虚構の黒魔女【グエル】
「……っですね」
「はいはい、よぉはいつも通りってことだな」
「えぇ、要はそういうことです」
仕事部屋に着くまでの間、別に気の利いた世間話は得意じゃない、簡単なことを長々と続けて話すのは、どこか非効率的に見えるかもしれないが、私のその話を鬱陶しがってサクラか早く歩くのだ、非常に効率的だ。
「では、お仕事頑張ってくださいね」
「グエルは今日は何をするんだ?」
「私はこの後、下のギルド職員の方々と軽いミーティング、その後新人冒険者の試験の合否判断の手伝い、その後はバンクさんたちのところに行って成績の話ですね」
「そうか、もう春も終わるしな、成績とか色々決める時期かぁ」
「ですね、優秀な人材がいたら、ギルドで引き抜くのもありです」
「だな、今欲しいのは……男だな、バンクたちとファクト、後はアーガンしかいない、いい感じの新人がいたら声掛け頼む」
「……私の目は厳しいですよぉ?」
「知ってる知ってる、だからお前のお眼鏡に叶うやつを頼むよ」
「……了解しました、では」
扉を閉めて、一階におりていく。
「おはようございます皆さん、ミーティングを始めます……まずは受付の方から、お願いします」
売上や収入、商品の在庫確認などのチェックを次々と着けていく。
「……はい、ありがとうございます、ではこれをまたギルドマスターに提出します。
皆さん本日も頑張ってください」
昼から仕事をするギルド役員にそう言って私は後にする。
次はアーガンとアモラスの2人のところに行って、試験問題や、実技試験等を見て、その2人の呟きを聞いている。
「……あら、あの子いいわ、筆記も良かったし……合格かな?」
「っおぉ!いいね、今のいい感じだ、もう1回だ」
2人ともいい顔をしている。
私の目から見ても、この2人の良いと言った人物に間違いはなかった。
「こんにちは、どうですか?」
「あ、こんにちは、みんな凄いやる気ですよ、ポスターとかが多分いい結果を残したんでしょう。
アンケートを見て見ても、CMとポスター、両方に惹かれてやってきたって人も多い、何よりも、種族が大いに増えた。
獣人翼人エルフに魔族魔人も増えています、私もなかなか悩まされますよ」
「こっちも、みんないい腕持ってますよ。
中には光るものが見える子もいるし、磨けば玉になる子もちらほら……あ、ありがとう」
少し気温が上がってきて、汗を少しかいているアーガンにアモラスが水を差し入れている。
2人の左手薬指には誓った愛が形として巻きついている。
「この後は……学校ですか」
授業も終わり、冒険者育成学校は放課後になってもまだまだ人が沢山残っているのだ。
グラウンドを見れば身体を鍛えている人、スポーツを楽しむ人、他にもあれは……うん、頑張って剣を習っている人もいる。
「こんにちは、バンクさん、クロルさんは?」
「あいつは部活行ってるよ、俺は成績つけるのが苦手でなぁ……誰かを上から評価するってのはどうにも向いてないぜ」
毎回それ言ってますよね……
「どうですか?今年は」
「うん、結構いい感じのやつが多い。
多分同じ歳で俺があれだけできたか?って言われても多分無理だな」
へぇ、そんな人が多いんだ……
「なるほど?皆さん志望はどこで?」
「皆第一志望はウチのギルドだ、こっちからも幾人か推薦するけど、先に名前とか教えておこうか?」
「あ、頼みます、教えてください」
そう言って、教えてくれた名前をいくつかメモに取り、覚えておく。
「ってところだな、みんな優秀だ、よくしてやってくれ」
「分かりました……ちなみに、一番のおすすめは誰ですか?」
「あぁ、それなら一択だ『グレイズ』だな、あいつは別格だ」
「へぇ、即答……そんなにですか?」
「あぁ、あいつは凄いやつだ、なんせ16でクロルに勝ってるからな」
「っえ!?く、クロルさんって、今プラチナじゃ!?」
「あぁ、そのクロルがだ、俺も戦ってねーけど、勝て……ねぇわなぁ、ありゃ」
「魔法が?」
「いや、どっちもだ!あいつはいい冒険者になる。
常に落ち着いていて、しかも自分の事を過大評価しない、凄くいい、冷静なのは、生き残る上で一番大切だ、その上謙遜もしやがる」
「へぇ、男性ですか?」
「んや、女の子だ……クロルは悔しがってたぞ〜?」
クツクツと笑いながらそういうが……女の子かぁ、男の子が欲しいって言われてたけどなぁ
「……ちなみにその子の成績は?」
「秒殺できたよ、満点だ、文句はない。
推薦も当然推しに推している、個人的にはあいつは大きくなるぞ〜?」
この人が言うと、少しセクハラじみて聞こえるが……先生になって、髭を整えてから、別にそんな風には聞こえてこないのだった。




