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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、君だ
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最後の挑戦

「……ラジアン、剣ありがとうな」


 ナイトラインを手渡す。

俺はあの後、力を使い果たしてバタリとそこに倒れた。

次に目が覚めた時、全身を襲う筋肉痛のような痛み、えも言い表せぬ、身体がピクリとも動かせないあの感じは、どちらかと言えば痺れに近かった。


 まさか、今になって身体の副作用を新しく発見するだなんて、思いもしなかった。


「……うん、この剣、役に立った?」


「あぁ、大助かりだ、アデサヤには悪いが、やっぱりその剣は俺に合う。

いつの間にか、ラジアンが持ってたんだけどな」


「この剣が私を主に認めたからね」


 ドヤ顔でそう言われると、少しムッとくる。


「……まるで魔剣だな」


「いや、立派な聖剣だよ、こんなに真っ直ぐな剣は生涯お目にかかれない」


「俺にはよくわからんな、剣好きだよな、ラジアン」


「うん!と言うよりも武器が好き、防具も好き、戦いの為に、お互いが準備してきた、戦いのための美しいその形に、私は惚れ惚れするの」


 俺も武器は好きだ、しかしラジアンほどではない。

俺の左手にずっと着いているこの篭手は、ラジアンが自分で素材を取ってきて、自分で作ってもらうように言ったものだ。


 この武具は本当に素晴らしい、硬くて美しい、ラジアンのセンスが伺える一品。

ずっと前から俺の命を支えてくれたこの篭手に感謝している。


「ユミルとも色々話したよーカルは最近すごい勢いで成長してるって、私もそう思うよ、ほんと、別人みたいにどんどん進化していく」


 そういうラジアンこそ、成長速度は常軌を逸している。


「ラジアンこそ……最近一気に強くなりすぎなんじゃないか?」


「っへへー、この新しいフブキの力、私頑張って使いこなすために、ずっと練習してたんだ、もちろん剣もずっと使ってるよ」


「へぇ、誰と特訓してたんだ?魔王様とか?」


「んや、魔王ちゃんは忙しいからね〜、ナルヴァーに頼んでるの、ナルヴァーも強くなったよほんとうに……お互いで高め合う、私達はこうやって向上心を忘れないようにして強くなっていこうね!」


 これ以上強くなったところでどうする気なのかは分からないけど、フロウやサクラなんて言う好敵手はまだまだいる、対戦相手には飽きることは無いだろう。


 そんな話をしながら、話題を明日のことにふる。


「……っでさ、明日ついに九十九層へ降りるわけだ」


「うんうん!夢まであと一歩!」


「そのとーり、世界で初めてあのダンジョンを踏破したものとして、俺の名前が刻まれる、俺の旅の始まり、俺の原点に名が刻まれる」


「……それでー?」


「九十九層に降りた後、九十九層にいるザクラを倒したあと、百層へ行くんだが、その時、ラジアンは百層の一つ前の階で待っててくれないか?」


「百層には、自分一人で行ったほうがいい気がする……とか?」


 きっと嫌だと言われるだろうと思っていたが、俺のあやふやな根拠をズバッとついてきた。


「……っえぇーっと……えぇ、まぁ……はぃ……」


「……いいよ、分かった、カルならそんな気がすると思ってたし、これは私の勘ね?でも、私、百層から帰ってくるまで、何日でもカルを待ってるからね?何日だって、何年だって待ってるから」


「……うん、そのためにも、すぐに終わらせないとな……」


「いや、最後の戦いでは、私の事なんて気にしないで、全力で、どんなに時間をかけてもいいから、必ず生きて帰ってきて、私の願いはそれだけだから、カルのお願い全部聞くから、私のお願いを聞いて」


「……あぁ、分かってる、死ぬつもりは無い、ラジアン達を置いて死ねるもんかよ」

 

 それはラジアンへの約束を守ると言う言葉と言うよりも、今一度自分には、帰りを待ってくれている人達が沢山いるんだと再度認識させてくれるものだった。


 帰ってきたら、まずはラジアンにただいまを言おう、そして、一緒に魔王城に帰って、ダンジョンの踏破を宣言するんだ、報告は明日でいい、その日は美味しいご飯を食べて、ラジアンと一緒にぐっすり眠るんだ。


 で、次の日に報告に行って、サクラに自慢して、ライやシガネ達に報告と、皆が生活している精霊の森を見に行って、色んな話をして……


 後は、何をしようか、そうだ、ジャンパーたちにも伝えよう。


 そんなことを考えながら、ラジアンとの話もそこそこに、一緒のベッドに入って、他愛のない話をし続ける。

お互い明日は大変な戦いになるだろうから、早めに寝ようと提案した俺が、百層を攻略し終えた後のことを考えると、胸が高鳴って眠れるはずがない。


 夢が叶う一歩手前、今まぶたを深く閉じて、眠って文字通り夢を見たとしても、それは見てるだけで、決して掴み取る事はできないのだろう。

つかみ取れないからこそ、夢なんだと以前ミランに言ったことがあったが、今の俺は手が届きそうな程に、前に来ている、ゴールのすぐ側まで来ているんだ。


 まずは、ザクラ、決して楽に勝てる相手ではないが、俺の固有スキルが決まれば、瞬殺だって可能な相手だ。


 俺はもう、英雄を瞬殺することが出来るレベルまでに強くなった。

もう、初めて一層に入った頃の俺とは違う。


 次の迷宮入りが、ラストダイブだ

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