見えてきた
「見えないものを、見せてやるさ」
そう言いながら、俺もまた、見ることから始める。
擬神の瞳、これならきっと除き込める。
しかし見えたのは圧倒的な数値の片鱗と、暴力的な数のスキル。
そして、くっきりと見えたものが、あった。
状態 精霊同化 高嶺之花世 『無関心』
「……っな……ぁ!?」
衝撃的な事だった、まさか、あるだなんて。
俺にもある、あの『無関心』とかいう訳の分からない状態……異常なのかな?
「……無関心、なんでリリーも!?」
「ん!?無関心?」
何の話だと言った感じのラジアン。
「……あぁ、カルカトス、いい目を持っているね、流石は擬似的な、神の瞳。
その通り、確かにその通りだよ、私は今関心をもてていないんだ。
君と同じってことさ」
確かに俺も無関心が着いている……が、別に関心がない訳じゃない。
俺は今全力で今を頑張っている……つもりだけど、無関心め、このっ!
「……なら、関心を示させてやるよ」
どうやって?って顔のラジアン……
「まずは、精霊魔術だな
……あ、精霊居ない……ええっと……あ!いた!」
ラジアンは、どこ!?って顔をしている。
「『血ノ理』『一万年前ノ君ヘ』『代々受ケ継ガレシ』『魔王ノ血脈』『俺モマタ成リ得ルカ?』〈血ノ魔王装〉」
俺が借りた精霊は、アデサヤ。
アデサヤはずっと見てきたはずだ、一万年前のあの聖戦も、五千年前の世界統一も、そして今この時も。
身体の穴から血が吹き出す。
そしてそれらが、俺を包み込む?
「……あぁ、これが、アグナムートの力……なのか?」
その血液を、自分の血を果たしてどう扱おうか?
「まぁいっか……っは!」
パッと払う。
血飛沫が飛び散る、俺のだけどね。
それらが爆発的な速度で撃ち抜こうとする。
そのうちの一発が当たってくれた。
そこから、更に続けて!俺の1晩考えた攻撃方法!
「『呪術』!〈鈍重化〉!」
ま、まぁ、流星眼?で何も無かったんだ、今更こんな呪術は聞かないだろうな。
「……まだ!いくぞ!ラジアン!」
さっきと同じように攻めていく。
弾き飛ばされそうな膂力の剣は、きっと未練が固まったから、更に強くなったのだろう。
恐ろしいことだ、一体どうすれば勝てるのだろう?今、リリーに見えていないのは一体何だ?
「……別に物理的に見えないものじゃないよ?」
死角から攻撃する俺の血の刃も、いとも容易く避けて見せた。
そんなに単純なものじゃないよなぁ!
「なら!こういうのは!?カル!」
そう言って、俺の名を叫んだ瞬間、ラジアンが、フッと消えた。
そして、その瞬間に、リリーが吹き飛んだ。
「……っ……おぉ?なにしたっ!?」
初めてだろう、あの状態になってから有効打1つ与えられていなかったのだから。
「……リリー!今のは『見えなかった』でしょ!?私の透明化!」
「……と、透明化!?」
いつの間にそんなヘンなスキルを身につけた!?魔眼か!?
「……いや、知ってたよそれ、だから受けられたし、それにそれは透明化じゃなくて、迷彩柄になるだけでしょ?夜を纏う、アズナスの力」
「……ッゲ、バレてる……〈夜纏〉いいと思ったんだけどなぁ」
そんなのもできるのか……
「……っなら!『火竜見参』『上がれ赤熱』「『『我が身を焦がす炎よ』』!?」でしょ?」
詠唱を途中で合わせられた?
つ、つまりこれは知っているってことか……
「……で、次は何をしてくるのかな?2人とも」
「ん〜、そーだな……ラジアン君、なにか案はあるかい?」
「むむっ、難しいことです、カル君……」
ふざけた様子だが、これでも精一杯時間を稼いでいるんだ。
今のところ、一つだけ、思いついているものがあるんだ……がだ。
「……カルカトス……何かを、決めたのかい?」
虹の目に、見透かされた。
しかし、何か……だと?やはり、知らないのか?
「……リリー!俺の!『悪夢魔術』は!俺だけの固有のもの!しかしこれはキメラとして与えられた俺の力!『後付け』だ!だがな!『限界突破』は!違う!俺の!正真正銘俺だけのもの!見せてやる!知らないものを!俺さえも知らない俺を!」
そう言うと、本当に分からないと言った顔をした。
その顔を見て、俺は決心した。
「……ラジアン、俺が俺を、見失うことになってもラジアンが俺を見つけてくれ……俺は今から、超えてはいけない限界を超える」
「……な、何それ?」
「『俺は摘み取るもの』『終末論を綴るもの』『悪夢となり飲み込む』」
「知ってるよ!そこまでは私も知っている!そこから!?何をするの!?」
リリーの目が輝いてきた。
「ここから!……!『抑制された力!』『限界はここではない!』『俺はまだ前へ進む!』『誰よりも前に行く』『誰も俺を見つけられなくても』《悪夢》」
使うのは、生誕祭以来。
あの時とは、俺は比べ物にならないほどに強くなったんだ。
身体の内側から、黒い何かが這い出てくる。
「ラジアン、あとは、任せた、必ず勝つから、俺を頼む」
そう言うと、ラジアンは不安そうな顔をしていた。
「その『眼』!縦長の瞳孔!白い『髪』!カル!あの時の!?」
「っぅぅ………なになになになになになに!?なにそれ!?知らない!分からない!あぁ!知らないよ!知らないんだ!教えてよ!!!」
その言葉に答えてやるよ。
俺は、これを操れて初めて、俺はこの戦いに勝てるんだろう。
じゃないと、多分勝てないだろう。
悪夢さえも、乗り越えなくては見えてきた……暗い悪夢さえも。




