもしくは魔法があればスキルレベルの低下は免れないが一定時間のステータス低下、つまり喪に服す必要が無くなるため魔法やアイテムをほしがる人は多い。

 ただしそのアイテムは高い。


「しかし参ったね。変な魔物からは逃げ切れてたみたいだけどその逃げ切った先で傘犬からの不意打ち喰らっちゃうとはね。運が無いよ」

「・・・え?」

「本当、あんな化け物みたいなヤツとかち合っちまうなんてな。あんたも気を付けなよ。じゃあな」

「あ、ちょっと待ってくださ・・・間に合わなかったか」


 倒れていた死体がその上の幽霊ごと消えていく。どうやら町に戻ったみたいだ。

 それにしてもこれから行くだろう森に正体不明の魔物が居るだなんて情報を中途半端にしていかないでほしいな。

 これじゃあまるで・・・。


「あ、それ知ってます。フラグってやつですね」


 余計なことは言わないでほしいな。

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