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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とはなしをして、お花を咲かせたいです!
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インセント

「……はい、ギルドカードの確認は出来ました……どうぞお通りください」


 番兵の人に頭を軽く下げて、インセントに入る。

ここは共存の国……十層の守護者だったあの人が作った街が、国になった。


 ここが共存の国って特別扱いされ無くなる日が来るといいな。


「……さて、どこから探そう?」


「……隠してるわけじゃないだろうけどさ、木を隠すなら森の中じゃん?」


 図書館に俺たちは歩いた。

街のパンフレット片手に、観光気分で図書館まで歩いていく。


 蔵書量は、お世辞にもネルカートほどでは無いが、まぁ流石に図書館、個人の書庫よりは遥かに多い蔵書量。


「……ホシノキセキとホシノカケラ?『ホ』ね、ホ」


「だね、ホだよ、ホ」


 ホ……ホ……と言いながら指を滑らしていく。

しかしそれでも見つからなかった。

星までは見つけた、星のまでも行けた。


 星の奇跡っていう天文学の本ならあったし、星の欠片っていう、世界中の不思議な石を集めた本もあった。


「……っだめだ!見つからない!」


 四周ほどしたんだ、そういうリリーに俺も頷いた。


「色々聞いてみよう」


 そういって動く。

まずは図書館の司書さんとかに話を聞いてみる。


 しかしもっと本に詳しい人に話をしてみてくれと、俺のためなら時間を取ってくれるだろうと言われ、その人の元に行った。


 元、と言っても、別に遠くじゃない、この図書館を運営している個人だ。


「……ホシノキセキとホシノカケラかぁ……なるほど、随分と昔の本の話を持ってきましたね」


 タハハと笑いながら頭の後ろをかくこの男の人は、ロマンスグレーな眼鏡をかけたおじいさんだ。


 そんな彼の言葉は、今までの人とは大きく変わったものだった。


「……その反応、何か知ってるんですか?」


「えぇもちろん、その本もこちらにありますとも……ただですね……その、本の保存状況が良くなかったもので、ところどころ読みなくて、復元が出来ませんでした。

その為、お話は完全なものでは無いでしょう。

それに、完全なお話は全て口で語られ続けてきたものです。

人の記憶は曖昧ですが、記録は実に雄弁に語ります」


 そう言いながら、本棚の奥から取り出された本は、小高い丘の上に青白いつぼみと、満天の星空。


「……これで合ってる?リリー」


「分からない……けど、タイトルは、そのままだよ」


 タイトルを指さしながら、そういう。

俺も、やっと見つけれた、タイトル通りの本に出逢えた。


「この本、借りてもいいですか?」


「構いません、それはレプリカですから、どうぞ差し上げますよ

そうだ、原本もお貸しします、絵を見てください、あなたは精霊と話ができると聞きました……何かヒントになるかも」


 実にありがたい。

礼を言い、その場を去り、少し本を読むことにした。


「……あ、これ、リリーが読んでくれよ」


「ん、任せてよ〜……んんっ!」


 喉を鳴らして、本を開く。


「……昔昔、とある所に蕾がひとつありました。

夜空に散りばめられたその星を見るのが好きな蕾は、小高い丘の上で、夜空に思いふけりました。

彼女は蕾です、しかし、空に咲きほこる星々は、今や一輪の花として、輝いています。

しかし、彼女は咲けないでいました。

赤い花が彼女を元気ずけるために、豪炎を見事に操ります。

その炎は、夜空の星々が霞むような豪炎です。

青い花は水を空に浮かせ、幻想的な世界を見せてくれました。

薄緑のあの花は、風で葉を宙で踊らせました。

しかし、彼女はそれらに目もくれず、蕾はピクリとも動きませんでした」


 そうとまで話し終えたあと、俺の方を見る。


「この子女の子なんだね、それに、炎も水も風も、まるで興味はないみたいだね」


 そう言って考察を始める。

それに俺も乗ることにした。


「だな、なんなら怖がっていたし、この絵本をそのまま鵜呑みにするのは良くないだろうけど、でも、それでも、大凡の指針にはなるだろう」


 挿絵に書かれているのは……間違いなく精霊だ。

原本の挿絵の方も、色あせていたりしているが、可愛らしい精霊が。


「だね、それにこの本の著者は、精霊が見えてたんだね」


「かもな、それか、精霊が書いたかもよ」


「わお、素敵だね、その考え方」


 そうした後、また読み始める。


「そうしている彼女に、星たちは問いました。

『あなたは一体、何を求めているの?』と。

か細い声で蕾は言いました

『美しい舞がみたい』」


 初めて、蕾が声を出した


「その言葉に、星たちは希望を見いだしました。

1人、舞が踊れる者がいました。

その黒い星は『1人では嫌だ』と言い、断りました。 」


 黒く、髪の短い精霊が手を前に出し、断っている。

原本の方は少し白っぽくもあるが、色が禿げたのかもしれないな。


「そんなある日、星々の間を、流星が横切りました。

その流星は、金の星で、ゆらりゆらりと楽しそうに舞っていました

蕾は願いました『あの人の舞が見てみたい』と、初めて自分からそう言いました」


 そのページは傷がついていて、髪の毛が短くなっている。

そして、その髪よりも横のところの胴体もボロボロだ。


 本当は長かったのかな?それとも、綺麗に髪は残ったのか?


 そして、問題は次のページ、さっきの挿絵の傷が裏にまで付いていて、文字がほとんど読めなかっとようだ。


 2人で舞を踊ったらしい、そして、その舞が、挿絵に着いた横一文字の傷がまるで、その挿絵に反ってつけられたのか?

火花がそこから散るような絵だった。


 そして、その次のページを開いた時、鳥肌が立った。

恐らく今までの人生で一番の鳥肌の立ちようだった。


 確かに、恐ろしくもある、恐怖で鳥肌がたったかもしれない。

しかし、それ以上にまず初めの感想は美し『過ぎる』。


 そのページには、花びらの中心に立つ一人の少女の絵。

恐らくこの子がホシノカケラ?


 その子は、ページを突き抜けて、俺たちを見ているような気さえした。

虹色の、その瞳が、このボロボロの絵本の原本の中で、唯一、神さえも傷つけることは許されないのかもしれない、異常なまでに美しく保たれていた。


 俺も、読んでいたリリーも、フリーズした。

今の俺たちは花を咲かせたかった、本当に。

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