リベンジ4 勝つために
「負けたーあんなの無理ッス!」
ジャイアントブロックアントに負けた俺達は現在ギルドの休憩所に集まっている。
死んだ場合デスペナルティが発生して1時間のステータス低下とランダムで3レベル分のスキルが低下する。
今はステータスが低下している通称喪に服している状態だ。
「ごめんなさい、僕が巻き込んじゃったから・・・」
今回の事で一番気に病んでるのはこの子だな。
どうやらダイチもMMOの初心者らしく知り合いも居ないソロプレイヤーだとか。
サカイ大森林に狩りに来たが1匹だけはぐれてると勘違いしてブロックアントを攻撃したところ周りに居た他のブロックアントに追いかけ回されるようになったらしい。
土魔法術士ならそうだろうな、土魔法の特徴は威力は高いが範囲魔法がほとんど無くまた発動までの時間もある。ブロックアントの様な群れる魔物相手には相性が悪い。
「気にしなくてもいいよーこっちが勝手に巻き込まれたんだからさ、そういうのがイヤなら無視するだけだし-」
クノイがフォローする、真っ先に飛び込んだのは彼女だし説得力もあるな。
「・・・ありがとうございます」
「気にしすぎは良くないッスよ」
「それじゃ、これからの事を話そうか」
「はーい」
実はジャイアントブロックアントに負けた事によってクエストが失敗扱いになり結果80匹ほど討伐していたカウントが無くなった。
一応素材もクエスト対象になるが全然足りない、何よりギルドに納めるよりプレイヤーの露店に売った方が儲けがあるし、装備の素材にも成るのであまり納めるのはしたくない。
「なので選択肢は別のクエストにして安全に行くか――――」
「そんなの決まってるッス」
「リベンジだね」
「だよな」
考えてることは同じらしい。
「えっと、僕は・・・」
「ダイチちゃんも一緒にやろう」
「え、いいんですか?」
「もちろん」
クノイが気負いもなく笑顔で答える。
巻き込まれたことも忘れてるだろうな。
「はい!お手伝いさせてください」
「おっし、それじゃやることを決めるッス」
まず情報収集、弱点は火属性とわかっているけれど出現条件が不明。
同じ状況を作れば良いのだろうけど、あの状況の何が条件か判らないので先ずはそれを調べる。
次に買い物。使いきった回復薬や必要と思われる物の補充だ。
「調べるのはオレッチがやっとくッス」
調べ物は初心者ふたりには任せておけないのでトイスが申し出てくれた。
オレが調べても良かったけど買い物の時に立ち寄りたい所があるのでお願いをする。
「それじゃあ、よろしく頼むよ」
「うーッス」
クノイとダイチを連れて向かう先は露店通りだ。
通りに着いたらそれぞれ分担したアイテムを買いに一旦別れる。
「やあ、ヤクミチ商売繁盛してるか」
「おう、センか。まあボチボチだな」
薬士のヤクミチには消耗品関係でお世話になっている、特に回復薬に関しては他の露店よりも効果が高いことで有名になってきている。尤も値段が高いことでも有名だ。
ヤクミチに言わせれば「良い物はそれだけ手間暇掛かっているだから高くて当たり前だ」と主張する。
「なんだもう回復薬の入り用か?」
「まあね、それと作ってほしいのが有るんだけど」
「なんだ?」
「火属性の爆弾って作れるか?」
今回自分が買い出しに来た理由がこれだ、ジャイアントブロックアントの出現条件はおそらく大量にブロックアントを倒す事だろう、それならば火属性の爆弾で一気に吹き飛ばせばいけるかも知れない。
「こっちも商売だから売って欲しいなら売るけどな、好奇心からで聞くが何に使うんだ」
「ジャイアントブロックアントの討伐に使おうと思ってね」
「大四角アリのか?どう言うことだ」
ちなみに大四角アリと言うのはジャイアントブロックアントの略称らしい。
ヤクミチに経緯を伝える、最終目標はジャイアントブロックアントへの復讐だ。
「たしか大四角アリの出現条件に属性が関係してたと思ったんだが、詳しくは忘れたが確か火属性使っちゃいけないとか」
そうなのか?それだとやり方変えなきゃいけないかも知れないな。
爆弾作戦失敗だ。
「火属性じゃなきゃいいんだが、ちょっと待ってろ」
ヤクミチがメニューウインドウを操作しだした、何か有るのかな?
「あったあった、こいつでどうだ」
ヤクミチの手にあるのは手のひらサイズの玉が乗っていた、爆弾じゃないのか?
「こいつは暴風爆弾通称吹っ飛び爆弾だ、火属性が駄目なら他の属性にすればいいだけじゃねえか」
つまり風属性の爆弾か。
「こいつはちょっと特殊な爆弾でなダメージを与えずにただ前面に吹き飛ばすだけでな主に逃げる為に使われるアイテムだな」
「それだと意味ないんじゃないのか」
「まあ聞けってそれでも使い方次第で大ダメージを与えられるんだよ、こいつの使い方はな――――」
面白そうな使い方だな、よし買った。
ヤクミチの所で消耗品と爆弾それと頼まれていた矢も買ってギルドに戻る。
「お帰りッス、どうでした」
「ああ、いい作戦を教えてもらってきた、その作戦でいこう」
トイスの調べた情報によるとジャイアントブロックアントの出現条件は火属性を使わずに一定時間内に規定数のブロックアントを討伐することだとか。
今回のは最初にクノイが火炎玉を使っているけどどうやらそれ以降に条件を満たしていたらしい。
ヤクミチの言った通りだな、知らなかったら爆弾抱えて途方に暮れる所だったよ。
地図を見ながら今回の作戦内容を伝える。
「ほえー、そんな方法があるんだ」
「確かにあるッスね、さっき調べてる時にも載ってたッス」
「ちょっと面白そうですね」
「ただこの作戦はあくまでジャイアントブロックアントを呼ぶまでの作戦でボスには有効では無いんだよな」
「大丈夫ッスよ、ジャイアントブロックアントは呼び出すまでが大変なだけでそいつ自体はそれほど強くないみたいッスよ。作戦が上手く嵌まればほぼ無傷で戦えるからいけるッスよ」
実際サカイ大森林に出現するボスでいながらパッティゴブリンロードよりも弱いらしい。
「よし、準備もしたしそろそろステータスも戻るし、行くか」
「やるッス」
「勝つよー」
「が、がんばります」
目指すはジャイアントブロックアントの首だ。




