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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、君だ
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「……くらえっ!!」


 グエルが手を向ける、その手を一瞬で鎖が止めて下に向ける、その隙を見逃さないのか!?

そして、片腕が繋がれたグエルの胸に鎖が突き刺さる。

いや、上体を逸らして避けた!?


「無属性のあれは喰らわないよ!!」


 あの掌から放つつもりだったであろうディンの魔法も止められた、黒魔法じゃすぐに打ち消される……


「〈四重苦(クアトロプレス)〉!」


「それぐら……っ!?」


「……黒魔()ですよ!!」


 金槌を持つ手が離れた、一瞬の隙、鎖も緩まった。


「っおぉあぁ!!」


 全力で走る、黒魔法が来ると思っていたのに、黒魔術、動揺はしているはず。

なのに上手く鎖を操ってそれは俺じゃなく、術者のグエルの方へ行く。


「アデサヤッ!!」


 そう叫び、掌から血を絞り出してもらう。

その血を、一瞬だけ吹き出して加速する。


「〈暗夜一閃(ナイトライン)〉っ!」


 そう叫び、アライトの銅を切り離す。

そして、そのままグエルの前まで移動して、鎖を全て打ち払う。


 あの時は、俺の横腹に一生の傷を残したが、今回は上手く護った!


「っまだ終わら……」


「まだ終わらないよな!!?」


 また加速し、今度は首も跳ねる!!


「………流石だね、油断しない」


「っな!?」


 自分にノーモーションでひっかけた鎖で逃げる。

しかし、その回避した先に、黒い壁があった。

それに逃げ場を阻まれて、アライトは逃げ損ねる。


「……『黒城壁』!」


 そのまま、切ったが、残った腕に阻まれた。


「……っ!!」


 まだ粘るか!?


「……僕の負けだなこれは……」


 更に追撃を仕掛けようとしたら、アライトはそう言って力なく笑った。


「……見せてもらったよ、君達の、成長を……グエル、君の仲間は元気かい?」


「……えぇ、一人、死んでしまったけれど、二人は今先生をしてます」


「そうかい……先生……」


 なるほどと笑った。


「……アライト『さん』、今世界は平和ですよ」


「……知ってるさ、君の大切な仲間は四天王でもあり、そしてネルカートに住むみんなでもある……戦争なんてなくてもいい、優劣なんてないんだ……皆違うから、いいんだ」


「……アライトさん、もう、お疲れ様」


「……あぁ、お疲れ様……ふふっ、先生か……きっといい未来が来るんだろうな……」


「……ですね」


「君たちはそんな未来で英雄と呼ばれる……いいなぁ、羨ましい」


「きっとあなたの名前も、語り継がれますよ」


 そういった、しかしそういう意味ではないらしい。


「……違うよ、君たちを、平和な世界で英雄と呼びたかったな……って思っただけさ」


 そうだった、この人は英雄である前に、一人の平和主義者、あまりにも強い平和主義者だった。

だからこそ、視点はいつも、英雄ではない、今なお英雄に憧れる一人の男なんだった。


「……カルカトスくん、気をつけてね」


「……へ?」


「ほかの九人は、僕ほど弱くはない、僕は英雄じゃなかったけど、ほかの九人は皆英雄と呼んで差し支えない」


「……あなたも英雄ですよ」


「僕のしたことは、誰にだってできることだよ、村のひとつも、最後には守れなかった……」


 そう自虐的に笑うと、グエルが


「誰にだってできるから、そう言ってやらない人の方が多いですよ!

誰にだってできる、、それを精一杯やったあなたは英雄にだってできないことをしたんです!誇ってください!私の、私たちの誇りなんですから!」


 熱い口調だった、グエルにしては、珍しく。

しかし、初めてあった、圧倒的に違う考え方、圧倒的な力、圧倒的なその英雄像に、考えが大きく変わったと言っていた。


 グエルの誇り、バンクパーティーの誇り。


「……誇りか……それは言われたことがなかったな……ふふ、嬉しいな……なら君の誇りになれたことを、誇りに思って僕は逝くよ」


「……さようなら、アライト ワクレフト」


「あぁ、さようならカルカトス、グエル、僕の誇りの英雄達よ」

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