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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
慈善団体『六罪』
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ネチネチグチグチ

「『潰れろ』『動くな』」


 そう師匠が言い放つ。

体にかかる重みはさっきの重力の並ではなく、しかも弾けない?

体ばそれに抗おうと動くことさえままならない。


「……これで、終わりだ」


 そう呟いた瞬間、爆炎が風に乗って私たちを助けた。


「………っはは、生きていたか………魔女」


 また、珍しく笑いながら、目を向ける。

その先に立っていたのはエングリューさんとウィンドフォールさんの2人。


 胸元の傷は深そうだが、その目は未だに戦おうとしている。

そして、その攻撃も、やはり身体に当たるまでに霧散させられる。

あれはオートガードとかみたいな便利な能力じゃない、どちらかと言えば、彼の血のにじむような努力の果てに手に入れたその力は、絶対防御なのだ。


「……『面白い』」


 珍しく、いや……初めてか?

固有スキルを使ったあとなのに、あんなにも楽しそうに笑っている?


 そうして、少しの間の睨み合い、魔王も私たちの横に戻ってきて、向こうのメイドは傷を癒している。


「……カルカトスを呼びましょうか」


 そう言って、手を前に魔王がすると、シュンとカルカトスが現れた。


 彼の登場に、バンクさんたちも、私達も大いに喜んだ。

そして、メイドさんの攻撃対象が、私に変わった。


 私と目が合った瞬間、さっきまでいたサーラー跡地とは違う……ここはどこだろう?


あたりは真っ暗なようで明るくて、天地創造のその直前に携わっているようなドキドキと、世界の終わりを目撃するかのような絶望感にも苛まれる。


 ふと空を見あげれば、そこには大きな大きな隕石が見えた。


「っえ?」


 これがあの、メイドさんの固有スキル?

いやいやいや!?隕石を落とす能力ってなによ!?めちゃくちゃ過ぎる!?


 そう言っている間にも、隕石は迫り、そして落下した。

瞬間、身を滅ぼすほどの衝撃と熱が私を襲う。

しかし、それでも私は何故かそこまで動揺をしなかった。


 隕石が落ちてきているのに、痛いとか感じる暇があるだなんて、少しおかしいのではないか?と


 そしてまた気がつけば、今度は深海。

はるか上には水面に移る光が見える。

そこをめざしていくら泳いでも、どう頑張っても届く前に溺死してしまう。


 そして気がつけば、そこは獣に囲まれた森の中。

全員が私に襲いかかり、食らいつくも、師匠が教えてくれた魔法がある。

近寄るその瞬間に、力が出せなくなって、獣たちは地に伏せた。


 そして気がつけば………いや違う、これは、きっとメイドさんの固有スキルの効果なのだ。


 ありえないことを起こしたりして、わたしに死んだと錯覚させたりすることが、大凡の目的なのかもしれない。


 しかし、私の心の中には一本芯がしっかりと通っている。


 だからこそ、すぐに戻ってこれる。


 そして気がつけば、もといたサーラー跡地に戻ってきていた。

戦況は大きく変わっていた。


 カルカトスが来たことによって、戦場は大きく荒らされる。

魔女を守りながら、自分も時折戦闘に加わる。


 そして、時折敵が瞬間移動をする時がある。

そのタイミングで、いつも間違いなくカルカトスか魔王が攻撃をしているところを見るに、あれは魔王の固有スキルかなにかなのかもしれない。


 カルカトスは疲れているだろうに、あの師匠と近接で撃ち合って、少しばかり劣勢ではあるが、ほぼほぼ互角と言っていい。


 しかし、あのメイドがなかなか厄介で、カルカトスの動きを上手く邪魔するように戦っている。


 しかし、バンクさんとクロルさんの一糸乱れぬ連携が、メイドを押している。

いや、あの人の身体能力の高さは一体何なのだろう?

動きの理論が少しだけ師匠と似ているが……それはザントリル師匠と一緒にいたからなのだろうか?


 そして、師匠の左腕はくっついていて……どうやってつけたんだろ?

まぁそれよりも、カルカトスが押されてる、ならばまずは負担を減らすために!メイドさんから倒す!


「『黒魔法』っ!?」


 杖を向けた瞬間、私の目の前に、ナイフが飛んできていた。

まさかあの二人と戦いながら、ナイフを投げてきていたのか?


「魔女!あわせなさい!」


 それに動揺していたら、今度は魔王が私たちにそう叫んだ。

私たちが一点に向けて魔法を放つ。

その瞬間、その一点に師匠が現れ、私たちの魔法が全て当たった。


「っぐ……『痛い』『動くな』『黙れ』」


 そうとだけ呟く、そして、身体が一瞬動かなくなり、痛みが走り、声が出なくなる。


 その瞬間を見逃さず、久しく解いていない『自分にかけている黒魔法』を解いて、その元々の爆発的な健脚が、カルカトス、魔王、そして私たち魔女三人を蹴り飛ばした。


 カルカトスの腹部にめり込む蹴りと、魔王の左腕諸共腹を蹴り、私の足を蹴り折り、エングリューさんは杖を持つ右手が、ウィンドフォールさんは左肩を蹴り、吹き飛ばされる。


「っ!師匠!!」


「なんだ?」


 そう言って、目が合った。


「私の足、折れてませんよ!!」


 体に近づくほど、私の発する黒魔法は強くなる。

力を極限まで弱めさせて、次以降の蹴りも、酷い威力だろう。


 だから、深手を負っているふたりでさえも、ダメージを与えられていない。


「………確かにな、違和感はあった」


 そう言った瞬間、師匠が消えた。

そして、目の前に現れたカルカトスが、師匠を切ろうとする。


「いけません!」


 だが、それを先読みしてか、メイドが現れた。

2人の方をむくと、2人とも無事だ、しかし、走って逃げられたのだろう、

こちらに少し遅れてやってきた。


 2人とも装備をかなり着ているから、流石に足は遅くなる。


「……これは………やろうか」


「最後の勝負ってことですね?分かりましたよ」


 お互い杖とペンダントを構える。

私のもう1人のディン師匠の杖を構える。


 そして、メイドさんがこちらを牽制するように、固有スキルを連発する……できたの!?


「……この瞬間だけ、一騎打ちだ」


 全員がふらつき、メイドさんも疲れているらしい。


「……ですね、行きますよ」


「……我ら世界平和の礎に」


 そう呟いて、魔法を見せる。

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