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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、戦いの中で生まれる者だ
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死者ばかり【カルカトス】

「……っぷはっ!……オエッ……!!」


 土の中から手を突き出して、かき分けて上に出てくる。

アレに閉じ込められて刺される前に、足の下から自分の身体のダミーを上に残して、自分は地中に避難していた。


 確かに俺はそれで助かった……まぁそれでも体がボロボロに刺されたが。


 刺された俺の体も取り込み直すと、怪我もほとんど引き継がれる。

これだけ大部分のパーツが本物のダミーだ、切り離して消すと取り返しがつかない。


 そして、俺の体の横で、同じく倒れるラジアン。


「……っ………っはは!……ははははは!」


 笑うしかない、なぜだ、なぜ俺の周りの人達ばかりが死んでしまうのだろうか。

ネルカートの方を調べてみれば、フロウの仲間たち、サクラの仲間たち、シア、俺の部下のみんな、そして


「……ラジアン……おい……起きてくれよ……!」


 無理だ、グズグズの穴だらけの体。

ヘルヴェティアまで担いで帰りたいが、帰る途中に身体がちぎれてラジアンじゃなくなってしまうかもしれない。


「……ラジアン、ごめん……俺だけ逃げたりしてごめん……」


 そう言って、穴を掘る。


「ごめん……一緒に帰ってやれなくてごめん……」


 そう言って、体を持ち上げる。

いつの日だったか、お前が歌って教えてくれたよな。

ヘルヴェティアはみんなの帰るところ。

みんなみんな、あそこに居場所を見いだした。

自分がいる意味が欲しかったお前にとって、ヘルヴェティアはどれほどお前の心の支えとなったのか、俺には計り知れない。


「……ごめんな……ラジアン……」


 謝るしかできなかった。

半分自暴自棄になっていた自分が今思い返せば恨めしい。

もう、放っておいても大切な人が死んでしまうのなら、ヘルヴェティアの皆に笑顔を向けて、みんなにはまともに顔も合わせないで、俺が殺せば覚悟が出来ると思っていた。


 1人でソウルドに居たのは、剣聖たちのことについて調べるため。

サクラに斬りかかっても、俺はどう頑張っても殺せなかった。

アデサヤという、強力な力があってもだ。


 剣を抱くように、ボロボロの腕に抱かせ、土の中に埋める。

篭手は俺もお前もほとんど無傷だった。

遺体を傷つけないように、静かに土を被せた。


「ごめん……あと、今まで本当にありがとう

お前から、この篭手を受け継ぐ、お前に……お前にいつか勝って奪いたかった」


 心残りはいくらでもある。けど、俺もヘルヴェティアに居場所を見つけたよ、お前のおかげだ。


「……みんなを見つけてくる、ごめん、魔王様には俺から謝るよ」


 片足を引きずりながら、何度か立ち止まったあと、ラジアンの固有スキルの残りの黒い壁を超えてまたゆっくりと歩き始める。


 おかしいな、もう怪我は治っているのに……なぜだ……

腕を切り飛ばされた時に落としたアデサヤを握ると、俺の体の中に消えていった。


 穴だらけの服から、今までの守護者達との戦ってきた傷跡がチラチラと見える。


 今回の守護者は、過去最強だろう。

あの固くて柔らかい足枷に使われていたおかしな水晶が厄介すぎる。


 初見殺しどころか、下手をすれば何度戦っても勝てない。


 勝てない……だから、俺は勝たないといけない。


 かなり離れたところに、3つのカプセルを見つけた。

しかし、何度剣を突き立てても、叩いても魔法を使っても全く歯が立たない。


「……と、とりあえず、魔王城に運びますね!」


「あぁ、すまないカルカトス君、ところで、ラジアンは?」


 エンブラーさんのその言葉に、動けなくなった。


「……ら、ラジアンなら……ほかのカプセル探しに行っています」


 つい嘘をついてしまった。

別に何か変わる訳でもないし、時期にバレるくだらない嘘。


「おぉ、そうか。

良かった……2人とも無事でよかった。

ラジアンとカルカトス、2人ともどちらかがかけたら魔王城が暗くなってしまうよ」


「っぐ………は、ははは……ですね」


 少し声が震えている気がする。

上手く元気なふりができていない。


 その後も、たくさん時間をかけて残り二つも見つけた。

どんなところまで吹き飛ばしたんだ、探すのが大変だった。


「……おかえりなさい、カルカトス、その3つの球体は……中に皆がいるんですね」


「はい……あの、魔王様」


 そう言って……ラジアンのことを話そうとした時、跪いて、頭の位置が低くなった俺の頭を抱きしめてくれた。


「……わかっています……ごめんなさい……私がいながら、助けに行けませんでした

ヘルヴェティアの方にも、また敵が来ていました、そのせいで私も足止めを喰らい……ラジアンを感じられなくなりました……」


「……っ、う……っ………」


 抱きしめている魔王様も震えていて、涙が何滴も俺の頭の上に落ちてきた。


「……ごめんなさい……ごめんなさい」


「……っ……ら、ラジアンは……ちゃんと土に還れますよね……?」


「……カルカトス……我々魔族の間では……また違った言い方をします……ですがそれはまたの機会にしましょう。

今日は休んでください……私も……もう眠りたいです」


 人間側とは違った弔い方をするのだろうか、魔族は。

部屋に着いた途端に、もうどっと疲れて、眠りについた。


 そして、夜中に目が覚めて、ラジアンが居ないことを思い出して、また泣いた。

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