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まとめ
静けさだけが支配する魔力測定室で、奇妙な均衡が保たれていた。
水晶球は沈黙し、測定士は青ざめ、リリアは震え、
そして当のヴィオラだけが、まるで“正しく測定が終わった”かのような落ち着きで佇んでいる。
魔力の粒子は彼女を避けるように流れ、
水晶球の内部の光は、手前でそっと消えた。
まるで「あなたには触れません」と礼儀を尽くすように。
測定士は声を出せず、リリアはツッコミも飲み込む。
――静かなギャグは、音ひとつ立てずに完成していた。
ヴィオラはただ無表情に手を引き、
「終わったか?」とでも言いたげな顔で測定士を見る。
測定士(心の声)
「(終わってなど……終わってなどおりませんが!?)」
だが口には出さない。
この“魔力ゼロを超えた何か”の前では、誰も無闇に言葉を発せない。
こうして、公爵家の魔力測定は――
何も起きなかったことが最大の異常として、静かに幕を閉じた。




