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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とはなしをして、お花を咲かせたいです!
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相談事【リリー】

「……リリー」


 さっきから扉の先がやかましいと思ったら、ラジアンの心音だったわけか……顔真っ赤だ……まさか!?


「……お、どうしたの?」


 ケーキを食べ終わり、今はクッキーを横に置いて絵を描く。


「……あのさ、好きな人に、好きって言っちゃった……!」


「ついに言ったんだ!?」


 さっき魔王さんたちと食べていた時に、ラジアンの話も出た。


『まぁ、お互いきっと両思いでしょうからねぇ……2人の恋が成就することを願ってますよ私は……あら美味しい』


「ですね、僕も、カルカトス様には幸せになって欲しいですし、もちろん、ラジアン様にも……こっちもなかなか」


 そんな話をしているふたりの顔は、幸せそうに笑っている。



「っで!?どうだった!?」


 私が恋バナを進めようとすると、顔を両手で覆い隠して


「……逃げちゃった……」


「っえ?」


 に、逃げ?……へ?


「……言ったら恥ずかしすぎて……逃げてきちゃった……!!」


「え、えぇ〜?」


 いじらしい乙女だね、君は本当に。


「……なら、晩御飯の時に聞こうよ、返事も、これからも」


「……わ、分かった……その時まで待つよ……!」


 魔王さんに相談するようにと言ったあと、気配を消して、リビングまで歩いていく。

ちらりと中を覗き込む……と、椅子を後ろに倒してプラプラしてるカルカトスが、天井を眺めていた。

真剣そうな顔で、しかし心はここにないと言った感じで。


「……一人で解決するタイプの人なのかな?」


 頭の中できっと今自問自答を繰り返しているんだろう……いや、それともどうやって好きって伝えようとしてるかを考えてるのかな?


 しかし、

そうして思いふけるその姿は、私の絵にしたいぐらい、絵になっていた。

写真のように、私はその様子を記録する。

つぶさに、メモに取りながら、角度や目線、顔の赤さを的確に。

ノートの白とペンの黒だけで軽く描く。


 その後ラジアンの部屋に行くと、足をバタバタさせて、仕事に丸で手が付かない様子。

顔を真っ赤にして、同じぐらい赤いメガネを開いたり閉じたりしている。


 そんな姿も、絵になった。


 2人の絵を、描きたいと思った。


 それが私の新しい未練。

美味しいスイーツと、2人の恋の成就はみとどけた。

いや、見届けることになるだろう。

まだある、花を咲かせるのが一番、次に2人の絵を描こう。


「……かわいいなぁ」


「そうですね、リリー」


 横から、魔王さんも、覗き込んでいた。


「うん、凄く可愛い、ああいう純朴な女の子の恋は……やっぱりどんな芸術よりも複雑で、難解で、しかしそれでいて……だからこそ、何よりも美しいんだろうね」


 そう言う私の言葉にウンウンと深く頷く様子の魔王さん。


「彼女の仕事は別に今日やってもらわなくてもいいんです。

一番は今日のこの日、大一番ですから」


 そう言って笑う、私よりも大人っぽく見える。


「……魔王さんは恋しないの?」


 私の疑問に


「してますよ、この国に……民に……ヘルヴェティアの皆に恋してます、ぞっこんですよ」


「……15歳だったっけ?……若いのに……幼いのに、芯がしっかりしてるね。

でも、人に恋する日がいつか来るかもなんだし……その時の慌てふためく魔王さんも見てみたいな」


「……ですね、私もいつか、男の人に顔を真っ赤にしてお話したり、指先を握って願いを囁いたりするのかもしれませんね」


 その顔は、どこか羨ましそうで、そしてとっても嬉しそうだった。


「……好きな人、いるんだね、魔王さんにも」


「っえ!?な、なんで!?」


 そんな反応、いると言っているようなもの。

それに、あんな顔をしているこの顔が恋してないわけが無い。


「……恋する乙女の顔してたよ」


「そ、そんな……で、でも私は魔王ですから……あの人に迷惑です」


「どうかなぁ?誰かは私もよく知らないけど、その人が嫌いってことは無いでしょ、魔王さん嫌いな人、いないと思うし」


「……ど、うでしょう……わ、私はいいんです!いつか上手くしてみせます……まずはラジアン!」


 顔真っ赤だ……好きな人、誰だろ?


 皆平和になって、心に余裕が出てきたのかな?幸せそうに皆笑ってる。

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