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玩具が魅せる異世界特撮  作者: オーメル


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【第百九十三話】男達、飛ぶ

 ――拠点内の緊迫感は過去最高になっている。

 拠点そのものが直接的に襲われることがないと伝えられたお蔭で住民の不安は多少は緩和されたが、しかし近くの別の街で怪物が暴れている事実を伝えられてからは今度は外に出ることを極端に怖がった。

 仮にこのまま通常業務を行おうとすれば、一喜の声であっても待ったがかかるのは誰の目からも明らかだ。

 やっと出て来た住民は噂話程度の存在でしかなかったオールドベースの姿を遠巻きに眺め、オールドベース側はそもそも話しかけることをしない。

 無言の拒絶を態度で示す彼等を前に住民は不気味さを覚えるも、近くにメイド隊と自警団が睨みを利かせているお蔭で何とか均衡を保っていた。

 

『……今日はずっとコレだな』


 建物の内部。組織の中枢メンバーが使う部屋の中で、一喜はメタルヴァンガードとしての姿を解除しない状態で呟く。

 一枚だけの使用に限れば大した疲労は感じなくなっていたが、かといってずっとそのままというのも彼としては肩が凝る。

 近くに味方になるとは限らない勢力が居る以上、身の安全を守る為にも警戒は欠かせない。出撃時の手間を省くのも目的としているものの、解除して直ぐに使うことについては問題は無いのでこれは単なる面倒臭さ故だ。

 

「仕事が終わったら完全休日にしましょう。 流石に連続での戦闘の後では荷物の積み込みはさせたくありません」


「同意見だ。 そもそも、そんな雑事をさせる為に一喜を動かすなんてナンセンスだろ。 効率が悪くなっても私達で出来るなら私達でやる。 アンタらは監視をしてくれればそれで良い」


 円形の机の前に座る望愛と世良は意見を同じくして一喜を心配した。

 件の話し合いの結果、出撃するのは一喜一人となっている。オールドベース側は望愛を動かさない理由を問うたが、一喜は練度不足として答えて通した。

 これは理由としては間違っていない。望愛がまともに戦ったのは一回だけであり、その一回以降は纏いはしても武器は使用していない。

 今後激しくなるだろう戦闘に彼女が付いて来れるとは思えず、かといって鍛えるだけの時間を捻出出来ない。

 望愛にせよ一喜にせよ、拠点の未来を考える立場の人間だ。メタルヴァンガードで暴れるだけでは終われないからこそ、寧ろそちらの方に今は二人は力を入れている。


 とはいえ、これは元の世界組の表向きの理由だ。

 裏向きの理由は、やはり望愛の存在が全ての繋がりを持っていることだろう。

 彼女が負傷するだけで彼女の兄が黙っていない。例え望愛本人が望んで戦っているとしても、死の危険が蔓延る戦場に出向くと知れば何がなんでも妹を出撃させない為に一喜に圧を向けてくる。

 無視をするのは、現在の状況では不可能だ。跳ね除けるだけの経済を自前で準備出来ないのだから、依存中の身で望愛に無茶をさせられない。

 これは言葉にしていないとはいえ、元の世界組の人間の共通認識だ。

 メイド達や沢田も望愛が戦うことは望んではいないし、一喜としても元々戦力として数えていない。


 望愛としては戦う気ではあるが、自分が肉体的にも脆弱であることは解っている。それこそ何の教導も受けていない一喜にすら純粋な肉体勝負では負けると確信出来るのだから、無闇矢鱈と戦いに赴くのは論外だ。

 ならば自身は内側に目を向けるべきか――いいや、それだけは望愛は認めない。

 変えられない部分については諦めるしかないとはいえ、戦いについて望愛は関与出来るだけの余地がある。

 今は無理でも鍛えれば戦いに行く資格は取れるし、兄が邪魔するのであれば跳ね除けるだけの結果を用意する。

 やれない出来ないと周りに言われるのは彼女にとってやらない理由にならない。


 そもそも一喜が不可能に挑戦しているのだ。その不可能に対して出来ないを理由に皆の優しさに溺れることを望愛は許さない。

 

「拠点については此方にお任せを一切の問題も無く纏めさせます。 表立っては世良さんが動くことになりますが」


「ああ、そちらはこっちに任せろ。 十黄や立道も動かしてさっさと元に戻すさ」


『…………』


 露骨と言えば露骨だが。

 二人からの頼れというサインに一喜は沈黙を返す。どれだけやり方を考えてみたとしても、やはり一喜の目を離れる以上は望愛達に任せる他ない。

 不安が残りはするものの、この後に倒れるのは明確だ。対人間の分も含め、今日一日は戦闘に関する部分で終わりを迎えるだろう。

 そうして三人で暫くの間今後の話をしていると扉を叩く音がした。

 どうぞと口にすると、ノブを回して十黄が姿を見せる。彼は緊張した面持ちで三人を見回し、準備が終わったぞと告げた。


「オールドベース側は当初の話通り、小隊一つだけの出撃だ。 他の面子は此処に残ることになるが――」


『人質の代わり』


「後は現状の把握ですかね」


「ついでにちょっかいでもかける気じゃねぇか?」


「…………まぁ、大方その目的で解決まで居残ることになる」


 三人の意見に思わず十黄は暫く口を閉ざした。

 別に予想していなかった訳ではなかろうが、世良を含めてあまりにも短い情報の中から未来を想像し過ぎている。

 一喜や望愛であればまだ納得出来る部分があるものの、世良までそうなっているのは十黄には少し予想外だった。

 これが変化というものかと漠然とした思いを抱えつつ、外に出る三人と共に待ち合わせ場所となった拠点の傍に足を向ける。

 

 待ち合わせ場所には先程よりも圧倒的に少ない人員が居た。

 全員の目が鋭く尖り、一般隊員は武器の確認を最後までしている。比較的自然体なのは神崎と源次くらいなもので、その両名もまた気配は鋭利な刃物めいていた。

 

「よ、こっちの都合で別れることになって悪かったな」


『構わないさ。 どうせ残しているのは戦闘要員じゃないんだろう?』


「いやいや、それだけじゃないさ」


 二人は顔を合わせ、早速とばかりに短く探り合いを行う。

 遠回しな確認に源次は濁したような否定を入れるも、それだけではないと言った時点で隠す気は最初から無かった。

 人間同士であっても争いはある。特に此処が最も強力な拠点となるのであれば、事前に情報を収集しておきたいと思うのは道理。

 快不快を覚えるかは相手側次第であり、一喜は別段そこに否を告げる真似はしなかった。


『ま、お前達がしたいことなど解っている。 だがそれよりも先ずは、敵の排除だ』


「そうだな。 こうして嘴を向け合っても何も問題は解決しねぇ。 俺達は犬に行く。 その後に戦艦だ」


『予定通り砲撃魔を潰させてもらう。 潰し終わったら此方も戦艦に向かおう』


「んじゃまぁ……神崎」


「やっとか」


 源次の目が神崎に向けられ、そこで漸く少女は動く。

 与えられた剣の柄を引くことで展開し、カードを差し込む。再度戻した瞬間から剣から待機音が鳴り出して彼女は鍔の根本にあるトリガーを押した。

 瞬間、彼女の姿が先に戦ったモノへと変わる。

 四肢を覆う装甲も含めて全てが銀色に染まった姿は、望愛を含めた女性陣には鮮烈を与えた。

 目を見開く望愛達を他所に、近場の建物を剣で切り裂いて一つの土台を作った彼女は地面にそれを運び、隊員達は一斉に乗り出す。

 

 やり方としては一喜のと変わらないが、一枚の板のような形の時点で乗っている人間の安全性などまったく考慮されていない。

 全員が窪んだ場所などに手を付けてしゃがみ込み、神崎は挨拶の一つも無しに空へとブースターを吹かして消えていった。


「……あれが別世界のメタルヴァンガードですか」


『モドキだけどな。 さて、じゃあ行くぞ』


 一喜もカードを引き出す。呼び出すのは戦闘機。

 ベルトに装填して姿を変え、彼もまた別方向の空へと消えていく。残された彼女達は彼の姿が消えるまで見つめ、望愛だけが直ぐに拠点へと目を向けるのだった。

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