31/51
ヴィオラの淡々とした返答
ヴィオラは、まるでただの形式確認に応じるかのように、
一瞬の間も置かず淡々と返した。
「しておる」
乾いた空気に、静かに落ちる一言。
声音には揺れも迷いも、まして恥じらいなど微塵もない。
本当にただ“事実を述べただけ”という風情。
測定士はその瞬間、なぜか胸を押さえた。
心臓に悪い種類の静けさだった。
測定士(心の声)
「(い、いや……! 呼吸は……! 関係ありませんから!!
今、確認すべきは魔力の有無であって……!)」
しかし当の本人は、測定結果に興味もなさそうに水晶球の沈黙を眺めている。
「呼吸はしている」——その言葉だけが虚しく室内に残り、
水晶球のほうがむしろ気まずそうに輝きを消しているかのようだった。




