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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
慈善団体『六罪』
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六罪と一つの正義 ハルマ バルバ

「僕と共に来てくれる?」


 彼が声をかけたから、我々は存在した。

我ら『六罪(アルマティア)』の最後を締めくくるのは、やはり彼でなくては務まりません。


 剣聖、ハルマ バルバ。

私の住む剣聖の住まう国ソウルドの中では1番の地位を持つこの男は、誰よりも強いことが前提条件であり、そしてそれ以外を誰も求めなかった。


 だから誰はずっと最強だった。

私たちでさえ、その彼の無邪気な、柔和な優しそうなその顔に騙された。


 彼以上の狂気を孕んだ人間は知らないと皆口を揃えて言いました。


 彼は剣に取り憑かれていました。

そう、取り憑かれていたんです、今はもはや剣の方が彼に取りつかれています。


 彼がなくては剣は剣になり得ない、それほどまでに剣が彼に依存していました。


 彼は、剣以外を何も持ちえませんでした

魔法も固有スキルも、なんなら魔法に対する体制も何ももちあわせていませんでした。


 それなのに彼は、誰よりも強くあろうと、誰よりも剣を愛しました。

彼の、その気が違ったのかと思われるほどの剣への愛情が、その剣にやどる小さな魂を虜にしました。


 どんななまくらにも、それを愛す誰かがいたことでしょう。

それが、形を生したものを精霊と人は呼んでいたのかも知れません。

私にそれを見る手だては何ひとつとしてありませんが、それでも話に聞くに確かに存在していたのでしょう、剣に宿るその精霊は。


 彼以上にいないでしょう、あれほどの自己犠牲を持ち合わせたのは。


 私たちに声をかけて集め、文字通り命を懸けた勝負を考えつき、人と魔族の平和のためだけに、彼らは若くして命を落としてしまった。


 私は今、笑えています。

それは六罪のみんながいてくれたおかげです。


 そして、みんながいてくれたから……私はメイドから、みんなの友達になれた気がしました。


 きっとザン様以外は『何を今更』と言うでしょう。

ザン様はきっと「調子に乗るな」と、私を優しく小突くでしょう。


 私が入れたお茶を、皆が笑って飲んでいたり……出会い方がもっと違えば、私たちがもしも平和な今の世の中で出会うことが出来たら。


 そうしたら、それさえ出来たら、私たちは、またもう一度笑い会う日が来るかもしれませんね。


 剣聖ハルマ バルバここに眠る



 石碑に刻まれる英雄たちの名を、指でなぞる。

そうする度に、みんなとの思い出が昨日の事のように思いだせる。


 5月20日、少し温かさが強くなって、街で長袖を着ている人はまだ多いですが、半袖の服を着ている人も見かける。


 茶葉と、花束を石碑の前に置く。

忌み嫌うべき犯罪者に花束を手向ける。


「……皆さん、今は少し休んでください……きっと良くなりますから」


 私の置いた花束が、埋もれてどこかに行ってしまうほどの、山ほどの花。


 これらは、誰かが置いていったもの。

アルマティアは六つの罪を犯した。


 でも、その罪は……許してもらえるとは言いませんが……でも、私は今とても誇らしいです。


「『六罪(アルマティア)』ここに眠る」


 私はそうつぶやき、また、街を歩きます。

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