表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢ですが武の道を往く ― 元空手家おじさん、貴族社会を正拳突きで切り拓く!』  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/51

リリアの困惑

リリアは、部屋の隅でそっと控えていた。


ヴィオラが、何の前触れもなく呼吸を変え始めたからだ。

ゆるやかで、しかし確かな節をもった息づかい――

まるで、見えない糸で空気の流れをたぐり寄せているような、奇妙な静けさ。


胸が上下するたびに、部屋の空気がひとつ、微かに形を変える。

それは魔術師の呼吸でも、魔法詠唱に伴うリズムでもなかった。


ただただ、自分の内と外を等しく整える、何かの“型”のよう。


リリアは喉の奥で言葉がつかえたまま、主人の横顔を見つめる。


(落ち着いている……落ち着きすぎております……

 いえ、むしろ……まるでこの世界の人ではないような……)


問いかけたい。

「お嬢様、いったい何をなさっているのですか」と。


だが、その背筋の伸び具合と、呼吸の整い方を見ていると、

その問いを口にすることが妙に憚られた。


――触れてはいけない、静謐な儀式の最中のようで。


リリアは結局、唇を結んだまま、そっと視線を落とした。


「……」

(聞いてはいけない気がしますわ……これは……)


彼女の困惑は、静かな朝光の中に溶けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ