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エピローグ

 夏の終わりを感じる心地よい風が吹く日、メリアンとフェルディナンドの第三子であるリチャルド王子が一歳の誕生日を迎えた。この日は、王国中が待ち望んでいた大切な日であり、リチャルド王子の誕生日を祝うために、さまざまな催し物やイベントが行われた。


 リチャルド王子の誕生日を祝うため、王宮の前には大きなテントが張られ、そこでは宮廷料理人たちの国内外から集められた新鮮な食材を使った料理が無料で国民に提供された。また、リチャルドのために作られた巨大な誕生日ケーキが披露され、国民たちはその華やかさに目を奪われた。


 宴の最中、フェルディナンド王子とメリアンは、国民の前に、リチャルドを抱いて登場し、国民に向けて感謝の言葉を述べた。その後、ルカ王子とリリス王女も加わり、家族揃ってリチャルド王子の誕生日を祝った。家族の姿に国民たちは感動し、祝福の言葉や拍手が響き渡った。


 王宮の広場では、リチャルドの誕生日を祝うために様々なパフォーマンスが行われた。道化師たちが楽しい芸を披露し、音楽家たちは美しい調べを奏でた。また、ダンサーたちは華麗な舞を披露し、国民たちを魅了した。


 さらに、この日は子供たちにも特別なプレゼントがあった。王宮の庭園には、子供たちが遊べる様々なアトラクションが設けられ、王子や王女と一緒に遊ぶことができる機会が与えられた。子供たちは大喜びで遊び、リチャルド王子の誕生日を心から楽しんだ。


 夕方になると、王宮の空には美しい花火が打ち上げられ、国民たちはその華やかな光景に見とれた。花火の光が空に広がるたびに、リチャルドの誕生とその将来を祝福するかのように、歓喜に包まれた。花火が終わると、国民たちは改めてリチャルド王子の誕生日を祝う歌を歌い、祝福の言葉を贈った。




 その夜、フェルディナンド王子とメリアンはリチャルドの誕生後、初めて寝室で寝台を共にした。

 今までは夜泣きがひどく、常に母乳を求めるリチャルドのために、常についていなくてはならなかったが、最近では離乳食を食べ始め、だいぶ落ち着いたのだ。


 夜空には星が煌めき、満月の光が寝室を美しく照らし出していた。フェルディナンド王子は紅潮したメリアンの頬に手をおくと、愛しそうにメリアンの瞳を見つめ、深いキスをした。メリアンもまた、長い間ため込んでいた欲情を返す。薄いナイトガウンが剥げ、三人も子供を産んだとは思えないほど、美しい裸体が月明かりの下で輝く。


「この世のものとは思えないほど綺麗だ」


 フェルディナンド王子は堪らなくなり赤い髪やきめ細やかな肌を撫でる。メリアンは恥ずかしそうに微笑みながら、フェルディナンド王子の愛情を受け止めた。久しぶりに感じるお互いの温もりに、心と身体がとろけるように溶け合っていく。


 その後、二人は横たわり、互いの目を見つめ合い、家族の成長について語り合い始めた。リチャルドが初めて笑ったとき、頼り甲斐のある兄になったルカと思いやりのある姉になったリリスが彼と一緒に遊んでいる姿、それぞれの誕生日のパーティーの様子など、幸せな瞬間がたくさん蘇ってきた。


 特に、リチャルドが生まれた日のことは、二人にとっては忘れられない日だった。リチャルドが生まれた日、メリアンは難産に苦しんた。以前にルカとリリスの双子を出産したときの後処置が不十分であり、その影響が大きかったのだ。そのときも、メリアンは体力の限界まで追い込まれ、長時間の分娩に耐え抜いたが、リチャルドが生まれる際も、メリアンの体は同じような試練にさらされた。


 フェルディナンド王子はメリアンの部屋の前にいた。お産の場では医者以外の男性は立ち入り禁止だ。「王子と姫をご出産されたさいに負った深い古傷が開いてしまったようです…」


 そのような報告を逐一受けながら、王子は時間が経つごとに不安が募り、生きた心地がしなかったことを、今でもはっきりと覚えている。


 フェルディナンド王子は祈ることしか出来ず、子供が無事に生まれること、そして何よりもメリアンの無事を切に願っていた。

 メリアンはルカとリリスの出産時について多くは語らなかったが、衛生状態も悪く、不十分な環境の中での双子の出産というのは過酷な体験だったことは、その後、出血多量で、数日間生死の境を彷徨っていたらしいことを聞いて知っていた。出産を手伝ってくれた隣国からの不法移民だという村の女は、数日間生まれたばかりの子供たちの世話までしてくれたらしい。

 その話を聞いた時のフェルディナンドの心の痛みは相当なものだった。後に、彼は別の村でひっそりと暮らしていたその女性を探し出し、彼女に国籍と土地を与えてやった。これは、彼ができる限りの恩返しだと思っていた。メリアンもそれを喜んだ。


 幸い、リチャルドは無事に誕生し、メリアンも万全な環境で産むことができたおかげで回復の道を辿った。王宮の医師たちが彼女の健康を見守り、最高のケアを施していた。その後の経過も順調であり、安堵の息をついたのは、今でも記憶に新しい。


「あの日、お前とリチャルドが無事でいてくれることを祈ることしかできなかった。この王国で、権力のある私が、こんなにも無力さを感じたのは、お前を失くした時以来だった」


 彼は言葉に詰まりながらも、深い愛情を込めて語った。


「お前の強さには、毎回驚かされ、そしてそれにずっと惹かれている」


 フェルディナンド王子とメリアンは再び深いキスを交わす。互いの愛と存在を確かめ合うように。そして、そのまま抱き合ったまま眠りについた。


 二人が目覚めると、新しい一日が始まる。今日も家族の笑顔が輝く朝が訪れた。

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