チーム結成5 スキルコンボ
お久しぶりです。
エタってませんよ。
6人パーティーで森の中を進んでいく。
浅瀬や中程でもゴブリンやその他の魔物も出てくるがトイスの敵性感知のおかげでほぼ戦闘は無く。
有っても1~2体の少数でしかも不意打ちし放題なのでまったく問題がなかった。
敵性感知便利過ぎるだろ。
「はぁ・・・」
ただしパーティーでの活躍とは裏腹に意気消沈している。
よっぽど堪えたみたいだな。
「ふたりに声掛けたみたいだけど結果は芳しくなかったみたいね」
「まあね」
トイスが落ち込んでいる原因を正確に言い当ててきた。
「トイスくんは女の子と知り合う度に声掛けて玉砕してるのよね」
「そうなのか」
「そうよ、ミニッツちゃんやクノイちゃんにも声掛けてたんだから」
・・・そうか。
「ああ、安心して良いわよ。ふたりにもあっさり振られたから」
「何に安心しろと?」
「別に・・・青春してるなーって思っただけよ」
スイが何を言いたいのか分からないが何故か一瞬来たモヤッっとした感じになったな。
すぐに収まったけどね。
少しずつ森の雰囲気が変わってきた。
今までは森と言っても木漏れ日が差していて明るかったんだけど徐々にその明かりも無くなり暗くなってきた。
「この辺りから奥よ。今までいたような雑魚ゴブリンの様にはいかないわ。油断しないでね」
森の奥は出てくる魔物のランクがひとつ上がるらしく今までの様には行かないとスイから忠告を受けた。
先ほどの説明からするとこのあたりからゴブリンシャーマン(角なし)が現れ始める。
ハイシャーマンではないが魔法を使ってくる強敵なのは変わらない。
周りを見回しながらミニッツがトイスに質問をする。
「それでハイシャーマンはどの辺りにいるのかしら」
「敵性感知は種類までは分からないッスよ」
「大丈夫よ、ミニッツちゃん。ハイシャーマンが出るのはもう少し奥のほうだから」
流石、情報魔のスイは森のどの辺りに居るのか知っているらしい。
「ハイシャーマンは森の最奥ここからも見える大樹木の辺りよ」
スイが指示したのは森の中にあって最も高い木。
通称大樹木と呼ばれる大木だ。
そう大きくはないパッティの森の中で一本だけ高々とそびえたっている木。
正式名称は無いがプレイヤーの間では大樹木と呼ばれている。
「あの辺りに居るからそれ以外は無視してもいいわね」
「りょーかいッス、それならこっちッスね」
トイスを先頭に大樹木に向かう一行。
シュンッ!
風切音が聞こえたとほぼ同時にヒナゲシが手に持っている薙刀を小さく鋭く振り回し繁みに向かって構え始める。
「敵です!警戒してください」
「なっ!スキルには反応なかったッスよ」
だが現実にヒナゲシの足元には矢が落ちていた。
どうやら飛んできた矢を撃ち落していたらしい。
ゲーム内とはいえ何やってんだこの子は。
「ハイドスキル持ち、おそらくローグよ」
スイの忠告通り繁みから姿を現したのは革の軽装備に身を包んだ短剣装備が2体と弓装備が1体の3体のパティゴブリンローグだった。
「敵性感知が効かない敵ッスか!」
トイスは驚愕しながらも弓を構え戦闘態勢に入り遅まきながら他のメンバーも構え始める。
「はぁぁぁ!」
既に戦闘態勢に入っていたヒナゲシは3体のローグとの距離を詰め薙刀を振るうが――。
「グギャギャッ」
2体の短剣ローグは素早い身のこなしでヒナゲシの攻撃範囲ギリギリのところで止まりその隙を突いて弓ローグがヒナゲシに向かって矢を放ってきた。
「くっ!」
身を捻り寸でのとこで矢を躱すが躱したため体勢を崩してしまいヒナゲシに隙が出来る。
「衝撃矢」
「ギャギッ!」
ヒナゲシを攻撃しようとしていた短剣ローグの腕をトイスの矢が打ち抜き攻撃を止めたようだ。
「助かりました」
「良いってことッスよ」
ヒナゲシが前衛を務めトイスがフォローに入る。
遅れてスイとミニッツも戦闘に参加しているからあっちの方は大丈夫そうだな。
ならこっちはその隙に。
「斬撃!」
「グギャ!」
短剣ローグがヒナゲシに気を取られている隙にこっちは弓ローグへ木の上から飛び降りながら奇襲する。
完全な不意打ちだったようでに躱すそぶりすら見せずマトモに攻撃が入り一撃で倒すことが出来た。
「え?センくん何時の間にそんなところに?」
味方にとっても不意打ちだったようでみんな少し呆けた顔してるな、そんな特別なことはしてないんだがな。
「説明はあと、残り2体もやっちゃうよ」
とは言え俺が弓ローグ倒すために回り込んだため挟み撃ち状態になっているし、そもそも2対6のなので簡単に倒すことができた。
「それで説明してくれるかしら」
「あ、自分も知りたいッス」
戦闘終了とさっそくスイとトイスから質問がきた。
「説明って、なんの?」
「なんのって、どうやって弓ローグのところまで行ったかを聞きたいのよ」
やっぱりそれか。一応別のことかも知れないのでとぼけてみたが、あの表情を見た限りだと今の移動方法のことだよな。
「方法はそこの木を駆け上ったあと枝の上を跳んで向こうに渡っただけだけど」
「・・・ちょっとやってみてくれないかな」
頼まれたのでやってみる。
まず走行のスキルで助走をつけて木に向かって走り跳躍スキルを併用しながら木を駆け上りその勢いのまま枝を足場にして木と木の間を跳び渡っていく。
「こんな感じです」
「どうしてそんなことが出来るのよっ!」
「センさんなんかおかしいッスよ!」
木の上から降りてきた自分に対して詰め寄ってきた。
なんか二人ともひどく慌てているような?
いや、他のメンバーもか。
そんなにおかしなことしたんだろうか?
「出来ないのか?スキルを同時に使えば出来ると思うんだが」
「・・・高ランクになれば出来る人は出てくるだろうけど今のランクだとまず無理な行動のはずよ。少なくとも走行と跳躍のスキルでそんなことは出来ないはず・・・スキルを同時に?」
「ああ、走行と跳躍を同時にスロットに入れておけば出来るようになるぞ」
「そうか、そういうことなのね」
スイも何かに理解したのか納得した顔をしている。
「センくんはスキルコンボって知ってるかしら?」
「いや、知らないけど」
「知らなかったのにね。いや、知らなかったからこそなのかしら」
「どういう事?」
「簡単に言えば今センくんがしたことよ。複数のスキルを同時に使ったりだとか本来とは違う使い方で他のスキルの威力を上げたりすることをスキルコンボって言うのよ」
初めて知ったな。
「例えば私なんかは水魔法で相手を濡らしてから雷魔法で攻撃して威力を上げるってことをしてるでしょ。あれもひとつのスキルコンボなのよ」
そういえば以前そんなことをしてたな。
確か最初のRUクエの時のキメラモドキの時だな。
「センくん場合も走行と跳躍でコンボになっているみたいね。本来そのふたつを同時に付けてる人なんて聞かないのよ」
「そうなのか?」
「前も話したと思うけどそのふたつは便利スキルで2軍扱いだから同時に付けてる人は稀だし戦闘でも使われることは殆ど無いのよ」
なるほどな。
「なによりパッシブスキルでコンボが出来るってことはまだ知られてなかったはずよセンくんのおかげで新しいコンボの組み合わせが見つかったしパッシブスキルでのコンボ探しにも活気が付くはずよ。この情報は攻略サイトに載せても良いわよね」
「別にいいぞ。知られて困ることじゃないし」
それどころかその情報が広まることで2軍扱いから抜け出てほしいしね。
「それでセンくん」
「なに?」
「もう他に隠してる情報は無いわよね」
ニッコリと笑いかけてくるが目が笑ってない。
そもそも隠してた気は無いんだけど・・・
「無い・・・と思う。たぶん」
「本当に?」
・・・スイが妙に怖い。
鬼気迫るというのはこういう事を言うんだろうか。
だ、誰か助けてくれ。
スキルの話になるとどうしてもスイが目立つ。




