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リリア、震え声の確認
沈黙しきった測定室の空気に、リリアの喉が小さく鳴った。
水晶球は光らず、揺れず、まるで「存在を消している」かのように沈黙している。
部屋の魔力粒子さえ、ヴィオラを避けて流れているのが目に見えるようだ。
耐えきれなくなったリリアが、そっと一歩前に出る。
声は震え、しかしお嬢様を気遣おうとする必死の丁寧さが残っていた。
リリア
「お、お嬢様……あの……その……
こ、呼吸は……されてますよね……?」
ヴィオラは淡々と、首だけを静かにリリアへ向ける。
瞳はいつも通り澄み切っていて、動揺のかけらもない。
ヴィオラ
「しておる。」
その即答が、逆に測定士とリリアの背筋をぞくりとさせた。
まるで「呼吸しているから問題ない」という次元で片付けられる話ではないと、彼らは理解しているのに――
当の本人は、まったく理解していないかのように平然としている。
測定室の静寂が、いっそう深くなった。




