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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
慈善団体『六罪』
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英雄竜【サクラ】

「ッヅオォアア!」


 私は、飛んだ、起き上がって直ぐに、また飛び上がる。


「サクラ!そんなに急に動くと体が持たないよ!?」


 そう言って私に語り掛けてくるクレイア。


「クレイア、前に私に言ってくれたよな!?『今は泣け』と!『もう一度高く飛び上がる為に』って!」


「い、言ったね」


「私はその言葉に救われた!お前の胸で泣いて、体が軽くなったよた……今はもっと軽い!復讐の蟠りさえも取り払い!

私は今こそ!父を超える英雄になるんだ!」


 そう言って私は海を越えて、東へただただ羽ばたく。

サーラー跡地とやらがどこかは知らん……から、ソウルドへ、急ぎ飛び立つ。

私が到着するその数秒前に、おぞましい程の魔法の集団が襲いかかっているのを見た。


「これは、あの時の賢者ちゃんの魔法かなぁ?サクラ、勝てる?」


「水晶でも、魔法は確か防ぎきれなかったよな?」


「うん!なにか二種類以上の攻撃で私の紫水晶は壊れる。

魔法と打撃、二種の魔法、打撃と斬撃、ただそれでも一定以上の技量は必要だし、そもそも上限もある」


 今こうして聞いておいてよかった。

それを確認し終え、一気にさらに速度を上げて向かう。

もう一度放たれる龍の集団。

しかし、私が、本物の赤い竜だ!


「クレイア!『盾』だ!」


 地面に斜めに、滑りながら着地し、声をかける。


「わかった!」


 盾として突き出した右腕が、分厚い紫の水晶で覆われ、あっという間に膨張し、ひとつの盾……いやこれはまるで壁だ。


 そして、この賢者が攻撃しようとしていたのは、あの黒髪赤目の四天王の魔族……ラジアンだったか


「まずいな、出血が酷いが、まだ消えていないだけいいとするか」


 そのすぐ横に剣聖が倒れ伏し、心臓に剣が突き刺さっている。

勝ったのか?あの男に……!?


「ならば是非とも起き上がって戦いに加わってもらいたいな」


 その瞬間、壁が砕かれ、炎と風の刃がいとも容易くやってきた。


「っぐ!いい威力だ……!」


 私の肌を割くその刃が私の体を襲っ………まだ止まないのか!?


「っ!?増えているのかァ!?」


 刃がずっと増え続けている……のか!?


「っくそ!ど、どうすればいいんだ!?こういう時は!?」


「真っ向から!押し切ろう!」


 そんなアドバイスを受けて、私の口がニヤリと笑った。


「なぁに!簡単じゃないか!?」


 口を開いて詠唱している暇は無さそうだ、腹の中で練り上げて、それを吐き出す。


 混ぜるのは、聖魔法と炎魔法。


「〈大竜聖火(ドラゴンズフレイ)〉!」


 イヤーな、しかし、私を確かに助けてくれたあいつの名前も入っている。


 白炎、何もかもを燃やして、白い炎が芯になり、そのまわりに私の赤い炎がレーザーのように突き抜ける!


「っな!?なかなかやりますね!?」


 しかし、回避も上手いな、しっかりと既で避けてきた。


「っだが!隙はできたな!」


 人の姿に一瞬で戻り、急いでラジアンの元に行き、持っているものをまさぐる。


「さ!サクラ何やってるの!?私以外の女の子の体そんなに触って!」


「っばかっ!ち、違う!大事なものを持ってる可能性があるんだ!」


「何?それって?」


「わからん!」


 さっきから背中のゾクゾクが止まらない……嬉しいんじゃない、怖くて怖くて仕方がない。


「っ!何をしてるんですか!?」


 水の大砲、そして、大地が獣を象り飛びかかる。


「っ!クレイア!」


 壁を貼り、少しダメージを緩和してもらうが、私にもダメージはある。


「っあった!!」


 これは……赤と白がねじれている……ツノか?

しかしこれはまるで輝石のようで……それでいて


「あっつ!?」


 私の掌が、火傷する程に冷たくて熱い。


「これを……食べさせるのか!?」


 やり方がわからんが、私のようにこいつは口が大きくないし……

いや、まぁわからんが、食わせよう、それがいいと私の感が言っている。


 口の中に突っ込む、そして、押し込む。

痛いだろうが、まぁ尖っている方から飲んだ方がヌルッと入るだろう。


「私はまだまだどんどん行きますよ!!」


「サクラ!これだとサクラが持たないよ!?」


 確かに、さっきの魔法でMPも残り少ないし、人に戻るのにもまぁ大変だった。

だけど!今の私なら!こんな状態でも戦おうとする私なら!きっと!


「応えろ!英雄竜のみ持つことの許される大剣よ!目覚めよ!私は今その素質が、あるだろう!?」


 大剣を持ち上げる、いつも無骨なその見た目の剣は、復讐を誓ったあの日とまるで変わらない。

だが、私は大いに変わった。

英雄たる『力』守ろうとする『意思』大切な人を想う『愛』!!


「やろう!今名を授ける!この剣の名は!!」


 そう、この剣は!

私が、英雄竜になるまでの!その道!そのもの!


「『英雄竜への道(ドラゴンロード)』だ!!」


 そう宣言したと同時に、強く握る。

ビキッとヒビがはいり、広がり、中から桜色の光が溢れ……輝いた。


『……トクン……ドクン……ドックン』


 そんな音が私の背から聞こえてきた。

私の耳にまで届くほどの心音、そして背筋を冷やすあの熱は


「っふー!ありがと、助けられちゃったね、それに……いいねこれ」


 更に更に音がでかくなる。

そして、次第にその音に合わせて胸を叩く。


「上がれ上がれ!もっと上がれ!心臓の!音っ!!」


 そう言って笑っている。


「っマズイですね……ラジアンが起きましたか」


 さっきまであんなにも魔法を連打して倒そうとしていたマチアが顔を青くして、更に魔法の勢いが強くなった。

そして、私は直ぐにその理由を理解させられる。


「《自由で横暴な決闘(マイルールデスマッチ)》『魔法の使用を禁ずる』」


「……あぁ、そうだった、かわい子ちゃんの固有スキルは、これだった」


 そう言って、私も直ぐに理解が追いつき……戦いは終わった。

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