第二の街2 出発
「――――と言うことがありまして」
「ああ、それで・・・」
あの後「お兄様に嫌われたかも知れない」と狼狽えるダイチを落ち着かせたは良いが結局ログアウトしたクノイはフォロー出来ないでいる。
この場合リアルで親戚だというスイに相談することにした。
「叔母様から娘の様子がおかしいって連絡は来てたのよ、納得したわ」
親まで心配するほどか。
「何か良い方法無いですかね」
「そうね、方法が無いわけじゃ無いのよね」
「有るんですか?」
「伊達に10年以上クノイちゃんのお姉ちゃんしてたわけじゃないんだから、前々から考えてはいたのよ」
誇らしげに胸を張るスイ、だから目のやり場に困るポーズはしないでほしい。
「まずはクノイちゃんの意識改善ね、自分も可愛い服を着られるようになれば問題なくなると思うのよ」
「ですがクノイはそのかわいい服が着られないから今の状態に成っているわけで」
「そこは考えているわよ。クノイちゃんが着られるぐらいで尚且つ可愛い服をね」
「有るんですか?そんな服が」
「ずばり!ボーイッシュよ」
「ボーイッシュですか」
なるほど、男の子っぽいけど女の子の格好か。
「現実でも着せようとしてるけどなかなか着てもらえないのよね」
ダメじゃん。
「でもHGO内でならどうかしら」
「ゲーム内でなら着てくれるかも知れないってことですか」
「そう言うことよ」
たしかにそれならクノイも着てくれそうだな、ゲーム内ってことで箍が外れて多少の無理は出来そうだし。
「それでボーイッシュで良いとして装備の当てはあるんですか?」
「そこが問題なのよね、クノイちゃんに似合いそうな装備って無いのよ」
ダメじゃん。2回目のダメじゃん。
「話は聞かせてもらったわ」
振り向くとミニッツが真後ろに居た。全然気付かなかったぞ。
「任せて、ようは可愛い服を用意出来れば良いのよね」
「可愛いと言うよりボーイッシュ、中性的な感じなのが良いのかな」
「ついでにくの一的なのが良いのよ」
「当てはあるわ」
流石、ミニッツだ。
「噂だと見た目に拘りつつ性能も高い装備を作れる防具士が居るって話よ、その人にお願いできれば問題解決するんじゃないかしら」
「それって誰?」
「知らないわ」
3つ目のダメじゃん。
「でも生産職の事なら知っているかも知れない人は知っているわよ」
「それって?」
「そりゃあ多分カグツッチーのことだな」
「カグツッチー?」
「ああ、本当はカグツチって入れようとしたけど取れなかったかららしいぞ」
場所は変わって露店通り、ミニッツの予想通りヤクミチは知っていたみたいだ。
生産職は横の繋がりが強いって聞いていたけど本当みたいだな。
「そのカグツッチーさんって今どこに居るか知ってる?」
「ああ、多分今の時間だと船の上だぞ」
「船?」
「お金が貯まったから船に乗って次の街を目指すって、つい1時間ぐらい前かな」
「一足遅かったか」
ヤクミチもフレンド登録しているわけでは無いみたいなので連絡手段は今のところ無し。
ちなみに次の街であるツノハに行く手段は二通り存在する。
1つが正攻法でサカイ大森林を抜ける方法だ、途中に居るボスを倒す事が出来れば通る事が出来るようになる。
2つ目は船に乗って移動する方法、こちらはいくつかのデメリットは有るがボスと戦わなくてもいいルート。
デメリットは船賃の高さと極稀にだが強力な水棲魔物の襲われる可能性がある事だ。
その魔物は異常に強いらしく結局βテスト時代には討伐することが出来なかったらしい。
「そうなると次の街に行って直接会うしかないか」
名前と行き先が分かったから良しとしよう。
「早く次ぎの街に行きましょ!」
「お、おう」
クノイの剣幕にレトが押されている。何が有ったんだ?
「クノイちゃん、少し落ち着きなさいよ」
「私は落ち着いています!」
古今東西今のセリフを落ち着いた状態で言えた人は居ない。
「おかえりなさい、防具士には会えたの?」
「いや、一足違いで会えなかった」
「そう、残念ね」
「それであの騒ぎは何が有ったんだ」
「クノイが早くツノハに行きましょうって騒いでるのよ」
「なら丁度良かったかもな、例の防具士は船でツノハに向かったみたいだぞ」
「あら、そうなのね」
「分かったよ、全員ランク2になったし頃合いだから行くか」
ついにレトが折れて(?)ツノハに行くことが決まった。
「早く行きましょう!」
「準備するから少し待て!」
大丈夫なのだろうか。
クノイの心配をしながらそっとため息をついた




