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Heroes Guild Online  作者: ムムム
新装備
56/100

新装備4 要求

「はあぁぁぁぁぁ!!」


 気合いと共に振るわれたヒナゲシの薙刀がサカイプラントゴーレムの体勢を大きく崩す。

 残りHPも残り僅か。


「我が魔眼よ、真なる力をここに示せ!」


 口上と共にマリーの赤い右目が光出し同時に杖に魔力が集まり出す。

 

「これが私の切り札よ、喰らいなさい!邪骨弾丸イービルボーンブリット!」


 ローズマリーの手から放たれる邪骨がサカイプラントゴーレムの頭を打ち抜き止めを差す。

 7人で討伐した時より若干じゃっかん弱くなってた様な気がするけど気のせいかな。


「ふっふっふっ・・・我が魔道の冴え特と味わったかえ」


 とりあえずハリセンで叩いておこう、なんだよ「かえ」ってキャラがおかしいだろ。

 それにもうひとつのツッコミどころは――――


「切り札の使いすぎだ、少しは自重しろ」

「仕方が無いじゃない、今はまだこれが切り札なんだから」


 切り札と言うのは邪骨弾丸と赤い目。通称魔眼のことだ。

 これはただ目を赤くするだけでなく効果エフェクト付きのアバター装備だったのだ。

 効果エフェクト付きアバター装備とは設定したスキル発動時に特殊な演出をしてくれるアバター装備でマリーの場合は魔眼で設定した邪骨弾丸を撃つたびに目が赤く光る。

 ただそれだけなら別に問題は無かったのだが、マリーの場合一々口上を入れてくる、そしてサカイプラントゴーレム相手に5回切り札が使われることになった。

 切り札と言いながら連発しすぎだろう。


「どうせなら本当に切り札的なスキルに使える様にしとけよ」

「まあ考えてるスキルは有るんだけどね。魔都に行かなきゃ習得出来ないのよ」


 そのスキルが頻繁に使われる様なスキルじゃないことを祈ろう。


「それと台詞も少し考えとけ一行の中に我と私の2種類の一人称があったぞ」

「うっ・・・」

「まあまあセンさんいいじゃないですか~」


 リンドウが間に割って入って取りなしてくる。


「マリちゃんの中二病これは本当に救いようのない病気ですから言っても意味が無いですよ~」

「ぐふ!」


 違った止め刺しに来てた。




 森を抜けて商都ツノハに到着、そういえばカジノの一件で離れたのに結局1時間程度で戻ってきちゃったな。

 商都の入り口で入るかどうか迷っていると。


「ハリセンさん、早くネタハガキ職人さん紹介してください」

「誰がハリセンさんだ!あとネタ武器な!」


 なんでラジオ投稿の話になっているんだよ。



 結局ヒナゲシに引っ張られる形で商都に戻って来ることになった。


「とりあえずその武器職人に連絡とるけど他の3人も来るか?」

「お誘いは嬉しいのですがツノハに着いたらやっておきたいクエストがありまして~」

「私達はその手伝いに行くわ、武器職人の所にはふたりで行ってきてくれるかしら」

「わかった、みんなの分までおいしいネタを仕入れてくるよ」

「よろしくね、ヒナちゃん」


 というわけでリンドウとアンズ、マリーの3人は生産職用のクエストを受けに、ヒナゲシと自分がキアに会いに行くことになった。


「楽しみですね、ハリセンさん!」

「だからハリセンさんはやめろ!」


 ちょっとハリセンを買ったことを後悔してきたよ・・・

 キアとの待ち合わせはなるべく人目の着かない場所と言うことでキアの武器を買った路地裏にした。

 なるべく人目の着かない所を選んで歩いていたら流石にヒナゲシもおかしいと思ったのか。


「ところでセンさん、なんでこんな人気の無い場所で待ち合わせなんです?」

「ちょっと込み入った事情が有ってな」

「まさか「組織に追われているの!」なんてマリーみたいなこと言いませんよね」

「・・・言わないよ」


 組織じゃ無いからな。

 とは言え本当に追われているのか少し疑問に思えてきた、追われていると言ってきたのはキアだけだし。


「あ、来た来た。おにいさんこっちだよ~」


 路地裏の約束した場所で待っていたキアが手を振っている。


「待たせたか?」

「ううん、待ってないよ」


 一応連絡は入れていたけど紹介しないとな。


「えっとこっちがさっき連絡したヒナゲシだ」

「初めまして!ヒナゲシです」

「初めましてだね、うちはネタ武器職人のキアだよ。よろしくねー」

「はい、よろしくお願いします」


 お互い手を上げてハイタッチでもしそうなほどの高いテンションでのあいさつが終わり武器を見せてもらおうと思った矢先に。


「と言いたいんだけどちょっと事情が変わっちゃってね」


 そうキアが言うと後ろから気配がしたので振り向いてみるとプレイヤーが3人道を塞ぐように現れた。

 キアの後ろ側からも2人現れて囲まれるような形になる。


「えへへ、と言うわけでごめんねおにいさん。この人達がどういう人なのかはもう言ってるよね」


 謝罪の言葉を口にしながらも対して悪びれもせずにキアが告げてくる。

 つまりこいつらは昨日のカジノの客か。


「おにいさんから連絡来る前に大口の契約があってねー、うちの持ってる武器全部買ってくれる代わりにおにいさんから連絡来たら教えてくれってね」

「なるほど、つまり俺は売られたわけか」

「売ったなんて人聞きの悪いですよ、お客様には誠実にってやつですよー。特にたくさん買ってくれるお客様にはね」


 何が誠実にだ。しかし困ったなせめてヒナゲシだけでも逃がさないと、VRとは言え敵意ある人に囲まれる状況は女の子にはきついだろ。


「センさん、状況がよく飲み込めないんですけど・・・」

「おい、この子は関係ないんだろう。見逃してくれないか」

「つまりこの人達はセンさんの敵ですね!熨斗のしを付けてしちゃいましょう!」


 こんな時でも親父ギャグ、頼もしいな。


「おい、俺達が用があるのはそっちの封札士だけだ関係の無いガキは黙ってどっか行け」

「そうだ、そうだ」


 おそらくリーダー格だろう大きな突撃槍ランスを持ったプレイヤーが声を荒らげて横に居る背の低い男が追従してきた。


「私とセンさんが関係ないと言うならボク以上にセンさんと関係の無いあなた達もどっか行って下さい!」

「このガキ!」


 売り言葉に買い言葉。ヒナゲシの挑発に囲んでいるプレイヤー達が殺気立つ。


「ちょ、ちょっとマルロさん、そんな殺気立たないで下さいよ。話がしたいから場を設けてほしいって言うから連絡したんじゃないですか」

「うるせぇ!お前も用が終わったんださっさと行けや!」

「な!まだ商品買ってもらってませんよ。せめてそれだけでも済ませて下さい!」

「そんな役立たず武器誰が買うか!」

「ハリセンをバカにするなー!」


 マルロと呼ばれた男の発言に対して何故かキア以上にヒナゲシが怒り出す。

 ヒナゲシよ、何故そこまでハリセンに思い入れがある。


「もう許せません!」

「ちょっ!ちょっと待て。ホントに関係ないお前がなんで一番に暴れようとしてるんだ!?」


 マルロの疑問ももっともだ。

 強いて答えを出すなら、「ヒナゲシだから」の一言で終わるだろう。



 かなり場が混乱してきた、理由は暴れようとするヒナゲシと抗議を続けるキアのせいでだ。

 こいつ等が自分に何をさせたかったのかは知らないが集団で囲んで脅せば何とかなると思ってたんだろうな、それが今のような状況になるとは。


「うるせー!てめぇら少しは黙りやがれ!」


 ついに我慢できなくなったマルロが手に持っていた突撃槍ランスでヒナゲシを攻撃しようとするが・・・


「遅いです」

「・・・ぐっ」


 マルロの攻撃を薙刀で軽く受け流し逆にマルロの喉元に刃を突きつける。


「ヒナゲシ武器を納めろ。マルロさんあなたもです、このままでは埒が明きません」

「・・・ちっ」


 今の騒動で周りを囲んでいたプレイヤーも気が削がれたのか殺気も収まっている、単にヒナゲシの強さを恐れただけかも知れないけどな。


「それであなた方はこんなことをして何がしたいのですか」


 そう肝心なのは囲んできたプレイヤー達が何を考えてこんなことをしてきたかが問題だ。

 雰囲気からかなり物騒なことになりそうだけどな。


 気を取り直してマルロがこちらに告げてくる。


「要求することはひとつ、カジノで俺達と戦え」

「カジノで?」

「そうだ、俺達とランキングマッチを受けて貰うぞ」

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