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ヴィオラ、手を置く
ヴィオラは台座の前に立つと、余計な動きひとつなく腕を伸ばした。
その所作は、まるで空手の演武の一部であるかのように澄み切っており、
指先まで“無駄が存在しない”静かな軌跡を描く。
測定士は、なぜか自分の方が姿勢を正してしまい、
背筋をぴんと伸ばしてしまった。
水晶球の表面に、彼女の白い指先が触れる。
無音。
無風。
ただ、静か。
ヴィオラ
「こうか?」
その声音も、湖面のように平坦で揺らぎがない。
測定士
「は、はい……そのまま……」
(内心)
「(お、落ち着きすぎておられる……!?
いや、もっとこう……魔力が反応して光るはずなのに……!)」
ヴィオラの呼吸は一定で──
周囲の魔力だけが、そっと一歩引くように沈静していった。




