弔い
「……おはようございます、魔王様」
「うん……おはよう……あまり眠れませんでしたね」
力なく笑い合う。
お互い、目の下は真っ赤で、何度も何度も擦ったあとがあった。
情けないことに、俺が寝たあと、魔王様が変わりにみんなに伝えてくれてらしい。
「……そうですか、本当に……ありがとうございます」
「いえいえ、それで……すこし、暇が出来ましたね」
そう言いながら、俺に近づいてくる。
「えぇ、昨日教えてくれた、弔い方、教えてください。
今思えば、俺は仲間の弔い方も知らなかったんですね」
「知らないことは誰にだってありますよ」
そう言って優しく笑いながら、本を出した、どっから出した?
以前のほうれん草の時と言い、随分と準備がいいな。
「でも俺ちゃんと、ちゃんと埋葬してきましたよ」
丁寧に、細心の注意を払って。
「?埋葬……あぁ、剣を埋葬してくれましたか」
え?剣?……あそっか、アズナスって大事な剣か。
「あ、すいません、大切な剣だったのに埋めてきちゃいました」
「まぁ仕方ないですよ、なにせ『剣しか』埋めるものもありませんしね」
「………ん?」
「…………へ?」
剣しか埋めるものはない?なんか引っかかるな。
「いや、なんでもないです、弔い方、教えてください」
「あぁ、分かりました。
まず、土に還るって言い方じゃなくて風に消えるなんて言い方をしたりしますね、死んだ人達は、夜空の星のようにキラキラとどこかえ消えていきますから」
「……っえ?」
「……あれ?知りませんでしたか?魔族は死んだらみな、光の粒となって消えるんですよ?」
「………あぁ……あぁ!?……あああぁぁあああぁ!!!?」
そうだ!そうだそうだそうだそうだ!そうだった!!!
「か、カルカトス!?どうしました!?」
「魔王様!俺!忘れてました!ラジアン!光の粒となんてなってません!!!」
そういうと、魔王様は目を丸くして、数十秒フリーズしたあと。
「……え?……え!!?って、ことは!!?」
「ラジアン!まだいきてるかもしれません!?」
「で、でも!?」
「はい!身体は穴だらけで、心音なんて聴こえなくて!心臓にだって穴が空いてたし、脳天は目ごと貫かれてたし、腹部の針も枝分かれして身体の中を抉っていました!けど!あいつは消えてませんでした!!」
指先から脳天、足の先まで全て調べたから間違いない。
何度間違いだったら良かったと心臓の穴を覗き込んだか、もしかしたら目を開くかもと、瞳を覗いて空洞を見たか!?
「っ!!!カルカトス!場所は魔剣の近くですよね!?」
「はい!間違いありません!」
「なら!私に触れてください!早く!!」
「へ?……はい!わかりました!」
有無を言わせないその雰囲気、しかし、顔は笑っていた、希望に満ちていた。
あぁ、これなら確かにこの顔は、なんて嬉しそうなんだ。
「カルカトス、私の固有スキルをまだ話していませんでしたね」
「持ってるんですね、やはり」
「えぇ、もちろんです。
私の固有スキルの名は《手の中の世界》私のマーキングしたものの中にならほとんどなんでもできます。
あなたのアデサヤ、彼女のアズナス、その他にも様々なものにマーキングをしています、御託はここまで、行きますよ!!」
「っ!はい!!早く行きましょ……うぉっ!?ついた!」
早い、もう着いた、ここは、あの少し盛り上がった土と、サクラで叩き壊した黒い固有スキルの壁、よく思い出せば黒い壁も残っていたじゃないか。
「ここです!この穴の中です!」
「よし!わかりました!上に引き上げます!」
そう言った瞬間、魔王様は動きをピタリと止めた。




