リベンジ5 勝利そして・・・
今話でジャイアントブロックアントをGBアントと表記します
北門を抜けて再びサカイ大森林へに向かう。
準備も出来てるし作戦もある、今度は勝てるだろう。
「作戦は良いですけど、場所あるんですか?」
「ああ、その辺りも聞いといた、俺達が戦ってた場所から少し東に行った所に適した場所が在るらしいんだ」
今回の作戦には高い壁が必要だ、これから向かう場所には切り立った崖が有り、これを壁代わりにする。
「誰も居ないな」
トレインするので巻き込まないようにしないといけないが実際にはあまり効率のいい狩り方ではないので人は居ないのだろう。
一旦防具を脱いで封印して解放してから着る、ボス戦、特にGBアントを相手するには必要な処置だ。
そして各自配置に着く、と言ってもクノイ以外の3人は崖から少し離れて並ぶだけ何だけどね。
「それじゃあ、引っ張ってくるねー」
「無理しないようにね」
「はーい」
ブロックアントを引っ張ってくる役割はクノイだ。
4人の中で一番AGIが高い、単純に脚が速いだけではなく回避しながら連れてこれるからだ。
「おまたせー」
クノイが大量のブロックアントをトレイン状態で連れてきた、おそらく30匹ほど居るかな。
「準備はいいか」
「オッケーッス」
「い、いけます」
3人で爆風爆弾を構えて待つ。
クノイが走りながら目に前を、つまり崖と自分達の間を通り抜けていく。
「今だ!」
クノイの後を追いかけているブロックアントの群れに向けて爆弾を投げつける。
そうすると爆弾が破裂して中から風が吹き荒れブロックアントを吹き飛ばすされ、そしてブロックアントの飛ばされた先には切り立った崖が存在している。
風によって飛ばされたブロックアントの群れはそのまま崖に叩きつけられダメージを受けている。
つまりノックバックを起こし火属性の範囲攻撃の代わりにしてるのだ。
ちなみにプレイヤーに対しては少し強い風が吹いた程度にしか感じない。
しかしこの方法でのダメージはそれほど高くない、なので。
「もう一回だ」
もう一度爆弾を投げつけてブロックアントを吹き飛ばしダメージ与える。
今のでブロックアントのHPは半分ほどになり一部の魔物が気絶状態になっている。
「後は普通に倒していくよ」
「うッス」
壁に叩きつけて倒した場合プレイヤーからダメージを与えられてないとシステムが判断してしまいクエストの討伐数にカウントされず、またGBアントのPOP条件にも外れてしまうため必ず攻撃しなくてはいけない。
前回と違いほとんどのブロックアントは弱っているため簡単に倒す事が出来る。
1回目の釣りで引いてきた30匹のブロックアントはすぐ全滅させる事が出来たが肝心のGBアントは出てこなかった。
「次行ってきまーす」
回復薬を飲んでHPを回復させたクノイが走り出す。
たぶん次の群れで出てくるかな。
クノイが釣ってきた群れに対して爆弾を投げつけ崖に吹き飛ばしダメージを与え倒す。
そして残りが4匹となったところで反転して逃げ出した。
条件達成したようだ。
「ここからが本番だ、気を引きしめて行くよ」
「うッス、気合い入れるッス」
「今度は勝つよー」
「は、はい」
逃げ出したブロックアントが穴を掘り出し始めた、しばらく待っていると。
穴の中からGBアントが出現した。
牛ほどの大きさの巨大蟻しかも四角い、やはり気味悪いな。
「ギチギチッ」
GBブロックアントがこちらに狙いを定めたようだ。
「解放」
ウルフを呼び出し戦力に加えそして毒化剣を構えてGBアントの前に立つ。
本来なら剣士であるクノイが前衛をするべきなのだろうが今回は自分が前に出る。
理由はクノイが回避型の装備のため布装備だとかランク差で防御がこっちが上ってのもあるけど一番の理由はGBアントの攻撃方法にある。
「ギチギチッ」
突進をしてきたGBアントを回避する。
今回はすでに解放状態の札が3枚もあるのでMPの自然回復がかなり遅い、そのため確実なときにしか弱点看破は使わない。
その代わりに――――
「こいつを食らえ!」
回避際に火炎爆弾を目の前に置いておく、突進したまま爆弾に突っ込み被爆するGBアント。
ボスに対してならもう火属性の攻撃をしても問題ない。
それでもHPの1割も削れていない、弱い部類といっても流石にボスか。
反転してこちらに向いたGBアントが口から液体を吐きかけてくる、所謂蟻酸の攻撃だ。
こいつがクノイを前に立たせない一番の理由で、こいつに当たると毒状態になり徐々にHPが減っていくがそれ以上にやっかいなのが防具の耐久値を削る効果まであり、そして掛かった服が短時間ではあるが装備がボロボロになるエフェクト付きなのだ。
短い時間とはいえ女の子にそんな格好をさせるわけにもいかないので封印装備をした自分が前に出たわけだ。封印装備なら耐久値が削れないので例えかかったとしても大丈夫だ。
蟻酸の攻撃を避けきれず少しかかってしまったが幸い封印装備の部分なので特に問題ない。
DoTもそれほど強力でもないしね。
・・・しまった、封印してあるのは上半身の装備だけで下半身は封印してなかった。
一応、見えちゃいけない部分は破けないけど、もしかして、いやもしかしなくてもかなり間抜けな格好にならないか・・・
「み、みんな速攻で倒すよ!」
「はい」
「りょうかいッス」
「まかせてー」
タイムリミットはズボンの耐久値だ。
GBアントは呼び出すのに苦労するだけでこいつ自身は堅いだけのそれほど強い部類にはならない。
クノイはその身軽さを使い、攻撃を躱し確実にダメージを与えている。
トイスも遠距離から強力なスキルで攻撃を加えている。
ひとつだけ問題があるとすれば・・・
「大地突針、あぁ・・・」
ダイチの攻撃が当たらないことだろう。
土弾のように魔物を直接ターゲット出来る魔法は当たるのだが、地面に設置する魔法の場合外すことが多い、そして地面を対象にした魔法は高威力な魔法が多い。つまりダイチだけが本領を発揮できていないのだ。
「ダイチちゃん落ち着いて」
「は、はい・・・」
クノイの励ましも効果なしか。そもそも土魔法は扱いの難しい上級者向けの魔法だし、慣れない内は仕方の無いことなんだけど、そんな励ましも意味ないか。
この戦いで活躍させてあげた方がいいかも知れないな。
「トイス、クノイGBアントの足止め専念」
「センさん?」
「どうしたッスか?」
「ダイチ止まったGBアントに向けて最大火力でぶっ放せ!」
ふたりは今の一言で察してくれたらしくGBアントの足止めをしくてくれている。
こっちも同じく足止めに入る、GBアントの前に立ちついでにウルフも嗾ける。
「ダイチちゃん、今だよ」
GBアントの足を攻撃して動きを止めていたクノイから声が上がる、そのタイミングに合わせてスキルを発動させる。
「大地突針!」
地面から土で出来た巨大な針がGBアントの下から生えて大ダメージを与える。
こいつはすごい、火炎爆弾とほぼ同等のダメージを与えてる。
「いいよーその調子その調子」
「はい!」
少しは元気出たかな、しかし弱点属性でもないのにこの威力か土属性が弱点の魔物相手にした場合はどうなるんだろうな。
ダイチの攻撃が当たり出してからGBアントのHPの減りが早くなってきた。
やはり高火力のダメージディーラーがいると楽でいいな。
残りHP2割、この時点でもう一息と気が緩んでいたのかも知れない。
GBアントの動きが変わったのだ、ボスの中には残りHPで攻撃方法を変えるのが居るのは知ってはいたけど、こいつもそうだったのか。
今まで前にしか吐きかけてこなかった酸攻撃が首を大きく振り回し周囲にまき散らす攻撃になった。
「わわわ、あぶな!」
「なんだ、こんな情報無かったッスよ」
もしかして、製品版で強化されてるのか!?
「ギチーギチギチッ」
GBアントが一頻り酸をまき散らした後向いた先には――――
「え?ボク」
GBアントがダイチに向かって突進攻撃を繰り出した、しかも今までよりも速い。
猛スピードでダイチを轢きにかかるGBアント。ダメだ、位置関係のせいで助けるのが間に合いそうにもない!
「ぜぇぜぇ、間に合いましたよー」
ダイチはGBアントにも負けない速さで駆け抜けていったクノイに抱きかかえられている。
「あ、ありがとうござます・・・」
「仲間なんだから気にしないでー」
良く間に合ったな、それに怖かったのかダイチもボーッとしている。
まだ戦闘中ってこと忘れてないか?
とにかく突進を躱されたGBアントを探さないと・・・
あ、崖に頭ぶつけて気絶状態になってる。
「今がチャンス!全員総攻撃!」
「「「おー」」」
気絶状態でしかも残りHPもほとんど残っていなかったGBアントは程なく倒す事が出来た。
「かちだー」
「勝利ッス!」
「や、やりました!」
リベンジ戦の勝利だ、通常より喜びが深いんだろうな。
「勝てたよ、ダイチちゃん」
「はい、勝ちました。お兄様」
・・・ん?
今クノイに向かって何て言った。
お兄様の顔が少し引きつってるな。
「ダイチちゃん、ちょーっといいかな」
「はい、何でしょうお兄様。あ、ごめんなさい勝手にお兄様だなんて呼んでしまって。お兄様とお呼びしても良いでしょうか」
女の子のクノイに向かってお兄様連呼してるよ、これは流石に怒るよな。
「ねえダイチちゃん少し黙って聞いてくれる?」
「はい」
少し息を吸って気合を込めながら宣言をする。
「私は女だ!」
「・・・・・・え?」
「ダイチちゃんも同じ女の子なんだから分かってよ、たしかにこんな見た目だけど歴とした女、女性、分かった?」
目が点になってるか、まあ男と思って尚且つお兄様と呼び慕った相手が実は女性だと分かったらショックだよな。
「・・・クノイさん」
「わかってくれた?」
「ボク男ですよ」
「「「え?」」」
え?へ?今何て?どう見ても女の子にしか見えないのですけど・・・
「・・・男の娘ッスか」
それだ!
じゃなくて確かに名前が男っぽかったけど見た目完全に女の子だぞ。信じられない。
「あ・・・えっとーあれ?」
クノイが完全にフリーズしてるな、起こさないと。
「起きろクノイ」
「あーあっそうだったの男の子だったんだー、そかそかごめんねー」
「いえいえ、これでおあいこですね」
「ははは・・・そうだねー」
「それでクノイさん」
「は、はい!」
「お兄様とお呼びしてもよろしいですか?」
あ、女と分かってもお兄様なんだ。
「ちょっ待って。私女なの分かったでしょ、なのにお兄様はないんじゃ無いかな」
「ボクは気にしませんよ、何でしたらボクのことを「かわいい妹ちゃん」と呼んでもいいですよ」
「呼べるかー!」
「それがダメならお兄様と呼ばせて下さい!」
これは収拾つくのか?
「いやービックリッスね、男の娘って初めて見たッスよ」
「止めなくていいのか?」
「いや、見てるの面白いんでそのままが希望ッス」
「それもそうだな」
二人が止まるまで待つか。
キャラクタープロフィール
・ダイチ
・土魔法術士
・サカイ大森林でトレインしていた初心者プレイヤー
見た目完全に女の子な男の娘
クノイをお兄様と呼び慕う




