刀技5 従獣士
「スキルまで手に入ったか、ラッキーだったな」
刀技スキルと刀専用スキルを手に入れて道場を後にする。
本来自分のように刀の熟練度が足らずにクエストをこなした場合は刀専用スキルは手に入らないはずだ。
もちろん後日習得のためのクエを受けることは出来るが何故かクエストを受けずにスキルをもらうことが出来た。
理由と思われるものは二つある。
本来受ける必要のなかったクエだったから。
途中でボスエネミーと戦ったから。
どちらかがもしくはどちらも理由なのかもしれない。
検証のしようがないが一応スイに話しておくか、話さないで後で知られたら怖いからな。
さて新しいスキルが二つも手に入り浮かれているのだが同時に問題も出てきた。
スロット枠が足りない。
現在ランクは2、スロット枠は6箇所しかない。
そして今回2つのスキルが手に入ったので総勢10個スキルを持っていることになる。
内容はもともと持っていた8個。
・剣技Lv24
斬撃Lv20
最大MP上昇Lv22
MP自然回復Lv18
封印成功率上昇Lv16
弱点看破Lv16
走行Lv13
跳躍LV11
それと新しく手に入ったスキル。
・刀技Lv1
居合Lv1
そう、刀技以外のもうひとつのスキルとは居合である。
このスキルは常時発動されるパッシブスキルに分類されていて、納刀状態からの初手の一撃に限り威力が110%、剣速が120%になるスキルだ。
初太刀のみと思われるかもしれないけど実はかなり有用なスキルに分類されている。
その理由は「パッシブスキル」であるというところで簡単に言えば斬撃を居合で放てるってことだ。
それにスキルレベルが上がれば当然威力と剣速も上がっていく。
最初の一撃が必殺の一撃にすることが出来るのである。
一撃必殺、男のロマンだ。
だけどそうなると問題になるのがスロット枠の少なさ。
まず必須になるのが剣技、刀技、居合、斬撃の4つ。
残り2か所の内封札のために最大MP上昇を入れ残り一枠に弱点看破を入れる。
これで決定してしまう。
ここで何故剣技と刀技の両方入れているのかと疑問が出るかもしれないので簡単に説明しておくと刀技がまだLV1で弱いためだ。
同じ装備系統のスキルで効果が重複している場合、効果が高いスキルの方が適用される。
今回の場合は剣技と刀技だな。
なので今のスキルの構成だと刀技は居合を使うためのみにセットされている状態だ。
しばらくこの状態でいて刀技の効果が剣技を上回ったあたりでスキル合成を行い剣技スキルを刀技スキルの経験値に変換する。
すぐに合成しない理由は変換する場合に経験値がかなり目減りするからだ。
なのでまずはこの構成で進めていこうと思う。
さて、そうなるとやることは見えてくる。
刀技のレベルを上げる事とランクを3にすることだ。
剣技をいづれ外して刀技に合成させるしランクも上げれば2枠空く。
そんなことを考えながらクエストを受けるためにギルドに向かっていると。
「あのー、すみません。ちょっと良いですか?」
「はい?」
見知らぬプレイヤーに声をかけられた。
暑いのに長いマントを背負って杖を持った男性プレイヤーだ。
あれ?でもどこかで見たことあるような・・・。
「なんでしょう?」
「えっと、トウシュウサイ道場から出てきましたよね。もしかして刀技スキル手に入れられました?」
「ええ、習得出来ましたけど」
「ぜひ、習得方法を教えてください!」
いきなり土下座でもしそうな勢いで(実際にはしてないけどね)懇願してきた。
とそこで思い出したのが。
「もしかしてトウシュウサイ先生に投げ飛ばされてた人?」
「あ、はい。そうです、見てたんですね、お恥ずかしい」
道場に到着したときに投げ飛ばされていたプレイヤーがいた。
確かこの人だ。
道端で立ち話もなんなので定番だがギルドの休憩所にて話を聞くことになった。
「まず自己紹介だな、俺はセンだ」
「あ、そうでしたね。すみません、僕はリイルといいます」
「それで習得に関してでしたっけ」
「はい、実は刀技スキルの習得に行ったのに話をした途端なぜか怒鳴られ投げ飛ばされました」
たしか刀技の習得には前提として剣技スキルを習得してある程度レベルを上げてなきゃいけないんだよな。
「質問なんだけど、剣技スキルと刀は持っているの?それに職業って魔法術士系じゃないのかな」
「刀は持ってます、剣技スキルは持ってないですけど。それに職業は従獣士です」
従獣士、俺と同じ技能士系の職業か。
それなら杖を持って魔法を使うのも刀を持って近接戦闘職もやれるか。
でも杖持ってるよな、今からスキルの伸ばす方向を変えるのかな。
「杖持ってるし魔法で戦うんじゃないのかな?」
「あ、じつはこの杖って仕込み杖なんですよ」
そう笑顔で答えながら仕込み杖を少し抜いて刀の刃を見せてくる。
「確かに最初は従魔物たちに魔法で支援しながら戦うスタイルだったんですけど露店でこの武器を見てから刀でも戦ってみたくなっちゃって」
「その気持ちはよく分かる。俺も刀を見て衝動買いしたからな」
「そうなんですか、気が合いますね」
刀に一目ぼれした者同士で話が合いその経緯を知ることができた。
元々リイルは従えた魔物を強化して戦う従獣士としてはスタンダードなスタイルだった。
だがこの戦い方には欠点があり、従獣士本人が非力なため従魔物たちが足止め出来なかったり集中攻撃を受けた場合などの時に対応が出来なくなるという弱点があった。
そこでリイルが考えたのが自分自身もある程度戦えるようにするというものだ。
そんな風に悩んでいた時に露店で見かけたのが仕込み杖だったらしい。
まさしく天啓を得たとばかりに買い、露店主から道場のことを聞きそのまま道場の門をくぐり・・・・・・投げ飛ばされたというわけだ。
「どうしてなんでしょうね」
「どうしてってそりゃ・・・」
どうもリイルは攻略サイトを使わず他のプレイヤーとの直接のやり取りのみでゲームを進めているみたいなのだ。
それもある意味で正しいVRMMOの遊び方だろう。
サイトに頼らず自分で見聞きしたことのみで楽しんでいるわけだ。
まあ、今回はどうしても刀が使いたいからと知ってそうな人に直接聞きに来たわけだが。
「まず刀技スキルを習得するためにはまず剣技スキルのレベルをある程度上げる必要があるんだよ」
「そうだったんですか」
「そう、それと刀もある程度使い込まないといけないみたいなんだ」
「えっとつまりこの刀を使って剣技スキルを上げればいいんですね」
「そうそう」
そうしてリイルに刀技スキルを習得するための方法を教えていく。
「なるほど、分かりました。これで何とか習得出来そうですね」
「そうか、役に立ったようで何より」
「それでひとつお願いが有るんですけれど」
「お願い?」
「正直ソロで剣技スキル上げる自信がないです。手伝ってください」
比喩ではなく本当に土下座でお願いされました。
こうしてリイルの刀技スキル習得のための特訓の手伝いをすることになった。
キャラクタープロフィール
・リイル
・従獣士
・刀使いに憧れる従獣士。
基本的に自分から前に出るようなこともなくお願いするときもまず頭を下げることからする少年。
いずれ土下座は文化と言いそう・・・
※従獣士のもうひとつのスタイルは従魔物をサポートとして自身が戦いに赴くタイプ。
リイルはこのふたつのスタイルの中間あたりを目指す予定。




