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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、戦いの中で生まれる者だ
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王様殺し計画

「……ナルヴァー、落ち着いたか?」


「す、すみませんカルカトス様……はい、落ち着きました……大丈夫です」


 焦り散らかして竜になってひっくり返って建物が崩れたが……それを直しながら頭にねじり鉢巻を巻いたナルヴァーが申し訳なさそうに答える。


「そうか、それでだな、計画は明後日行おうと思っている」


 そう言いながら建物の修復作業の手伝いに俺も参加する。

手を付け始めた時は申し訳なさそうな顔をしていたが、俺が言葉を終えた時、驚嘆の声とともにガコッという音ともに修復箇所を増やした。


「明後日!?早すぎます!」


「穴開けるなよ……それに別に早すぎることは無い。

俺がボロボロになって王様の所に『早く合わせてくれ!魔族が出た!』とかって言って中に入れてもらったら、もう傷を治して全員嬲り殺す。

お前は少し離れで俺をしっぽが何かで弾き飛ばしてくれ、それで上手く王座のところに飛ばして貰えたら、色々手間は省ける」


「確かにそれならできるかも……っじゃなくて!?」


「なに、善は急げだ、上手くやろうな」


「ですが!ネルカートは各国の中でもとびきりの強者揃い!

勇者共やギルドも沢山あって、ネルカート大迷宮の名が強者を呼んでいますよ!?」


「そんなところだから、俺がずっと侵入して、みんなに信頼して貰えるようになったんだ」


「……カルカトス様はそんな信頼してくれている人たちを裏切るようなことをして、平気なんですか?」


「……そりゃな、誰も俺を罰せない、平気さ」


「そういう意味では……」


 わざと的外れな答えをしてはぐらかす。

シア、バカドラ、ラング、ライト、グリーズさんたち、バンクさん達、グエル、フメテアパーティーのみんな、フロウ、みんな大切な人達だ。


 平気なわけはない……いい人達は、俺だって大好きだ。

でも、それとこれとは話が別だ。


 俺は、俺がもっと生きやすい所に行く。

初めに俺を突き放したのは、人間の方なんだから。


 そして俺は人間じゃないんだ、元々そっち側で過ごすって言うのは過ぎた願いだ。


 ヘルヴェティアで、俺とアイビーはゆっくり生きられる。

だから、みんなを裏切っても、俺は別に構わない。


 たぶん、きっと、おそらく、そうだろう。


「明後日までにこれを終わらせよう、話はそれからだしな、ちゃんと綺麗に治さないと怒られる」


「ですね、綺麗にしましょう」


 アイビーはきっと俺を軽蔑するだろう。

もしかしたら、俺がさっきあげた誰かを、俺が殺さないと行けないかもしれない。


 それがもしかしたら、アイビーも、俺も大好きなシアかもしれない、最高のライバルのサクラかもしれない、共に戦ってくれたフメテアパーティーかも、命を助けてくれたバンクさん達かも


「……っくそ」


 俺はなんて中途半端なんだろうか。

どっちにもいいようにしておきたかったから、どっちの人たちもいい人たちばかりと知り合えてから、どちらも手離したくない。


 でも、今その瀬戸際に来てしまっている。

必ずどちらかは手放さなくては行けない。


 仲間を失うぐらいなら……そう思って振った刃の行き先はきっとまた別の仲間。


 振り上げた剣を、俺は一体どこへ下ろせばいのか、それに答えはあるのか?


「……トス様!カルカトス様!」


「っお?な、なんだ?」


「いえ、ボーっとしてらっしゃったので……体調が優れませんか?」


「い、いや、違う……なんでもない、心配をかけた……大丈夫だ」


 少し心配そうな顔を崩さずにそのまままた作業へ戻る。

日が沈んで少しした後、共に飯を食いに行った。


 ミリアは一体どんなやつだったのか、どう言った馴れ初めで仲良くなったのか、ナルヴァーにとってミリアという存在の大きさは、かなりのものらしい。


 確かにあの子はいい子だった。

鈴を転がしたように笑い、誰にも分け隔てなく接し、笑顔で関わりやすくて、そして……一切気がつけなかった。


 大変なことを最後の最後まで抱えて死んで逝った。


「……天国のミリアに、乾杯だな」


「ははっ、あいつが天国に行けてると思いますか?」


 なかなか酷いことを言いながら乾杯に応じたナルヴァーだった

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