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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とはなしをして、お花を咲かせたいです!
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夜帝剣の声【ラジアン】

 剣を持ち、目を閉じる。

耳をすまして、声をかける。


「へーい!お話しよー!」


 なんか嫌がられている気がしたが、とりあえずねじ込んでいく。

暗い暗い、黒い闇の中、テクテクと歩く、私は迷わない。


 そうして歩いていくと、その先に人影が見えた。


「……っくそ、なんで来た!?」


「そー怒らないでよ、アズナス、あなたとお話がしたいのよ」


「……何が話だ、俺を押さえつけておいてよ!」


「うるさいなぁー!私はさ、精霊同化?って言うのがしたいのよ、そうしたら強くなるって聞いてさ」


 そういうと、前に一歩歩いてきて、目を丸くして口を開く。

真っ黒の髪に赤い瞳、そして黒い服に身を包んでいる。

厳かなその服装は夜の帝王の名にふさわしい。


「おい!精霊同化、それが精霊にとって、どんなことなのかわかっているのか!?」


「失礼な、私はちゃんと聞いたよ、精霊同化ってどんなのって、精霊と合体して、力を貸して貰える……ただ、お互いの命を託すんだよね」


 そういうと、ため息をついたあと、手をクンッと上げて、作り出した椅子に座る。


「そうだ、それが精霊同化、お前たちで言うところの……結婚?いや、それよりもずっと重いものだ、夜帝の俺が、そう簡単に下ると思うか?」


「何が夜帝なの?あなたただの精霊でしょ?」


「………」


 そういうと、黙り込んでしまった、なにかまずいことを言ったかな?


「……っはは!確かに、俺はただの精霊に過ぎない……ただ!ラジアン、お前に問う、夜は怖いか?闇は?一寸先も見えない夜の先、何が拡がっていると思う?」


「……さぁ?想像の及ぶ範囲、なんでもある可能性があるんじゃないの?」


「その通りだ、そして俺の存在は、夜そのもののようなものだ、俺の力は夜が深ければ深いほど、力が更に増していく。

その瞬間であれば、アデサヤを優に上回れる。

しかしあいつは常に強いんだ、だから俺はあいつには勝てない」


 すごく情けない話の締めくくり方だな。

どこかカルに似てる気がする……仲良くなれるのかな?カルなら。


「それで?結局私といつに精霊同化してくれるの?」


「……代々、俺を握れたやつにはこういう約束をするようにしてるんだ。

真夜中!最も夜が深いその時に、それでも勝てない奴がいたら、俺が力を貸してやる」


「そんな敵、いるの?」


「……わからん……がしかし、夜は長い」


 その言葉の意図は分からないが、それでも自信があるらしい。


「……アズナス、あんた私の恋手伝ってよ」


「……は?」


 突拍子も無い言葉に目を丸くしている。


「……だからさ、私今恋してるの、好きな人に振り向いてもらいたくて、ご飯作って胃袋掴んだり、色々してるんだけどさ……どう?」


「え、なんだそれ……ま、まぁ、いいと思うぞ。

俺も帝王なんだが、恋ぐらいしたことはあるさ、とても美しいが……まぁ、そんな話はいいか、ラジアン、そのまま言葉を伝えてみたらどうだ?

向こうはお前が恋しているのをわかってないかもしれないぞ?

ならば一度口に出して、意識してもらうというのも大切だと思う。

と言っても俺の方はその言葉を伝えるのが気恥ずかしくて無理だったんだがな」


「あ、わかるそれ、すっごく言いずらいよね~」


 そんな、以外にもた愛のない話が出来て、そのまま長い夜を、楽しく話して過ごした。


 こうやって話してみれば、意外と悪くない。

私を急かしたのは、弱いままだといけないからだと。


 ゆっくりと仲良くなれそうだ、とりあえずオススメのデートスポットとか聞いておこう。


「いや、一万年だったのならどこがいいとかわからんぞ?

あ、でも、その昔、世界樹の下で運命の出会いを遂げてたな……まぁ!男同士だったけどな!」


「へぇ、変なの」


「だろ?あいつは本当に強かった……お前よりもな」


 私の闘志の火に、油を注がれた。

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