第二の街5 図書館
図書館に入るとまず目に入るのは貸出カウンターだ。
そこに司書NPCが座っていた。
「すみません、調べたいことが有るんですが」
「はい、検索キーワードをお願いします」
司書の言葉と共に目の前にメニュー画面が現れる。
この辺りは他の店と同じなんだな。
「フ、ウ、オ、ウっとこれでいいのかな」
そうすると司書さんは手元のファイルを調べ始めた。
「はい、こちらは棚番号C−18にございます。案内を表示しますので指示に従って移動をお願いします」
そうすると床に矢印が表示された、これが指示かな?
矢印の表示に沿ってC−18と番号が番号が振られた棚の前に到着すると1冊の本の背表紙が淡く光り出した。
この本がフウオウのことが書かれている本で良いのかな?
本棚から本を取ってみる、タイトルは「英雄列伝・封滅師」とあった。
英雄か、たしかHGOのバックストーリーにそんな話があったな。
バックストーリー、つまり身も蓋もない言い方をすれば設定だ。
HGO設定では歴史上英雄と呼ばれるキャラは26人いる。
この人数はゲームの初期職になる戦士8職、魔術職8職、技能職6職、生産職4職、全26職と同じ数になる、1職に対して一人英雄と呼ばれる人物がいることになる。
ただしこの英雄に関しては公式でもあまり情報は出ていないのだ。
曰く、一人で万の軍勢を滅ぼした。
曰く、一太刀で山を両断した。
曰く、伝説と呼ばれる武具を再生した。
等々断片的な情報が出されるだけしかない。
つまりこの本には未だ開示されていない英雄のことが載っていることになる。
「これはスイが歓喜しそうなアイテムだな」
残念なのは図書館では貸出システムが無く外に持ち出せないことだろうか。
それはそうと他の本はどんな内容なんだろう。
「ん?あれ?」
棚から抜き出せないな。
もしかしたら目的の本以外取れないのか。
仕方がない諦めるか。
閲覧室に本を持って行く。
読むときは個室が用意されているらしく周りからは見られない様になっていた。
さっそく本を開いて読み進めてみる。
内容は一封札士だった村の少年フウタが英雄とまで呼ばれるほどの存在になるまでの事柄が物語形式で綴られていた。
簡単に話の流れを語っておくと。
小さな村で慎ましく暮らしていた少年の元にひとりの封札師が訪れて少年の封札の才能を見いだし村を連れ出す所から物語は始まる。
その後その封札師を師匠とし修行の日々を送ることになる。
そんなある日師に連れられて城に向かい王命を受けることになる。
師とふたりである魔物の封印を任されることになるのだ。
本来なら師ひとりでも可能な仕事であり弟子に経験を積ませる意味での同行だったのだが予想に反して対象の魔物は強力で強靱で1体で都市をも滅ぼしかねないほどの存在だったのだ。
師は封印に失敗し打ち倒されてしまうが連れられてきていた弟子が師が失敗した封印術を成功させてしまう。
実はこの時点で弟子である才気溢れる少年は師を越える封印が可能になっていたのだ。
その後も師の代わりに王の命令による各地の強力な魔物を封印を続けてきた少年はやがて青年になり、そして封滅師の称号を得ることになる。
封滅師とは封札師(士)の中でも最上位に位置する存在だ。
こうしてただの村の少年だった彼はフウオウと名前を改め「英雄」として祭り上げられることになる。
この物語があの洞窟で出会ったフウオウって爺さんのことで良いんだよな?
とりあえずこの情報を整理する。
・パティア洞窟に居た老人は英雄フウオウで間違いがない。
・封札士系統の最高位は封滅師と呼ばれる職業である。
・封札士のスキルなら都市クラスの魔物にも対抗出来る?
こんなものかな、ミニッツやスイならもっと他にも情報読み取れそうだけど。
本を元の場所に戻し図書館を後にする。
少し暇になっちゃったな、スキル屋か露店でも見て回ろうか。
ツノハは商都と名付けられるだけあってNPC店舗も充実している。
ハイジマでは武器屋はひとつしか無かったがツノハでは武器の系統ごとに店があり商品も充実している。
何よりこの街には生産職御用達の店「素材販売店」がある。
基本的には生産職の人しか利用しないが一応説明しておくと。
素材販売店は文字通り素材を扱う店なのだがこの店はギルド直轄の店になるのだ。
そしてこの店で売りに出される素材はプレイヤーがクエストで納めた素材が売りに出されることになる。
ここから自分たち生産職以外のプレイヤーにも関係することだが。
需要のあり在庫数の少ないアイテムを納めるクエストの報酬は高くなり、その逆は安くなるのだ。
なのでこの素材販売店の動向は見ておく必要があるのだ。
在庫数の少ない素材が判れば報酬の高いクエストを狙って受けれるからね。
「ん?あそこにいるのは」
ツノハの露店通り(森を抜けている人は意外と多い)を物色しながら素材販売店に向かっている途中でレトを見つけた。
何故か肩を大きく落としふらついている。
どうも様子がおかしいな。
「おーい、レト。どうした何かあったか?」
「・・・センか、頼む!助けてくれ!」
なんだ!?なにがあったんだ??




