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Heroes Guild Online  作者: ムムム
もうひとりの封札士
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もうひとりの封札士7 ボス戦

 フィールドボス パッティゴブリンロード。

 ここパッティの森に出現する徘徊型のボスエネミーだ。


 ボスエネミーにはいくつか種類があり、徘徊型は倒しやすく最もやっかいと言われている。

 徘徊型はボスとしては中程度の強さで、そのフィールドの適正LvのプレイヤーがフルPT(7人)でやれば倒せる強さ設定だ。

 ただし一所に止まって居らず常にフィールド内を動き回っている。

 そのため今の自分達のように準備も無く突然出会ってしまうなど俗に言う事故が起こる。


「なんで浅瀬に居るんだ?森の最奥か来ても中頃までだろ」


 そう愚痴ったところで事態は変わらない。

 すでにゴブリンロードにターゲットされているようだ。


「に、逃げようよ」

「いや、無理だ。ゴブリンロードは足が速いことも特徴だ。逃げても追いつかれる」


 全員で逃げても追いつかれて一人づつ倒されて終わりだろうな。


「ここは囮になるから3人は逃げて」

「え?でも」

「いいから逃げる」


 3人を置いてゴブリンロードの前に出る。

 見上げるほど大きい体に両手持ちの大剣を持っている。

 俺が前に出たからなのか走って追いかけてくるような事はなく見下すような感じで迫ってくる。


「こ、怖いですけどがんばります」

「そうですね~やるだけやってみましょう~」

「ふ、ふんこの大魔術師のローズマリーが逃げるわけないじゃない」

「なんで逃げないんだよ」

「なんでって?センさんが囮になろうとしたのと同じ理由だと思いますよ~」


 仕方が無いな、やるだけやってみようか。


「それなら全力で戦うよ、出し惜しみなしだ」

「はい!師匠」

「勝ちますよ~」

「我が魔導の冴えを見せてあげるわ」


 陣形は俺がゴブリンロードの正面に立ちリンドウとローズマリーが横から 攻めるそしてアンズが後ろで支援と回復を担当してもらう。


「いきますよ~強化首飾ブーストネックレス強化指輪ブーストリング


 リンドウのスキル発動と共に3人の首飾りと指輪が光る。

 生産職系のスキル強化ブーストだ。

 来る途中でリンドウから装備買っとけば良かった。


付与知力エンチャントインテリジェンス


 ローズマリーの付与エンチャントも発動する。

 付与士ほどでは無いけれどこれで魔法攻撃の威力は上がる。


「いくぞ、斬撃スラッシュ


 ゴブリンロードに一太刀加えるがほとんどHPが減っていない。

 逆に反撃を加えられる、何とか躱し直撃はしなかったが。


「カスっただけで3割も持ってかれた」


 直撃したら一撃で終わりっぽいな。


光輪回復ライトヒール

「助かった」


 アンズの回復魔法が飛んでいてHPを回復させる。

 でも頼りっぱなしにするのもまずいよな。


「やぁ~」


 回り込み後ろから攻撃をするリンドウ。

 ただしあまり威力は無い、リンドウが装備している短剣は一撃よりも手数を増やす武器だ。

 しかもリンドウは攻撃スキルを持っていない。


「グギャ?」


 あまりの威力の無さにゴブリンロードも蚊に刺されたかのような反応を見せる。

 今回はこれでいいかもな、あまり高い威力の攻撃をされるとそっちに敵意ヘイトが向きかねない。

 そうなったらおそらくリンドウは攻撃を躱せない。


「お前はこっちを向いてろ」


 攻撃を躱すことを優先しつつ攻撃を加えていく、暗闇ブラインドに掛かってくれれば有利に進めるのにやっぱりボスは耐性持ちか。


「そろそろ良いかしら、邪骨弾丸イービルボーンブリット


 ローズマリーの手から邪骨と呼ばれるアイテムが弾丸の様に飛んでゴブリンロードに当たる。

 邪骨は骨系のアイテムを邪法によって加工して作るアイテムらしい、その邪骨を魔法として打ち出すのが邪骨弾丸だ。

 威力も高くMP消費も良い魔法なのだが邪骨を作るのに骨を複数使うため財布的な燃費が悪い欠点がある。


「グギャー!」

「よそ見をするな」


 邪骨弾丸イービルボーンブリットによってローズマリーに向きかけた敵意ヘイトを無理矢理こっちに戻す。

 高威力の魔法を使う魔法術士はあまり魔法を乱発しすぎると敵意ヘイトを持っていってしまう。

 ローズマリーだとたぶんカスっただけで死ぬ可能性もあるからな。

 タイミングを見ながら使って貰った方が助かる。


 そうして戦いを進めていく、HPを少し削れてはいるが決定打が無い。

 そのうちMPが切れて負けるだろう。


「あ?なんでこんな浅瀬にゴブロードが居るんだ?ってお前ら!」


 誰だ?声がするが振り返る余裕なんて無いぞ。


「てめえ無視すんじゃねえ。こっち向きやがれ!」

「無理言っちゃだめだよギンちゃん」

「もしかして銀太次郎か何で居る」

「ペナルティー時間が終わったから狩りに来たんだろうが、それよりてめえ等何やってるんだよ」

「見ての通りだ、なぜか浅瀬に居たゴブリンロードに襲われている」


 回避に専念しながら会話するのは難しいんだよ。

 対応をリンドウに任せようとしたら


「おい、お前等一度PT崩すぞ」

「え?ギンどうしたんだ?」

「そっちのPTリーダーは誰だ、俺たちを誘いやがれ」


 一体何考えてるんだ?


「さっさっとしろ、こっちはとっくに解散済みだ。手伝ってやるって言ってるんだ」

「でも~」

「別に誘わないならそれでもいいんだぜ、そうなったらてめえ等全員死に戻ってから弱ったゴブロードを狩るだけだからな」

「リンドウ誘うんだ、何考えてるか分からないけど手伝って貰えるなら手伝って貰おう」

「へっそっちのお前の方が話し通じるじゃねえか、ほら早くしろよ」

「む~」


〈銀太次郎がPTに加わりました〉

〈鉄堂がPTに加わりました〉

〈フレンドドリーがPTに加わりました〉


「よし、やるぞお前等」

「おう」

「いくよ、ギンちゃん全能力強化フルエンチャント


 全能力強化フルエンチャントってことは付与士か。

 たしか1PTにひとりにしか掛けられないが対象の全ステータスを大幅に上げる、付与士のスキルだ。


「いくぜデカブツ!飛斬エアスラッシュ


 PVPをした時よりも大きく威力の高い飛斬エアスラッシュがゴブリンロードに直撃する。

 そのため敵意ヘイトが一気に銀太次郎に向く。


「どうだ、デカブツ」

「ギギギグギャー」

「後ろがら空きだ、鉄拳殴打アイアングラップル


 鉄の塊のようになった拳がゴブリンロードを襲う、こっちは格闘士か。


「何やってるのこっちも負けてられないわよ、闇玉ダークボール


 ローズマリーの一言で我に返る、そうだまだ終わったわけじゃ無いんだ。

 その後銀太次郎を前衛に7人総出で攻撃を加えていく。

 こうなったらゴブリンロードとはいえ相手ではなくなる。



「これで最後だ逝きやがれ!」

「ギャァァァァァァ」


 銀太次郎の止めでゴブリンロードが断末魔の叫びを上げながら消えていく。


「勝ったのか」

「けっ当たり前だろうが俺様が居て負けるわけねえだろうが」

「あら~センさんに負けた方が何を言ってるのやら~」

「てめえこのアマ


 兎も角勝てて良かった。

 あ、ロードから角がドロップしてる。





「角が集まったし、約束通り一度戻らせてもらう」

「私たちも疲れましたしもどりましょ~」

「なんだてめえ等帰るのかよ」

「ああ、一応俺は目的を果たしたからな、それよりどうして手伝ってくれたんだ?」

「そんなのどうでも良いだろうが、まああれだ楽にボスのドロップを手に入れる為だ」


 気にしすぎてもしょうが無いか、早く戻ってヤクミチにアイテムを渡して置かないとな。

 戻ろうとしたところで銀太次郎の友人の鉄堂が声を掛けてきた。


「ギンの事をあまり悪く見ないでください、あいつは口も態度も性格も悪いが根は友達思いの良いやつなんです」


 その説明でとても良いやつには見えないのですが。


「今回は助かったしそうだと思うようにしておくよ」

「最初はそれで構わない、感謝する」


 鉄堂が銀太次郎の元に戻っていく、3人で狩りに行くために森の奥に向かっていった。


「ひょっとして銀太さん私たちのこと助けてくれたんですかね?」

「そうですか~とてもそうには見えませんでしたが~」

「でもあの人の言うとおり私たちが居なくなってから倒した方が良かったのかも知れないですし」


 どうだろうな、真相は藪ならぬ森の中ってね。

 そうして俺達は町に戻って解散した。

 3人とはフレンド登録をしてからヤクミチの元に向かいアイテムを渡す。

 ボス戦は流石に疲れた。今日はもうログアウトしよう。


 こうして2日目が終了した。

キャラクタープロフィール

・ローズマリー

・闇魔法術士

・4人娘のひとり

 いわゆる邪気眼中二病

 深淵の知識の探求者にして禁断の魔術の使い手らしい

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