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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とはなしをして、お花を咲かせたいです!
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お花畑

「……っし」


 あたりの精霊を倒しきった。

別段強くないが、多分目に見えないというのが一番の難点なんだろうね、だからここに置かれたのかも?


 次は八十層を目指している訳だし、噂てば百層までらしいからもうほとんど潜ったわけかぁ


「……長かったような、短かったような?」


 そんなことを考えながら、敵を斬る。

敵自体は、魔法の攻撃が怖いぐらいで、距離を詰めてしまえば、余裕で倒せる。


 はっきりいって拍子抜けだ、俺に魔法と剣聖の剣術が加わっている、全くもって後れを取るような強さじゃない。


 だから俺はトントン拍子でずくに八十層に着いた。

俺はかなり強くなっているらしい、今まででいちばん簡単についた気がするぞ?


 階段を降りたらいつもなら直ぐに守護者のいるフロアなんだが……今回は少し違う?


 高い屋敷にある柵のような両開きの扉を押して開く。

キィと音を立てて扉が開くと、そこは既に見えてはいたが、一面のお花畑。


 花を踏まないように、道に反って歩いていくとその小高い丘の上に、椅子がふたつと丸い木製の机が置いてあった。

何となく察して、俺は片方の椅子に座った。


 その瞬間、俺の目の前に、一人の女性が現れた。

いや、この人こそ、やはりまた、守護者なのだろう。


 白い短い髪に黄色と言うよりも蜂蜜や琥珀に近い奥深い色合いの瞳の女性。

両腕を枕のように下にしき、そこに顎を置いて俺の顔を下から見上げる。


「やぁ、英雄、君ならこの難題、どう解く?」


 そういいながら、顔を上げて、俺に一枚の紙を渡して来た。


「……?これ?」


 とりあえず受け取ってみてみると……問題用紙かな?

そこには『英雄とは〜〜に続く言葉を考えてくるとこ』

そして、解答欄には『英雄とはなしをして、お花を咲かせたいです!』と書かれていた。


「………どう?これ間違いなんだって、あの人私の答えを突っぱねてきたんだよ!?」


「あの人?誰?」


「っえ!?あ、あの人って言うのはね……言っちゃダメな人!」


 嘘をつくのは苦手らしい、しかしそんな人もいるのかぁ。


「で、どう?これじゃダメって言われてさ、ここまで来た英雄なら答え知ってるかなって」


「……そもそもこれさ『英雄とは、なんたらである』みたいな感じでさ、英雄の何たるかを問うてきてるんじゃないか?

これじゃどっちかと言えば、やりたいことじゃないの?」


 そういうと、目を丸くしたあと


「えー!?そんな訳ないよ!だってそう書けって書いてないしさ!何よりも、私をここに連れてきたのは、私のしたいことをさせてくれるからって言ってたよ!?」


「……っああ〜……未練の話?」


「ん!そんな所!んでさ、どう?君ならどう答える?」


「えぇ……ま、また今度でいい?」


「ん?あぁ、確かにそんなにすぐには出てこないか……うん、いいよ〜!んじゃ、それが私の死ぬまでの未練その2ってところだね!」


 そういった時、少し力が強くなったような気がした……ん?


「え、お前、まてまてまてまて!?今何した!?」


「へ?そりゃ、未練を1個足しただけだよ?」


「ちょっと待てよ!?未練を足すって何!?ってかなんか力今強まったよね!?」


「……あ、そうだった……私たち守護者は未練が強ければ強いほど力も強くしてもらえる……げとみんなセーブしてたからなぁ……じゃない、守護者になった後に見つけた未練はもっと厄介な可能性があるって言ってた」


「……や、厄介?」


「うん!簡単に言うと守護者が強くなるの、消えにくくなるのよ」


「っちょっと待て!?なんで強化してるんだよ!?まてまてまておかしいぞ!」


 そう机に手を付き、指をさして言うと


「ん?そう?」


 なんでもないようにそういった。


「そうだろ!?」


「え?でもさー、私たちって『守護者』だよ?弱かったら、何も守れないじゃん」


 そう言われてしまった、確かになんでもないことかもしれない。


「いやまて、未練を解消してもらうってわけだから、ウィンウィンじゃないの?」


 そう、俺たちは手伝う側でもあるんだ。


「いや、そもそも今みたいに力弱められている私に負けるようじゃダメだと思うよ、それって、私にもできなかったことをするわけだからさ、たしかに別に力があればいいって話じゃないけどさ、力はまず絶対条件じゃないの?だからこそテストするためのここから上の9層だし」


 それにも確かに一理ある。

たしかに、たとえば負けることが目的だとしても、それは自分よりも強いやつと戦いたいから、力のないやつに負けたいわけじゃないもんな……


 っていうか、この人ただの馬鹿だと思ってたのに、意外と喋れるな?


「ま、とりあえず今日はここでゆっくり休んでいってもいいよ、ここにはちゃんと夜がある」


 そういって手をパンっと鳴らすと辺りが夕方になる。

赤い夕日が照り光り、そして時期に真っ暗になるだろう。


「時間を……進めた?」


 そう呟いた俺に対して


「いや?外の時間に合わせただけ」


 そうと、ことも何気に言った。

そして、俺は今になって気になることがある。


「名前は、なんて言うんですか?」


 そう問いかけると、思い出したような顔をして


「あ、申し遅れたね〜英雄!私の名は『リリー サジェントス』簡単に言うと、精霊使いだよ」


 その名前には、俺がシガネたちとの話に何度も何度もでてきた名前だった。

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