表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢ですが武の道を往く ― 元空手家おじさん、貴族社会を正拳突きで切り拓く!』  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/51

鏡に映る“自分ではない自分”

枕元に、朝の光を薄く宿した銀の手鏡が置かれていた。

ヴィオラ――いや、元・おじさんは、静かにそれへ手を伸ばす。


鏡面は冷たく、薄氷のような感触がした。

角度を傾けると、白い髪の少女がふわりと映りこむ。


透き通るような肌。

眠りの余韻を残す細い睫毛。

かつて見慣れていた、日焼けした額の皺も、潰れた拳の節張りもない。

ここには“武道家のおじさん”の影は、どこにもない。


しばらく眺めたあと、彼女はただ短く息を吐いた。


「……なるほど。

これは、そういうことか」


驚きよりも、受け入れが早い。

長年、呼吸を整え、状況を見極め、事実だけを淡々と飲み込むことを繰り返してきた身体と心が、

こういう非常事態にさえ静かに順応してしまう。


少女の顔が、鏡の中でわずかに瞬きをした。

その表情には、動揺の影はない。

ただ、朝露に触れるような淡い静けさだけがあった。


「顔が変わろうとも、呼吸は同じじゃ。

なら、問題あるまい」


そのつぶやきが、鏡の向こうの少女に染み込むように消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ