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玩具が魅せる異世界特撮  作者: オーメル


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【第二百三話】いざ、強者の域へ

 輝く三体はその全てが半透明な姿で戦艦に敵意を向ける。

 カードに込められた意志は邪悪なものであるが、ベルトを通せば大部分を削ぎ落した純粋な意志として使用することが出来る。

 これは偶発的な結果によって本編では判明していない事実だ。解るのは劇場版でのみであり、ベルトを通すと正のカードであるQueenの意志もただの意志となってしまう。

 とはいえ、機械で出来るのは一定のみだ。邪悪な意志がベルトを通して使用者を汚染するのと同じく、Queenの正の意志も機械の限界を超えれば通る。

 ただ、今使われているのは全て玩具だ。実際の物ではない以上、三枚の放つ敵意は一喜の意志が乗せられている。

 何故それが出来るのかを、彼は解っていない。そも、疑問にすら思っていない。

 

 敵を倒せるのであればそれで十分。

 如何なる意志が乗せられていたとしても、彼はそれを戦う燃料に変えるのみ。

 追い詰められ、窮地に陥り、削ぎ落された本音はただ一つ。我を通す為であれば理屈も道理も捻じ伏せ、成すべき未来を掴み取る。

 鳴り響く機械音。厳かに流れる音は彼を祝福し、敵に対する死神の足音となる。

 見つめ合う両者は語り合うことをしない。片方は困惑と驚愕が勝ち過ぎて、もう片方は既に限界のラインを越えてしまったからだ。

 この後にどうなるのかなど誰も予想出来ない。着装する一喜ですら、これを使ったことで自分がどんな風になるかも解っていなかった。


「――着、装」

 

 静かに宣言の言の葉を乗せ、同時に指が動く。

 倒されるレバー。青光の輝きは増していき、極光となって彼へと迫る。

 黒のインナーが全体を覆い、光が鎧を形成。

 防御力を重視したフルプレートアーマーとは異なり、軽鎧となった姿からは身軽な印象が思い浮かぶ。

 胸部には円形の穴。そこに埋め込まれる形で青白く光る炎が灯り、全身に広がる形で青いラインが走っている。

 腰には小型のレーザー銃が二丁。頭部の赤いツインアイも青白く染まり、眉間から伸びる角はブレード状に変形していた。

 

 空中からは長大なレールガンが一つ。

 バズーカのように両手で持たねばならない武器は扱いに困難を極めるも、背中に装着した瞬間には重量を感じさせなくなった。

 脚部には三つの連なる弾を搭載した小型ポッド。合計で六発分の弾には隠れる形でアンカーが収められている。

 そして両腕には一門の小型火器が取り付き、全てが完成した見た目に戦艦は警戒を強めた。

 

Second Burst――Metal Future Knight!


 着装完了と同時に走る青い電光が周囲を吹き飛ばす。

 見上げるツインアイ。輝く青のバイザーには何の力も無い筈なのに、ただ見られるだけで冷や汗を隠せない。

 全身から発する膨大なエネルギーはシステムの緻密な操作によって一つに纏まり、内部でアシストが全開で開始される。

 既に一喜の体力は殆ど無い。システムが弾き出した稼働時間は二分であり、それを超過するのであれば着装は強制的に解除される。

 だがしかし、一喜からすれば二分もあれば十分。

 迸る力の奔流を感じるだけで戦艦の脅威を微塵も感じない。胸に溢れる全能感で笑みすら浮かび、彼の戦意をますます昂らせていった。


『これは……なんという』


 言葉にしようとして、戦艦は上手い言葉が出てこない。

 三枚のカードを束ねた力。それが自身と同じ格であればまだ太刀打ちする自信があったが、使われたカードには有り得ざる格上があった。

 JackとQueenが倒された情報は無い。そもそも、戦艦にはあの二人が負けるイメージがまるで想像出来なかった。

 であれば白黒の物を用いたと思うべきだが、装甲を通した肌が戦艦の考えを否と告げる。

 あれば偽物ではない。間違いなく本物だ。


 嘗て、別の世界同士が繋がる出来事があった。

 そこから現れた数々の品物が世界を変え、征服者を塗り替えることになった。

 現地で誕生したメタルヴァンガードも強力ではあったものの打倒し、それがあったからこそ今回も負ける可能性を大きくは計算していない。

 けれど、その前提が覆っていたとしたらどうだろう。

 別の時空から新しい人間が来ること自体は別に構わない。人間である限りは対処は容易だ。

 

 なら全ての怪物を倒した者であれば?

 その身に歴戦の鎧を纏い、全てのカードを手にしてこの世界に立ったのであれば。

 あらゆる弱点を熟知し、あらゆるカードの能力を理解し、そして自身を鼻で笑ってしまうような経験を持っていたのならば。

 結果は当然、全てにおいて結果は変わる。必然、怪物達が望まぬ形で。

 

『来い』


 青白い光を全身から発する戦士の短い言葉に背筋が震えた。

 種類の異なる恐怖が胸から湧き出る。同時に、強者に対する畏怖もまた自然と浮かんで刻み付けられた。

 自然、戦艦は腰を落して全ての武装を彼へと向ける。

 対する彼は二丁のレーザーを両手に持ち、ゆらりと戦艦に向けるだけ。

 どちらが有利でどちらが不利など一目瞭然。このまま全力の一斉射を放てば、即ち勝負は簡単に決まる。

 なのにどうして。戦艦には勝てるビジョンが浮かばない。

 それを払拭したくて、戦艦は恐怖を忘れる為に全ての引き金を押し込んだ。


 吹き出る火。轟音と共に吐き出される弾の数々。

 内部で追加の弾が出来れば即座に発射し、ただ一人に対して圧倒的な面制圧を開始する。

 更には超重量の錨が二本伸びては彼を潰さんと迫った。

 

『……』


 無数の弾道がバイザーに映り込む。

 予測線は狙い違わず彼を目指し、何もしなければ直撃を受けるだろう。

 迫る破滅を前に、彼の胸には怒りしかない。広がる極大の熱量は身を焼き、世界全てを焼き尽くさんと咆えたい衝動に駆られて止まらない。

 だがそれを抑え込み、眼光鋭く睨みながら一切の迷いなく二丁の引き金を同時に押し込んだ。

 ――その瞬間、視界が全て青に染まった。

 銃口から発されるにはあまりにも太いレーザーが弾を飲み込み、錨を溶かす。

 僅かな抵抗すらもまるで効かない。強力な攻撃を前に戦艦の攻撃は成す術も無く消され、後には無防備を晒す肉体しかなかった。

 二本のレーザーが戦艦の両腕を包む。肩から先の全てが命中した戦艦は、怪物になってから味わったことのない激痛に獣の如き悲鳴を発した。

 

 両腕を覆う装甲達は数秒と残らずに溶け落ち、肉は焼かれて炭と化す。

 黒の塊は肩から易々と千切り落ちた。神経の末端まで全てが焼かれた腕だったものを戦艦は見下ろし、自身の未来が今終わるのだと確信してしまった。

 逃げろと頭は叫ぶ。

 痛みすら凌駕して足は反射的に後退り、無意識的に腕の治療に全力を傾ける。

 治して万端にしなければ眼前の怪物とは戦えない。

 ――否、万端にしたところで戦いにすらなるまい。

 自身の思考に即座に否定が入る。次々と戦いになる理由を脳裏で過らせ、刹那の瞬間に全てを自分で切り捨てた。


『……英雄殿、まさか、貴殿は』


『…………』


 思わずと動く口。震えたそれに対し、一喜は無言で二丁の撃鉄部を落す。

 機械的な音声と共に銃口からは新しい光が灯り始め、時間の経過と共に光は増えて次第に溢れていく。

 溢れた光は球状の形で銃の先で留まり、その大きさを着実に増していった。

 あれが必殺なのは戦艦の目にも明らかだ。撃たせてはいけないし、逃げられるなら逃げた方が良い。

 身体の訴えは更に増え、胸にある心臓は恐怖で鼓動を早めている。

 腕の治りは過去最速だ。この分なら十秒も掛からない。


『はっ』


 そこまで考え、最後に戦艦は考えることを放棄した。

 代わりに信じたのはただ一つ。それは肉体に非ず、理性に非ず――己の理想であると。

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