逆鱗【クレイア】
「……すっごい地響きに、サクラもどっか行っちゃった、ねぇ、あなたなら何が起こってるかわかるんじゃないの?賢者サマ」
そう言って、目線の先にいる賢者に笑みを向ける。
向こうも笑顔で笑いながら
「さぁ?なんの事やら」
「君も可愛いねぇ……でも舐めたらシビレちゃいそうだ」
「感もよろしいんですね……でも!これはわからなかったでしょ?」
そう言って手を振るうと、地面が淡く光り出す。
「……転移の魔法?これって迷宮のアレと同じだね、すごいじゃん」
「そうでしょう?私の最高傑作ですよ」
これは迷宮の転移装置と同じだ……これを作ったのは私たちの中の一人、迷宮外では使用できないと聞いていたのに、凄いなこの子。
目の前が光に包まれる。
目を開いた時、ここは……?ここはどこだろう?
「原っぱだ……ここは果たしてどこなんだろうか?」
風に乗って、黒い臭いがした。
「魔族……かな?」
そう言って、掌をかざした方向には……っおおっとこれはこれは
「ねーぇ!ここどこよ!?」
「さぁ?羽が使えませんし、とりあえず歩くとしましょうか、僕としても竜になれませんし」
「ですね、せめて我々が一塊になって飛ばされたことを幸運と思いましょう」
「そうだよ、ラジアン、それよりも視線を感じるね」
そう言って、紫髪の魔族の男が私の方をジロっと見た。
ラジアン?聞き覚えのある名前だ……四天王かな
他の人たちも多分それに相当する人物たちか。
「……仕方ないね《七十層の守護者》、全盛期の7割ってところだけど……いっちょやったりますか〜」
緊張?しないよ、私は最高の防御を誇るんだ〜
「っ!?あの人、強いですよ!?エンブラー様!」
「今の時期、戦いは避けられないからね、やろうか、みんなで」
「いいねぇ!なら私が!逃さないよ!
ルールはそうだなぁ……《自由で横暴な決闘》『絶対に出てはいけない』」
可愛らしい黒髪赤目の魔族の子がそういうと、辺りに真っ黒な壁が立ち並び始める。
抜けられないこともないけど、スキを晒せばやな感じだろう。
「私の話は!聞かなくていいの〜!?」
大きな声を出して声をかけてみるが、返事は特にかえってこない、傷つくぞ〜?無視は
「行きますよ、ラジアン!ナルヴァー!」
「任せて!」
「今!行きます!」
赤い魔剣と、あれは………確かアズナス?父さんが言ってたなぁ。
あのドラゴンは腕を竜に戻して戦う感じかァ。
「『赤く硬く』『青く柔軟に』『仲間を守るその盾と』『大切な人を守るための刃』《秩序を壊す紫水晶》
っさーてとっ!セブンスなんてかっこいい名前!見せつけちゃうよー!」
サクラとかいたらカッコつけれたのになぁ
右からドラゴン、左にかわい子ちゃん、正面から赤魔族。
「〈仲間の盾〉!」
地面に触れて、私を中心に出来たその紫水晶の丸い円。
それに包まれて、剣は弾かれ、拳は沈み、跳ね返される。
「っー!!ジンジンするぅ!」
「かっ!?た!?」
「っべふ!?」
「あっははは!バトルなんだからさ!楽しまないとダメダメ〜!
私は逃げないし、君たちは逃げられない。
ここは実質七十層のようだ!私も楽しんじゃおっと!」
パン!と手を鳴らし地面に両手をつける。
「っははは!いっくよぉ!?〈足元ご注意!〉!」
地面から、文字通り剣山を生やすその技に……おぉ、凄いなみんな。
赤魔族は生えてくる場所を上手く見切って避けた、かわい子ちゃんは刃の上に立つか!センス抜群!
2人ともこのままこっちに詰めてくるの!?なんで!?
ドラゴンの子は身の程をよくわきまえている、後ろに引いたね。
「強いなぁ!みんな!」
「《錯乱汚染》!」
遠くの紫髪の男は……っ!
「デバフかぁ!なるほどなるほど!なかなかどうして、いいパーティーだね!」
これは……思考を乱すタイプ。
一瞬スキルの制御が難しくなるね!
「っ!解けた!ナイス!」
「流石いいタイミングですね!」
2人とも、剣を私に当てようとするんじゃなくて、赤魔族が私を狙って、かわい子ちゃんは私の動きをちゃんと見ようとしてるね!
「っはは!いいよいいよぉ!それじゃひとつ、踊ってみようか!」
ピョンと飛んでバク転をしてその攻撃を避ける。
頭が下に到達して、上下逆さまになったところに、刃が吸い付いてくる。
「いいねぇ!すごくいいタイミングだよ!」
「っ!凄っ!?今の避けるの!?」
体をグイッとひねって避ける。
「〈紫の芸術品〉!っへへー!私も武器使うよ!」
盾で守りながら戦ってたらいつか隙をつかれるかもしれないから、戦い方を変えるとしよう。
剣を私が振り上げる。
防御しようと反応する赤魔族、その瞬間に私の剣は槌に変わる。
「っな!?」
「あ、危なっ!?」
おぉ、横からさっきのドラゴン、いいタイミングだ。
そして、さっきから断続的に無詠唱でデバフかけてくるのやめてくれない?弾くの大変〜!
「エンブラー!やるよ!」
「あぁ!行くぞラジアン!」
剣撃、凄い勢いだ!目が回りそうな速度!私もちょこちょこダメージがかさむ!
「痛た〜!かすっちゃった!よーし!そろそろ本気で行くよ!」
4人とも『まだ本気じゃなかったのかっ!?』って顔をしてるけど、まだまだ奥は深いよ!
「行くよ!〈ブレイ……っ!?」
西の方から、私も、4人もみんなその方を見て、動きが止まった。
恐ろしい何かの気配が、体を撫でた。
「なになになになにー!?怖いって!?」
そう私が言った途端に、黒い壁が突き破られて、一匹のドラゴンが弾き飛ばされてきた。
「サクラ!?えぇ!?ぼろぼろ!?」
息はある……良かった。
そして、その吹き飛ばした張本人もこっちに飛んできた。
「……あ、みんなここにいたんだ、あの黒い壁はラジアンの……なるほどね」
その顔は、カルカトスの顔だった。
けど、冷たい顔をしていて、左掌から血が流れ続ける。
そして、彼の握る赤い剣もまた、血がポタポタ落ち続ける。
「……サクラ、私が守るからね」
彼女の前に立つ。
5対1か、本気でやらなくちゃ




