宝剣【サクラ】
「……っんーー!おはよぉ、サクラ」
そう言って私の横で寝ているクレイアが私にほほ笑みかける。
現在住処と呼べるところがほとんど残っていないせいで、私とクレイアは2人揃ってテントの中に押し込まれて寝ている。
「おはよう、クレイア……」
しかしこの英雄、朝から刺激的だ。
なんだその服装は、寝相が悪かったのか、はだけにはだけて普通に見えてるぞ!?
「ん?……あぁこれ?別に女の子同士だし別にいいでしょ〜?」
そう言いながら服を開くな!?
「馬鹿っ!?それを口実に私を脱がすつもりか!?」
このノリなのだ、ずっと……これなら落ち込んでいられる暇さえない。
「っむ!?いい洞察力だね!その通り!」
「英雄が堂々とセクハラするなっ!!」
そう言っておしのけようとする
「いやーん」
「変な声出すな!!」
朝から疲れた……
服を着直して、普通の服装になったあと、テントから出て真っ直ぐどこかへ歩いていった。
「……?どこへ行く?クレイア」
すると、いつもの様に笑いながら
「私の落し物拾いに行くんだ。
私は二振りの剣を作ったんだ。
『紫宝剣 ジュエル』ちゃんと『蒼宝剣 ハグネロ』ちゃんだよ!
私の大切な剣だけど、私がとある村に置いていってね、きっとその子の子供たちも今の時代を生きているだろうね……きっと、強くなっているかな?」
紫と蒼の2本の剣……そして、強い剣士……
「『デクター アルハザード』……!?」
そういうと、驚いた顔をして
「おっ!正解!『アルハザード』!有名になってるんだね、さすがだよ」
「……アルハザードとは何だ!?」
「っえ!?知らないの!?」
「私の尊敬する、今は亡き剣士の名だ」
「……あぁ、故人か……アルハザードっていうのは昔の英雄。
英雄って言っても小さな村の英雄で、たった2人で押し寄せる魔物の軍団に立ち向かった力強い男の伝説。
アルハザードに私は2つの剣を渡したの。
水の湧き出る剣と、宝石を生み出す剣」
正しく、デクターだ。
「あんまりMPないから限度が知れてたんだけどね」
それも、デクターと同じだ。
「もう1人の名前は……『アンダーバード』誰も知らない、私とアルハザードだけの友達」
「……それをどうして探すんだ?」
「私のMPは、アルハザードの比じゃないし、私ならもっと強く扱える。
戦いを止めるためなら、こんなズルい事もするよ」
そう言って、歩いていった先は……カルカトスの家か。
立派な家だったが、ここもまた爆心地だった。
姿のない敵からすれば、カルカトスは恐ろしいのだろうな。
瓦礫にアイビーが押し潰されている……アイビーは今どうしているのだろうか?
「もっと先かな」
突き抜けて、墓場もボロボロだが、その中に腕を突っ込み、引き抜いた。
続いてもう片方の手も突っ込んで引きずり出した。
「おかえり……いや、ただいまかな、ジュエルちゃん、ハグネロちゃん!」
本当にこの剣たちを愛しているらしい、抱きしめる。
「その剣は?」
「私の固有スキルで創ったのよ」
そう言って、ジュエルを軽く振って見せた。
下から上へ、振り上げるだけで辺りの瓦礫が光り輝く宝石になり、そして家の形を象り始めて
「ジュエル、解除」
瓦礫の塊が家の形をしていた。
「雨風はこれで凌げるね」
そう言っているクレイアの方を振り向くと、彼女の背後にも、住宅街が立ち並んでいた。
これが英雄の力。
戦いにばかり目がいっていたが、ただ力だけで英雄とは決して呼ばれないのだろう。
私もまだまだだな。
「サークーラー!あれが私たちの愛の巣だよ〜!」
「何を育むつもりだ!?ってか力強っ!?」
ズルズルと私が、あの私が!?この私が!?なすすべない!?
「さー!いくわよー!」
「や、やめてー!!?」
後に知ったが、クレイアは同性愛者だった。
そして、この日のことは思い出したくない……随分乱された。




