チーム結成7 VS二本角
最初の討伐は問題なく終わり次のハイシャーマンを探しに森の散策を再開する。
トイスの敵性感知を頼りにゴブリンを探しハイシャーマンでは無いがノーマルのゴブリンPTを2つほど倒し、ついでにミナズキの葉も4枚ほど見つけた。
「ほんとにトイス君はこういったクエストに居てくれるのは助かるのよね」
「そう言ってくれるとこっちも嬉しいッス」
実際ゴブリンを探すだけでなくもう一つのクエスト対象であるミナズキの葉もトイスが見つけてくれているのだ。
クエスト対象者である自分も見つけることは出来るのだが対象外の他のメンバーは目の前にそのアイテムが有っても分からないらしいのだが何故かトイスは自分以上に目ざとくアイテムを収集してきている。
採集スキルを所持しているとそうなるらしい。
「今度はあっちの方に反応があるッス」
またトイスの敵性感知に反応があったようでみんなして向かうことにする。
「あれは二本角みたいね」
トイスのスキル頼みに隠れながら向かった先に居たのは二本の剣を持った二本角のパッティハイゴブリンシャーマンだった。
今度のハイシャーマンも一本角のときと同じく3体のゴブリンを引き連れている。
ただし短剣を持ったローグ系のゴブリン2体と弓を持ったゴブリン1体で一本角の時のようなバランスは取れてはいない様子だ。
「どうしようかしら」
「作戦ッスか?」
「近くに大きい木は無いようだしさっきの作戦は使えないわね」
二本角は木が生えていない少し開けたフィールドで周りを警戒しているようだ。
なので木を使っての上からの奇襲は出来そうにはない。
「どうせなら真正面から戦ってみたいです」
この意見はヒナゲシ。
まあこの子はモンドと同じく戦闘に対してストイックな考えをするところがあるから不意打ちみたいな真似はしたがらないんだよな。
「それは今度の機会にしましょう。今はクエストクリアが優先なんだから」
「・・・分かりました」
渋々ながら従ってくれるみたいだ。
4人娘は基本的にスイに頭が上がらないみたいなんだよな。
「それでは話続けていいかしら、まず不意打ちからの確固撃破は基本よね。そうなると狙いは・・・!」
ミニッツの目線がハイシャーマンに向いた瞬間、その顔が驚きに包まれる。
その目線の先を追ってハイシャーマンを見てみると――。
そこには二刀を大きく振りかぶったハイシャーマンの姿があった。
「逃げろ!!」
咄嗟に大声で指示を出しとなりに居たリンドウを抱えて横に大きく跳ぶ。
その直後自分たちが居た場所にハイシャーマンから放たれた攻撃が過ぎ去っていく。
二段飛斬。
二刀流のプレイヤーが持っている遠距離攻撃だ。
「みんな無事か!」
「こっちは無事ッスっ」
「平気です」
ミニッツをトイスが、スイはヒナゲシがそれぞれ抱えて避けられたみたいだ。
「っ!油断したわ。おそらく感知探査系スキルも持っているハイシャーマンだったみたいね」
同じハイシャーマンでも角の数や大きさで能力に違いがあるように、同じ角でも所有しているスキルに違いがある。
今目の前にいる二本角ハイシャーマンはトイスが持っている敵意感知に近いスキルを持っていたってことか。
そのせいでこちらが仕掛けようとしていた不意打ちを逆に仕掛けられてしまった。
「迎え撃ちますっ」
一番最初に立ち直ったのはヒナゲシだ。
すぐに隠れていた繁みから嬉々として出ていった。
図らずもヒナゲシの希望通りの真正面からのぶつかり合いをするしかなさそうな形になったからな。
「スイはヒナゲシのサポートで二本角を俺たちは他のゴブリンたちをやる。リンドウも参加してくれ」
ヒナゲシが孤立しないようにすぐに指示を出し戦闘態勢に入る。
早速ヒナゲシと二本角が戦闘を開始している。
「させないッス!」
ヒナゲシに攻撃しようとしていた弓ゴブリンに対してトイスが先にしかけ邪魔をしている。
こっちも負けてられないな。
「解放、行け!」
ウルフをリリースして戦力に加え接近してきた短剣ゴブリンと戦闘を開始する。
「斬撃!」
居合と弱点看破を加えた斬撃を放つがこれをあっさり躱される。どうやらこのゴブリンは通常種より素早いみたいだな。
ゴブリンも負けじと攻撃してくるがこちらも走行と跳躍を駆使して回避する。
このままだとお互い攻撃が当たらずに千日手のような状況に陥りそうになったところで。
「精密射撃」
「ゲギャ!」
ミニッツのスキルがゴブリンの足に命中、これでゴブリンは回避が出来なくなった。
しかも相手は短剣なので刀を使うこちらの方が圧倒的にリーチがある。
「斬撃、もひとつ斬撃!」
一方的に攻撃出来るようになったのであっさり撃破。
残りは短剣と弓が1体づつだ。
今の状態を確認しようと周囲を見回すと。
「や~っと~っ」
「キャッキャっ」
どうにも気の抜ける掛け声で戦っているのはリンドウ。
既にミニッツとウルフがサポートに入ってはいるが攻撃が当たるどころかゴブリンに小馬鹿にされている。
ミニッツの攻撃も前衛がしっかり引き付けとかないとこのゴブリン相手だと当たらないみたいだしこのままだと負けるよな。
トイスは弓ゴブリン相手に多少苦戦気味ではあるが問題はなさそうだなリンドウたちの方に応援入るか。
「はぁ~っ!」
リンドウの攻撃をゴウリンが躱したそのタイミングで大きく踏み込み一気に間合いを詰める。
横合いから不意に現れた敵に対して対応出来るはずもなく居合攻撃が入る。
「ギッ!ギャガ!」
流石に一撃で倒すまでには至らなかったがそれでもHPの半分以上は削れたな。
透かさず二撃を加えようとしたがゴブリンはそれを察してすぐに後ろに跳ぶように逃げるようが――。
「精密射撃!」
逃げた方向には既にミニッツが銃口を構えていた。
まあそれが分かっていたからそっちに逃げるように攻撃したんだけどね。
ミニッツの攻撃が止めとなりゴブリンを倒すことが出来た。
すぐさま次の応援に行こうかと振り向いたその時に。
「勝ったッスー」
苦戦しているように見えたが勝てたようだな、なら残りは二本角を残すのみ。
「いやぁぁぁぁ!!」
リンドウの気の抜けた掛け声とは違い聞いてるだけで身の引き締まるような気合を出し二本角に切りかかるヒナゲシ。
二本角の二刀に対してヒナゲシの薙刀。
リーチで勝るが手数で負けると思ってはいたけれどこれは良い意味で見込み違いだな。
なにせ長物のはずのヒナゲシが二本角と手数で互角なのだから。
ハイド持ちのゴブリンからの不意打ちに対応した時のように武器を鋭く回すように使い二本角の二刀に対抗している。
と言うか手助けが必要ないぐらい圧倒してないかこれ?
手数では互角。リーチ差では勝ち。
たまに二本角が攻撃の隙を突いて懐に潜り込もうとするがヒナゲシはそれを蹴りで押し返すなどして対処している。
一撃の威力はそれほどでもないようだけどまるで詰将棋でも見ているかのように少しづつ二本角のHPを削っていっている。
そういえばヒナゲシもあの身体能力の化け物と呼ばれるモンドを育てたあの道場に通っているんだよな。
空手と薙刀と違いはあれ、あの道場主から習っているならそれ相応のチートっぷりを発揮してもおかしくはないか。
ヒナゲシ以外はもう見学するしかない状況、下手に手を出すとヒナゲシのリズムが崩れて逆に足を引っ張りかねないし。
「手出しは無用です!ハァ!」
本人からも拒否された。
尤も決着はそう遠くはなさそうだな。
二本角が大きく踏み込み何度目かの突進攻撃をするがヒナゲシはそれを一歩だけ後ろに引いて攻撃を躱す。そして攻撃後の大きく隙の出来た二本角に対してスキル攻撃の横薙斬を加え止めとした。
「しょー・・・・・・ゆっ」
そこは素直に勝利と言っとけよ。
「お疲れーッス」
「んっ、楽しかった」
確かに二本角と戦ってる時のヒナゲシは生き生きしてたな。
「そういえば僕が止め差しちゃったけどクエストアイテムは出ましたか?」
「ああ、大丈夫だよ。パーティーメンバーが倒しても貰えるみたいだね」
更に言ってしまうと何とアイテムが2個もらえたのだ。
角がクエアイテムの対象、二本角だから2個出たってことかな。
「なんならもう一回二本角相手にしてもいいかもな。それでクエストクリアだ」
「うん、僕もう一回戦いた――」
ヒナゲシが大きく吹き飛んだ。
何が起こったのか分からない。目の前に居たヒナゲシが見えない何かに轢かれたかのように飛んでいった。
「ガアアアアアアァァァァァァァァ!!」
ヒナゲシが飛んでいった方向とは逆方向。つまりヒナゲシを吹き飛ばした何かを放った存在がそこにいた。
そいつは頭に三本の角があるパッティゴブリンハイシャーマンだった。
なんとか年内に投稿できました。
それでは皆様良いお年を。




