勧誘
「ウチに、来てくれないかな?」
そう言って窓の外から手を差し出した時のように、こちらに真っ赤の手を向ける。
「……いや、なんでだよ?」
恐らく、勧誘をしているのだろう……ががわからないことが多すぎる。
「ははっ、まぁそうだよね、1から話すよ
まず、現状城に残った人材だけで切り盛りできる重大な役職は『四天王が2人』残っていて、次の四天王も2人見つけた
魔王様は娘ちゃん、となると最後にもうひとつ役職が足りないんだよ……参謀だね
それら全てが揃っていないと『魔王城』として機能しないとして、ルール上、ダメなんだよ」
「さ、参謀?」
「うん、いわゆる最高指揮官だね」
「な、なんで俺が……?」
「いや、君になってもらう必要は無いよ、今残っている、私じゃない方の四天王、参謀には丁度良い奴なんだよね
だから、空いた四天王の枠に、どうかな?」
手を差し出した。
考えろ……俺は別に人間に大した思いやりも無い……ならば、向こう側に着くのもいいかもしれない。
だが、流石におかしい、この高待遇、そして、手札の晒し用……全て『俺を信用しているから』の一言で全て解決する。
「なんで、俺を?」
「それ」
彼女にしては珍しく簡素なセリフを吐いた。
『それ』と言って指さした先にあるのは……指輪か篭手か。
「どっちだ?」
「どっちもよ、その指輪《封魔の指輪》でしょう?」
「ふ、ふーまのゆびわ?」
完全にオウム返しになるが、わけがわからん。
「へ?知らないの?」
「う、うん」
「君はね、ざっくり言うと力を封印してるってところだね
今の君は本気を出しても、本当の本気には遠く及ばないんだ」
「……?なんで俺がそんなものを?」
「自主的につけた訳じゃないのなら……誰か、意図的に、君を止める為に君に付けたんだろう」
「だ、誰が?」
「そ、それは流石に知らないよ」
「ま、まぁ、そうだよな……」
流石に知らないか。
「……ま、まぁ、その指輪はひとえに『伸び代』とも取れるからね、そして、何よりもその篭手……普通は付けられないんだけどな……?」
「へ?そうなの?」
俺は大したことも無くつけることができている。
「うん、それ実は『防具に意思がある』んだ」
「意思……?」
「うん、彼か彼女か分からないけど、お気に召さなかったらつけることすら叶わないんだ」
「……な、なんで?」
「わからないけど、その子に認められるなら、是非ウチに欲しいと思ってね」
何秒だろうか?熟考に熟考を重ね、返事を返した。
「……よし、わかった、ついて行こう」
「!!本当っ!?」
本気で喜んでいる……彼女は生まれ育った自分の国が好きなんだな。
「あぁ、ただし条件が一つ」
「?なに?」
「戦闘には参加しない『名前だけ』だ」
そう言いながら手を差し出した。
「それでも十分だよ!!私と戦ってくれれば十分だし!それじゃ!行くよ!?」
「え!?ちょっと待って、ライ体の中にしまうから!」
精霊は主の体内で眠りにつかせたりもできるからね。
「っと……いいかな?」
「あぁ、でも手をとってどうするんだ?」
「それはね……こうするんだっ!」
「おわっ!?」
初めて女の子と手を繋いだ俺の記憶は……そのことよりも、羽を開きあっという間に上空に来たことによる『寒さ』と星空の『美しさ』そして、星に照らされた彼女が前々から思ってはいたが、やはり『綺麗だ』そう思った。
その気持ちでいっぱいだった。




