ソウルドの歴史【ラジアン】
「……カルカトスー?」
扉にノックをしながら声をかける。
「……んー……?」
中から疲れた声が聞こえてくる。
「入っていーい?」
「……いーよー……」
扉を開くと、ベットの上で顔を沈めているカルカトスがいた。
「疲れてるねー、光魔法の使いすぎ?」
1人で獣人とかダークエルフの子たちの治療を背負ってくれたカルカトスのおかげで、たくさんの命が救えた。
「そんなところだ……どーした?また怪我人か?」
「んや、違うよ。
ただ、ちょっと気になる話を見つけてね、ソウルドの事なんだけど……ソウルドってなんて呼ばれているか知ってる?」
「軍事国家?だったっけ?それが?」
「そそ、力こそ正義!って言うのはちょっと極端すぎる表現だけど、あの国では力がそのまま身分に通じたりするの」
「……それで?」
立ち上がって、座り直して私の方を向き直る
「ソウルドには、大きくわけて、本当に大きくわけて2種類存在するの『人権がある人』と『人権がないもの』」
「……それはまた随分極端だな」
苦笑い交じりにそう言っている。
「全くその通りだね。
そして、人権を手にするための戦いもあるし、別のアピールポイントで人権を手にすることもあるの。
親が凄い人なら、子も凄い人として生きれるの。
『人権』って言う言葉で表しているけど、多分ソウルドの人たちからすれば存在証明なんだろうね」
いつぞやの私の悩みの種。
「んで?その人権を手にする方法ってのは?」
「戦って、強さを示すこと、それこそが、己の存在の証明の仕方、そうして業者のみが生きることを許されるソウルド、だからこそあの国の剣士たちは強いの」
魔王ちゃんから話を聞いてみても、やはり屈強であったと聞いた。
「それが気になる話か?」
「うーんまぁ、そんなところ。
剣聖がそこで自分の力を示して、そして彼は何よりも貪欲だったから剣聖の座を得るまでに至ったっていうのが書物に記されててね、それが気になってカルカトスのところに来たんだ」
「へぇ、あの人も昔はそうだったんだ」
「まぁ、そうみたいだよ。
そこで色々調べたりしていくうちに、謎だった剣聖の……まぁ色々な情報が出てきたわけよ」
「へぇ?例えば?」
やはり気になるらしい、目が少し大きくなった。
「例えば……会議が好きだとか」
「……え?」
「会議室の使用がやたらと多い人だったり、剣をずっと振っている人かと思えば、ふとした時に急に街に現れて、買い食いをしてたり……」
「ほ、他には何か?」
流石にそんなわけがないと、同様混じりにそう呟くカルカトス。
「一応ほかにもあるよ、お酒に弱くてすぐ寝ちゃったり、魔法がからっきしダメって事や、実は名剣とか一振も持ってなくて、誰でも買える鉄剣しか使わないこととか」
「……まぁ、さっきまでのよりは役立つ情報か……ほかは!?固有スキルとか、弱点とか!」
「固有スキルは分からなかったね、まぁ弱点も魔法に弱いとかじゃないかな?使えないらしいから知識も疎いだろうし」
「な、なるほどな……あれ?それってほとんど謎のままじゃないのか?」
「まぁ、酒に弱いって言ってたし、お酒飲ませて暗殺する?」
「自分の国滅んだのに酒飲み出すほどイカれてるのか?」
「だよね、私もそう思う」
我ながら無理があると思ったよ
「やけ酒するタイプじゃないしな……ただまぁ剣聖が一番ヤバイ敵の1人なのは間違いないからな、警戒は怠れないな」
「うん、だから今ヘルヴェティアで一番魔力感知に優れているペルソナが警戒をしてくれているから、当分は敵の襲来に先手を打てるね」
「ペルソナ……仮面の人か」
「そうそう、あの人ディスターヴの師匠だったり私の師匠のライバルだったんだって」
「また会ってみたいな、お前の師匠」
「師匠は自分の顔見せてくれないけど、会えるよ?
私たちのことを『まるで昔の私とペルソナのようだ』って教えてくれたりもしたよ」
「そうか、会えそうなんだ……なら会いに行きたいな」
「ん?そう?なら今から会いに行ってみる?」
「へ?いけんの?」
「いけるよ、師匠は私の視線を見てるらしいからね、何か嫌ならこっちに色々言ってくるだろうし」
師匠なら別に牢獄の中にいても色々できるだろうし。
「そっか、なら行くよ、どこだっけ?した?」
「そうそう、この城の地下に閉じ込められてるよ」
「よし、なら案内してくれ、会ってみたい」
ということで案内をして、私は上の方で待っていることにした。
「ありがと、んじゃ行ってくるわ」
「んー、行ってらっしゃーい」




