表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、戦いの中で生まれる者だ
331/499

紫水晶の壁

「……蒼色水晶は……斬撃に弱くて打撃に強い、柔らかくてまるで水のような……」


 剣を掲げ!振り抜くっ!

亀裂が入り、さらに切り続け、私一人入れる穴を作る。


 次に見えたのは、紅い壁。


「ま、だと思った……これは打撃に弱い……はぁっ!!」


 連撃、乱撃……まぁ一人通れる穴があれば充分だっ!


「っこれは……紫色……」


 とりあえず、切りかかる。

ガキんと弾かれ……刃こぼれ……!?


「なんって硬さだ……!?なら!打撃だっ!」


 拳を振り抜くっ!

すると壁はまるで水のように私の拳を吸い込み、はじき返す……その勢いのまま背後の壁にぶつかる。

まるで同じ力で殴り返されたような……


「……な、なら!聖魔法!」


 光の玉は、当たって弾けて、霧散した。


「《桜魔法》!」


 桜色の煙が晴れても、何も変わらない。


「……嘘……だろ?」


 なら、一体どうすればこれを越えられる……?


「……こうなれば……竜たる所以を見せてくれよう!」


 足はミサンガがあるから、腕だけ人化を解いて削る!

も、やはり跳ね返され……私の爪がボロボロだ。


「っ、なら……なら……なら私は……どうすればいいっ!?」


 不味い、これを突き破る手立てが私には見つからない!?

なんなんだこのインチキみたいな能力は!?


「っくそ……越えられない……あれが私の……限界だ……」


 恐らく単発威力では私の持つ手札の中で最高峰のソレでも傷一つつかない。


 限界だ、これが私の限界だ、壁一枚突き破れない……

そんな時、一言が頭をよぎった。


『忘れたかァ!俺は!限界を突破する!限界を突破した後にできた限界さえも!だ!』


 こんなセリフ、カルカトスは吐いていたか?

記憶にない我が好敵手の声。

しかし、その言葉は私を奮い立たせた。


「……貴様にできて、私に出来ぬことなど……ないっ!」


 思い出せ、私が持つ固有スキルを!

いつも思うように扱わせてくれないんだ、いつも大切な局面でしか出てこないやつなんだ!


「『活路は前に!』『世界の夜明けを迎える者は!』『その資格に勇気を求めた!』《勇敢なる者(ブレイバー)》ァ!」


 ほら出せた!カルカトスにできたんだ!私だって限界を超えてやる!

両手でしっっかり握り、両手剣を、連撃、連撃!連撃だ!!


 切り刻む!弾き返されるのなら!それよりも強い力で押し付ける!


「っおぉおあ!!」


 数分間たたき続け、ついに、壊れないと言うルールさえも……ついに!超えて見せた!


「さぁ!名も知らぬ英雄よ!約束だ、私は壁を超えたぞ!!」


 そこには目をまん丸にして驚いている英雄がフリーズしていた。


「まさかそんな方法で突破ってくるなんて……君が初めてだよ。

本来だったら完全に同時に剣と拳を当てたり、違うタイプの魔法を二種同時に当てたり……なんだけどなぁ、まさか剣で……」


 私の突き出した手に、笑いながら握手をしてくれた。


「わかったよ、君を認めようサクラ グランド、君を《七十層の守護者(セブンスガーディアン)》が認めたよ。

そして、私の名は『クレイア サッサ』父と母には劣るけど、英雄として、誰かを守ろうとする君に心が奪われた、サクラ、私と戦うのはまた今度だ、一緒に上へ行こうか」


 クレイア……サッサ……聞き覚えがあるな……まさか


「クレイア!君の父親は、母は、貴様よりも強いのだろ!?……名は……まさか!『アルバナ ナルグ』だろう!?」


 そういうと、これまた目を丸くして


「よくわかったね〜」


 そう、なんでもない事のように……いや、クレイアにとって、己の父がアルバナ ナルグであることは、私の父が英雄である以前に父であったのと同じようになんでもない事なのだろう。


「……アルバナ ナルグは、私の最も好きな英雄譚を書いた男だ」


「へぇ、お父さんが一番好きなんだ!君のお父さんが来たら泣きそうだ」


 確かに、父は私たちを溺愛していたからな……


「たしかにな……さて、叶うことならずっと話しをしていたいが、自体は一刻を争う、ここら辺で話を切り上げて上に上がりたい」


「いいよ、けど私たち守護者は転移装置を使えないし、自力で上がろうにも道が分からないんだ、だから教えてね!」


 っと……ん?なんだって?


「え?」


「……え?」


「……そのだ、クレイア、落ち着いて聞いてくれ」


「ん?なーに?」


「私も、道が分からない」


『………そっか、知ってるのはカルカトスか』


「……よし!私と一緒に反対側から攻略していこう!」


「やっぱりそうなるよなぁ!」


「当たり前よ!私はこういう迷路、作るのは好きでもやるのは苦手なの!驚かす側の人は驚きやすいのと同じ感じ」


 その例えはよくわからんが、まぁ、やれるだろう


「よしわかった!それじゃ!ササッと上へ上がろう!」


「うん、ちょっと待ってね!」


 そういうと手を下から上にパッと払った。

無意識に剣を構えそうになるほどの、巨大な魔法。


「〈摩天楼(アッパーロード)〉」


 螺旋階段が、地面から生えてくる。

それはぐるぐると回りながら、上の階層を貫通して……


 この勢いで迷宮を破壊して一本道を通す気か!?


「さぁ!上へ上がろう!守護者なら壊せるのよ、この壁や床も!」


 そう笑いながら、私よりも階段を先に駆け上がっていく。

早いな!?私も急がないと置いていかれる。


「ま、まてっ!私も行くんだ!」


『私以上に常識破りな子だったかっけ?クレイアちゃんって』


 頭の中の英雄は半分戸惑っていた。

しかし貴様も大穴を作っていた張本人じゃないか……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ