合魔物
突然だが今自分は洞窟の内にいる。
パッティの森にある、例の墓がある洞窟だな。
一応チームが結成されてからの話をしておこう。
チームが結成されてからの最初の指示は全員のランクを3にすること。
あの時点でランク3は俺とレトとモンド、そしてリンドウもランク3だったらしい。
残りのメンバーはあと少しと行ったところなのでメンバー総出でのレベリングをして二日ほどかけて全員のランクを3にした。
そうして俺はアンズとふたりで洞窟に来たわけだ。
ここに来た理由は2つ。ひとつは転職クエストの為。
ランク3とランク6は他のランク少し変わっていて、そのランクに上がると同時に転職クエストが開始される。
その間他のクエストも受けることは出来るがギルドポイントは入らずお金だけもらえる状態になる。
この転職クエストがそのままRUクエストにもなっているのでクリアと同時に次のランクに進めるようになっている。
ただしとてつもなくメンドウで長いクエストだけどね。
ちなみに転職クエの第一試練はこれ。
・魔物を200体討伐 27/200
・魔物を100回封印する 13/100
・魔物を10種類封印する 4/10
第一と有るので当然第二、第三も存在する。
これらを全部クリアしてから出される最終試練をクリアすると晴れて中位職に転職出来る様になるわけだ。
ちなみに一回封印すればカウントされるので封札での封印状態を維持しておく必要はない。
シール&リリース。
それでこの洞窟に居る、コウモリ、ゴーレム、それとスケルトンの3種も封印しておこうとアンズと二人で来たわけだ。
そして目的はもうひとつ。
墓部屋にいるフーさんこと封滅師フウオウだ。
前回はまだ弱いと送り返されたけどあれからランクを上げたので再度チャレンジ。
どの程度まで強くなれば良いのか分からないので節目ごとに訪ねてみて反応を見てみようってことだ。
「いっけーケロピーちゃん!」
「行け!ウルフ」
そして今回意外に活躍しているのはアンズが封札して連れ歩いているケロピーちゃんことポイズンフロッグだ。
動きは鈍いのだが口から吐き出す毒の息がゴーレムに対してとても有効だったのだ。
ゴーレムは硬いのだがどうやらケロピーちゃんの毒が掛かったところは防御が弱くなるらしくその部分に攻撃をすると大ダメージを与えらる。
見た目に反してかなり有効な魔物だ。
敵として対峙した時は厄介極まりないけどな。
ちなみにウルフもコウモリ相手に役立ってはいる。主におとりとしてだけど・・・。
「師匠、ゴーレムの封印出来ました」
「おう、じゃあ残りはスケルトンだな」
転職クエストを進めながら奥の墓部屋へと進んでいく。
ランクもスキルも上がり相棒たちのお蔭でゴーレムやコウモリもそれほど苦労せず倒すことができる。
「着きましたね、師匠」
「そうだな」
墓部屋に到着。
例の封札された剣を持ったスケルトンが徘徊している部屋の奥にある謎のオブジェクト。
封札士の英雄フウオウが眠る墓が存在していた。
「さて、準備はいいか」
「はい、師匠」
「「封印」」
スキルの発動と同時に目の前が暗転してどこかに飛ばされたかのような感じを受ける。
そして目の前に、いや全方位に星空が浮かぶ。
どうやら前回と同じように転移出来たようだな。
「師匠、前回に来た時も思いましたけどきれいな光景ですねー」
「ああ、そうだな」
「ここは若人のデェトコォスとは違うんじゃがのぉ」
「うぁ!」
「はわ!」
突然後ろから声を掛けられて驚く俺たち。
気配も無く後ろに立たないでほしいな。
「お久しぶりです、フウオウ様」
「ん、お主らはこの間きおった小僧とお嬢ちゃんか。また来たのかずいぶん早いじゃのぉ」
改めてフウオウに向き直り挨拶をする。
「し、師匠とデデ、デートだなんてそんな。それって私がこ、ここいびっっ!」
何故かアンズがテンパっているようだけど。フウオウも若干呆れ気味だよ。
「それでこんなところに何のようじゃ、本当にデェトしにきただけではあるまい」
「あ、はい。実は失礼とは思いましたがフウオウ様の経歴を調べさせていただきました」
「ふむ、僕の正体を知ったわけだね。となると何を求めてきたのかはだいたい分かったよ」
そういってフウオウが札を取り出した瞬間また目の前が暗くなる。
また目を奪われたみたいだな。
「相変わらず良い眼だね。どれどれ・・・ふむ、二人とも以前よりかは多少強くはなったようだがまだまだだね」
やはりまだ早かったみたいだな。
まあ英雄とまで呼ばれた人からすればランク3はまだひよっこだよな。
「そうだね、最低でも基礎は終わらせてきなさい。話はそれからだよ」
そう言われた次の瞬間には元の墓部屋に戻っていた。
「師匠・・・」
「うん、収穫ありだな」
「え?」
アンズがなにか心配そうにこちらを見てきていたが何も心配するようなことは無い。
何故ならフウオウから十分にヒントを与えられたからだ。
「基礎は終わらせろ。それって今の基本職を終わらせて中位職に転職しろってことだろ」
たぶんね。
「おおぉ、流石師匠です!」
あくまで推測でしかないぞ。
「それはそうとここでの目的は済んだから次に行こうか」
「はい、師匠」
「次はスランダだ」
ハイジマの町の西側の倉庫街の一角、NPCのスランダが研究所兼住居としている倉庫の前に到着。
ここにきた理由はもちろん合魔物に関してのことだ。
本当ならスイも同行する予定だったんだけどどうしても外せない用事があるとかで今回は参加していない。
自分も参加したいが自分の為にクエストを止めておくのは悪いからと合魔物のクエストを進めても良いと話は済んでいる。
その代り詳細はチーム掲示板に書き込むことを約束させられたけどね。
「たのもー」
「アンズ、それは何か違うぞ」
戸を叩きながらアンズが道場破りでもするかのように声を上げている。
確かに頼みたいことがあるから来たのには間違いないんだけどね。
「はーい、開いてるので勝手にどうぞー」
戸を開けて中に入る、相変わらずの雑多な感じのする部屋だな。
その雑多な部屋の奥から白衣を着て無精ひげを生やした魔物研究家のNPCスランダが現れる。
「どちら様で・・・あーあなた方は以前依頼を受けてくれた封札士の方ですよね」
「はい、そうです。実は今日お話が――」
「ちょうどよかった。あなた方にお願いしたいことが有るんですよ」
「お願いですか?」
「前にお願いした合成魔物の件なんです」
こちらから切り出す前に向こうから切り出されたか。楽でいいか。
そういえばスイからクエストの詳細が分かるようにしてくれとお願いされているんだ。
やはり台詞とかもメモっておいた方がいいんだろうな。
とりあえずチーム掲示板に書き込んでおくか。
「あれから新たな資料が見つかりましてね。前回お願いした時は資料に『3つのモノを合わせる』と記述が有ったので魔物を3体混ぜ合わせてみたんですけどどうやらそうではなかったようなんですよ。いや、あの時は本当にお騒がせしました、まさか合成した魔物が暴れるなんてね。危機一髪ってやつでしょうか。ああ、話がそれましたね。その3つなんですれどねどうやら2体の魔物ともうひとつ必要な物質が有りまして、その残り一つがどうやら重要みたいなんですよ。今回見つかった資料にその物質のことが載っていたんですよ。で、その物質なんですが便宜上『融合物質』と名づけましたけど、その『融合物質』が有れば封札状態の2体の魔物を一つにすることが出来るみたいなんですね。そう『融合物質』です、その名前の通り二つのものを一つに融合させることが出来るんですよ。それでその『融合物質』なんですけど驚かないでくださいよ。なんと魔都の森にある属性石らしいんですよ、驚きですよね。属性石自体は採るのに苦労はするけどそれほど珍しいものでもないですよね。ホントに驚きですよまさかそんなもので出来るとは思っていませんでしたもの。属性石と言えば武器とかを鍛冶で作るときに属性を付与するときに使われる程度でそれ以外に使い道は無かったと思われていましたからね。まさに灯台下暗しってやつですか。あ、そうかそれで依頼したいのはですね。まあ聞いていたから分かると思いますけれどその属性石を採ってきてほしいんですよ。それから2体の魔物も封札状態で持ってきてください。そうすれば合魔物が作れます。合魔物と言うのは資料に乗っていた合成魔物の正式名称のことなんですよ。そうそう今回は特別な札は必要ないですよ。普段使っている札で大丈夫ですので。それでは依頼をお願いしますね」
台詞が長い!




