猛攻
「……っおぉ!!」
すげぇ!目の前にある全部が精霊魔法だ!しかも沢山の種類の!
恐らくあの笛は精霊に力を貸す力があるのかもしれない。
だがらこそ、小精霊でも、こんな威力の魔法をパンパン打てるわけだ!
「たぁ」
気の抜けた声と、その声を追い越さんとする速度での拳。
「……っぐ……ラヴィィ!!」
殴り飛ばされた。
腹部にめり込んだ拳は、内蔵をかき混ぜられるような不快感を生んだ。
「……いくよ、リベンジ……いーい?」
「……あぁ、そういう事か」
剣を納める。
あたりの小精霊達が退いて、円を作る。
「……ぉ」
音楽の毛色が変わった。
打楽器が中心の、鼓舞するような音たち。
「……ったぁ!」
今度はさっきと違って、気合が入った一撃。
捌き、当時に撃つカウンター、それを上体を反らして躱される。
同時にしたから蹴りあげられるが、頭の位置をずらしながら前進し、反ったままの頭を地面に叩きつけようと拳を振るう。
しかし、逆にもっと体を反らせ、その少し生まれた時間で俺の腕を掴み、組み伏せる。
関節技、それは俺の体を変えて簡単に抜ける。
瞬間に、寝そべった体制から、蹴りが腹に突き刺さる。
幸い突き刺さると言っても、めり込む程度。
「っおぇ……!」
しかし確実に内蔵を蹴られた。
そうして怯んだ俺を見逃さず、寝そべったまま、突き刺した方とは逆の足で俺を横に蹴り飛ばした。
「……強いな……いや、強くなったな?」
「……もちろん、私は成長し続けるから」
もう一度構え直す。
ラヴィも……嬉しいことに、その構えは俺と同じだった。
「……どう来る?」
「リリーと同化して、私はカルの拳技を全部見たの。
だから、私が一番知ってる戦い方は……これだけ」
距離を詰めて、殴り掛かる。
猛攻、さっきまでの精霊たちの魔法の波よりも、よっぽど激しい猛攻。
「……っへ?」
防御していると、不意に視界から消えた。
このステップの踏み方は……俺と同じだ。
「……自分の技真似させるのは、どんな気持ち?」
そう言いながら、死角から正確に俺の顎を殴り抜く。
「……今から味あわせてやるよ」
「?」
宙に浮き上がった俺に追撃しようとして来る瞬間、『悪夢魔術』を使う。
「っぐ!?」
髪を伸ばし、鋭利な物にし、それを操って切り裂く。
「……どーだ?」
真っ白の、雪のように白い肌に、裂かれたところから溢れる苺みたいな赤い血。
「……ん、ヤな感じ」
手を当てて直ぐに治す。
精霊は、辺りの魔力を吸っている、そのまま身体にも変換できる。
ある意味俺と同じぐらい不死身だ。
「……さて、ラヴィ、お前との戦いも楽しかったけど……今の俺はあの頃とは違うんだ」
前にあった時よりも、俺の件は洗練されている。
ゴリ押しで勝てるほど、甘くはないわけだ。
それに、幸いなことに、知っている拳技は、俺のものだけ、知っているからというのもあるが、俺はまだまだ未熟なのだ。
ならば、ミランに追いつき始めた俺の剣に勝てる道理はない。
ナイトラインを抜く。
「……さて、リリー、今そこに行くよ」
走り出す、ラヴィに向けて走り出す。
ラヴィがする攻撃全てを躱し、滑るように刃を流し、足を切り飛ばす。
「っ!!」
「さっきの借りだ」
そのまま、置き去りにして無数にいる小精霊の中にいるリリーへ音を頼りに突き進む。
「悪いが!押し通る!!」
腕を巨大化させ、なぎ払い道をひらく。
「……すっごい猛攻だ!」
ナイトラインの一閃が、義手に受け止められた。
硬さもさることながら、腕で受けきるその技量にも驚かされる。
「たぁ!……っぉ?お?」
リリーの剣を受け流す。
雲を切ったような、手応えの無さに気持ち悪いものを感じているのだろう。
その動揺の隙に、剣を突き刺し、腹で拗じる!!
「……っがほっ……っ容赦ないね」
「そんなに強くないからな……っがはっ……!」
カウンターと言うよりも捨て身のリリーの攻撃が腹を破る。
「前にもこんなことしたね」
「あぁ……だが今は俺が有利だ《限界突破》!」
身体に触れて、崩壊させる!!
「させないよ!」
俺の腕を即座に切断する……剣は俺の腹に刺さっているのに!?
左腕の手刀、六弦が伸び、俺の腕を切断する。
「これで、やり直し!!」
腹に刺さった剣を抜くために、リリーは後ろへ飛ぶ。
そして、また叫ぶ。
「『精霊同化』!」
虹の光がリリーを包む。
押し出されるように、ルギュルが飛び出す。
「……やっぱり来るよな」
虹の瞳、未来が見えるその目を相手に、俺はどこまでやれる?
しかし、幸いなことに、俺はつい最近未来に攻撃を置いて行ったりする人と戦った。
「……あの経験は、どう活きるかな?」
少しワクワクしてきた。
裂けた腹を光魔法で治して、再度向き合う。
損傷した内臓以外は、俺の光魔法でも治せるから、すぐにでも再戦だ!




