チーム結成
「合魔物かぁ、初めて聞いたわね」
商都ギルド内でスイを相手にいつもの情報提供中。
しかしスイも知らないような情報をなんでリイルが知っているんだろう?
「その情報に信憑性はあるのか?」
「何とも言えないわね、ただゼロではないわよ」
そうなのか?
リイルを疑う訳じゃないけど情報収集魔のスイですら知らないことを攻略サイトを見ないリイルが知っているってのはおかしいような気がするけどな。
「それについては実は理由があってね。と言ってもこれは都市伝説的な話だったんだけど今回の件でその都市伝説にも信憑性が出てくるかもしれないわね」
「都市伝説?」
いきなり怪しくなったな。
「まあ簡単に言っちゃうと。NPCがプレイヤーの状況によって提出してくる情報に差を出しているって話なのよ」
なんだそれ?
「そのプレイヤーの状況ってやつなんだけど、どうも知っているか知らないかの差みたいなのよね」
「どういうこと?」
「つまり攻略サイトなんかを参考にしてクエストに挑んでいる場合は提出される情報は少なめでサイトを見てない場合だと多めに教えてもらえてるみたいなのよ」
「そうなのか?」
「編集者のジレンマって呼ばれてるわ、サイトを編集するためには情報を集めたいけれど知ると情報が集まりにくくなるかと言って知らないと編集出来ないわけだからって。まあ都市伝説なんだけどね」
「リイルの件で本当かも知れないってことか」
「そういうことよ、つまりそのリイルって子は私が知らない情報も知ってる可能性があるのよね」
スイの眼が怪しく光ったように見えた。
どうやら目を付けられたされたみたいだな。
「それにもうひとつ根拠はあるわ」
「もうひとつの根拠?」
「技能職系の6職のうち4職はテイマーだし呪歌士もそれに近いスキルはあるのよ」
技能職系と言うと確か。
従獣士、魂魄士、人形士、騎兵士、呪歌士それと封札士だな。
確かに並べてみれば呪歌士と封札士以外は種類は違うが魔物を従えて戦うのが基本の職業だ。
ただ呪歌士のテイムスキルは知らないな。
「精霊歌ってスキルで歌うことによって近くにいる精霊にお願いして戦うことが出来るスキルなのよ」
「なんか呪いって感じじゃないな」
「まあ上位職になると祝歌士とか精唱士みたいにポジティブなイメージの職業もあるからね。どちらかと言うと呪いっていうより魔法歌って言うほうがしっくりくるわよね」
とりあえずまとめると封札士も合魔物何てものを従えられるようになれば技能職系=テイマー職ってことになるのかな。
「フフフ、これはいい情報ね。この情報が確実なものだと分かれば革命が起こせるわ」
革命は言いすぎだと思うが、確かに色々ひっくり返るだろうな。
「すみません、遅れたッス」
「よし、全員そろったみたいだから集まってくれ話がある」
ギルド内休憩所にいつものメンバーの最後のひとりトイスが到着した。
それに合わせてレトがそれぞれの場所で雑談していた他のメンバーに声を掛けて集合させる。
こうしていつものメンバーがひとつのテーブルに集まったわけだが。
当然だが自分が戦都でクエストを熟している間にも他のメンバーも色々やっていたらしい。
モンドは聖都にて新しい戦盾技スキルと成長する盾の素材集め。
ミニッツはスイとマリーと護衛として付いていったクノイとの4人で魔都にてスキルの習得のためのクエストを行い。
レトは両手斧作成のために商都にて走り回りトイスはレトの手伝い兼お守として一緒に行動をしていた。
そのため皆、装備が変わっている。
まずモンドだが盾が大きくなり色の基調が白になり一回り大きくなっている。
聖都で手に入れた素材で盾に新しいスキルを付与したのが原因らしい。
今装備している重装備と合わせると聖騎士って雰囲気を醸し出している。
自身で習得したスキルは「カウンター」だ。
相手の攻撃に合わせて攻撃を加えた場合威力を上げるスキルであくまで威力を上げるだけなので攻撃を当てること自体は自力でやらなければいけないらしい。
そのため有用スキルに位置づけられながらも使い手が少ないスキルでもある。
ちなみにモンドに言わせるなら。
「バッと来たらガッとやればいいだけだよ」
とカウンターの仕方を教えてくれた。
理解が出来なかった。
盾のスキルは「耐久度回復」。
これは持ち主のMPを注ぐことによって盾の耐久度を回復させるというスキルだ。
鍛冶でも耐久度は回復するが直し続けた場合最大値が減少してしまう。このスキルはその最大値を減らすことなく耐久度を回復出来るスキルだ。
ただし効率は悪く今のモンドの最大MPをつぎ込んでも1~2程度回復する程度だとか。
それでも愛用の装備なので必須スキルらしい。
次に紹介するのはミニッツ。
着ている装備は変わらずネコ耳フード付き着ぐるみパジャマと言った感じだが武器が変更されている。
以前までは拳銃か杖を状況によって使い分けていたが今の装備している装備は見た目は狙撃銃風に見える。
風と表現した理由は銃身の部分が杖のように見えるからなのだ。
銃を杖のように作ったのか若しくは杖を無理やり銃にしたかの様なコミカルな外見をした武器だ。
武器の種別は「魔撃銃」。
見た目の印象通り杖と銃を合成して作られた武器で魔法威力も上がる銃装備だ。
製作者はなんとキア。
ミニッツがキアをおど、コホン・・・穏便に説得して作ってもらったらしい。
キアに嵌められた身ではあるけれど少し心配になったのは言うまでもない。
威力は銃としては低めだがミニッツが使う場合、呪術付与のスキルが乗り高確率で相手にバットステータス状態にすることができる。
外見に似合わずなかなか強力な武器だったりする。
レトはカジノで手に入れた素材で武器を新調したみたいだ。
出来上がった武器は柄の部分が身長とほぼ同じ長さも有る両手持ちの長柄武器だ。
強化暴走牛の角はランクの高い素材だったため扱える武器士が少なくまた扱えても斧制作のスキル持ちで無かったりと苦労をしたらしい。
そのかいは有り現状で武器の性能はトップクラスだ。
ただ十全に扱うにはまだレトのステータスは低いらしく本人は宝の持ち腐れのようになっているとか。
あれだけSTRに振っているのにまだ足りないのか。
クノイの装備は変わっていると言えば変わっているし変わっていないと言えば変わっていないのだろうか。
つまり自分はクノイのくノ一ルックを初めてみたのだ。
以前の男に間違われるような忍び装束ぽい恰好ではなくてなっていて、女の子ぽさが前面に出ている。
見た目は和風のサバイバルファッションって感じで若干手足と腰回りの露出が激しい程度だろうか。
本人も気に入っているらしくどことなく自信のようなものがにじみ出てきている。
スイとトイスは見た目は変わっていない。
それぞれ装備ではなく新しいスキルの習得をしたらしい。
スイの新スキルは「梟の眼」。
魔都の図書館で習得可能なスキルで魔物の簡易ステータスを見ることが出来るスキルらしく、Lvが上がればより詳しく知ることができるとか。
情報収集魔のスイらしいスキルだ。
トイスは商都で習得したスキルは「属性矢作成」。
文字通り自作した矢に属性を付与出来るようになるスキルだ。
ただその為の素材が高価で数も少ないため作ったはいいが使いづらいとこぼしているらしい。
そんな風に新しい装備やスキルのお披露目をしている中、レトが発した一言にみんなの注目が集まる。
「それじゃあ、チーム結成のための話をしようか」




