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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも勇敢な者だと自分を鼓舞できる者だ
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世界樹【サクラ】

「……さて、向こうも決着が着いたようだ……」


 私は、私の背に倒れるカルカトスに目を向けながら、目の前に広がる神獣の骸と、世界樹を見上げる。

しかし……今気絶しているカルカトスは、笑っている。


 私の背中の方が、この木よりもデカく見えたんだろう、安心している。

そして、私は英雄だ、だからニコッと笑って、カルカトスに言う


「大丈夫だ!安心しろ!私がコイツを相手する!」


 カルラ・ド・ボルテが逝けば固有スキルで作られたこいつも消えると考察していたが……


「まさかこれは……実物かァ?」


 初代勇者、ココア。

奴は……いや、彼はこの世界樹の輝石に身を包み、この世を去ったと聞く。


「……クレイア」


「はーい?」


「……少し、私の身体の中に隠れてろ……全部焼く!」


 左手の甲から生える大剣を振るい、獅子を吹き飛ばし、宣言する。

クレイアは何も言わずに、私の中に帰っていく。

クレイアがいた方を向くと、飛行生物が全部落とされている。


「……さぁ!行こうか!」


 人の姿のままで、世界樹へ走り込む。

神速を使って、上がる体温に……不快感は感じない、今感じるのは、ワクワクやドキドキ……高揚感!!


「『上がっていくぜぇ!!?』」


 今は亡き炎の勇者のように、己の魂を薪として、赤く強く燃え上がる。

大地に赤い線が走る、私が通った道だ、足跡だ。


 一陣の強い風、瞬間飛んでくる世界樹の葉。

前方に突き刺さるそれは地面に深々と突き刺さり、見えなくなった。

左手に、右手を添え、前へ前へと進んでいく。

飛んでくるやつは、身のこなしで避ける……無理なら!

噛み付いて、それを止める。


 口を膨らませ、傍から見れば怒っているように見えるであろう私。

外へ吐き出すブレスを、全部体の中で燃やし!上げ続ける!!

心臓の動機が止まらない、足が前へと勝手に進む!


 少しでも口を開けば、この圧縮し続けた炎が解き放たれることだろう!?


 世界樹の元へ、ついに!剣が届く!

ブンと振る、手応えはあった。

切り裂かれた世界樹は、地面に落ちる……それすら待たず、口から火を吐く。

ため続けた、私の……怒り?いや、喜び?……感情と共に吐き出せ!


 一瞬の閃光、そして、目の前には何も残らない。

切り株が残っている……それが動く。


 意思だけが、未だに残っていた。

奴の意思は、ただ食事をしようとしてるだけだった。

カルカトスや私を、私たちでさえも、餌としか思わなかったらしい。

カルカトスは、見事に食い尽くされて今そこで倒れているが……あいつのもはや無限とも言えるエネルギーが、尽きることなどないのだろう。


 そのエネルギーを喰らうのは……この白い木……いや、本来は違う色の木だろう。

気の周りに付着する、小さな小さな菌の集合体、白い白い、その菌が原因だ。

私の身体の周りにも漂い、エネルギーを吸おうとしてくる……が、全部焼けている。


 切り株の中心が盛り上がった。

そこから、一人の女性がでてきた。


「……エルフ……か?」


 ピンと尖った、長い横向きの耳、美しい顔立ちに、陽光のような金の髪とエメラルドグリーンの瞳。

もしも、ここで出会っていなかったら、是非ともご飯に誘いたいところだが……その顔は、初めて、私たちに敵意を向けてきてくれた。


 ついに私を敵だと思ってくれたのだろう。

きっと私一人にはなかなかに荷の重い敵だろう。


 しかし、カルカトスはそこで寝ている、そして、そんなアイツに大丈夫だと、安心しろと言ってしまった手前、英雄ってのは引けないものだ、違うか?


「……名前はあるか?」


 左腕の剣を下げ、問いかける。


「我の名か?……ミーヤ……いや違うな、我はイグ=ドラだ」


「そーかイグドラ、あとはお前を倒すだけだな」


「きちんと名前の間を止めろ……不遜だぞ」


 嫌に高圧的な奴だ……いや


「私が言えた口じゃないな」


 苦笑い……いつか、笑い話にしよう

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