娯楽島
「……つ、い、たぁぁあ!!」
大きく飛び跳ねて上陸するサクラ。
俺も少し飛んで着地するのは楽しみだから。
「今夜より2対2のトーナメント戦が行われます。
皆様それまでどうぞご自由にこの島を楽しんでください」
「一体私たち以外にどんなすごいやつが来ているんだろうな!?」
「あぁ、結局シード権はもぎ取ったし、それ相応の戦いが出来るといいんだけどなぁ」
シード権は、シード権を持ったもの同士での戦いになる。
そして中には勇者とかと戦える可能性もあると小耳に挟み、ならば是非とサクラと俺は頑張った。
足で蹴り飛ばし、尾で殴りとばす、蹂躙だった。
街の中には飲み屋やキャバクラ的なもの、カジノなどの賭け事の場。
「カルカトス、賭場があるな」
「やめとけ、俺たちは揃いも揃って運が悪い」
そういうとゲッとした顔をして
「わ、わかっている……さ」
「……はぁ、飯でも食いに行こう、今夜からの戦いを頑張るための英気を養おうぜ」
「構わんぞ!何を食う!?」
「実はこんなパンフレットが船の中にあってな、これを見てみろよ」
と指を指した所へやってきてまじまじと見つめる。
「……なになに?……『ドラゴンも参る激辛ピザ屋、竜狩り』………ほう?」
「どうだ?受けるか?」
「……っくく、私を誰と心得える、激辛だァ?火を噴く種族、火竜の末裔サクラ グランドを馬鹿にするとは愚かだ……いっちょやってやらァ!!」
〜10分後〜
「ギ……ブ……」
「さっ、サクラァ!」
半分笑い混じりに半分食べたところでひっくり返った。
「まさにドラゴンも参る激辛の言葉に嘘偽りなかったわけだな、サクラ」
「……いたひ、あんまりしゃべらへるな……」
下も顔もさっきまで食べていたピザと同じくらい真っ赤っかだ
「じゃ残りの半分は俺が頂こうかな……っぐぉ!!?」
なんじゃこりゃと言葉を発する前にひっくり返った。
「……っふは、カルカトォーース!」
笑いがこらえきれない様子でそう叫ぶサクラだった。
「……ははっ、こんな調子で私たちは果たして勝てるのだろうか?」
会場へお互いの肩を頼りにフラフラと進む。
「……別にぃ!?俺たちなら余裕!そうだろう!?」
そういうと、負けてられんと言った顔で
「全くだ!弱気なことなど言ってられるかぁ!」
方を組み二人三脚のままに走っていった。
会場につき、適当な挨拶と、カメラの方へピースをしてアピールも終わったところで、ずっとさっきから気になっていたことがある。
「なぁサクラ!あのチームってさ!!」
「あぁ、あそこの勇者チームのことだろう!?」
風の勇者フロウ、俺の知り合いと、もう1人は炎の勇者ファイロ。
「さー、トーナメント表を発表致します!!」
横断幕が落とされ、俺たちの名前を見つける。
そしてそのすぐとなりにいるのは、その勇者チーム。
ニヤリと俺とサクラが笑みを浮かべると、向こうは少し怯えている。
「ヒェッ、カルカトスさんあんな怖い顔してたっけ!?」
「一番苦手な火竜かよぉ……!?」
「サクラァ!やるぞぉ!!」
「あぁ任せろ!私たちの師匠の何かけて勇者に負ける訳には行かんなぁ!!」
ましてや相手はピュー フォルテのような頭のおかしい勇者じゃない。
片方には多対一で勝ったこともあるがそれは昔の話。
彼女も成長して、事実六十層攻略にはなくてはならない戦力のひとつだったと間違いなく言える。
「……さぁさぁさぁ!!いきなりクライマックス!!
まるで決勝戦のようなこのメンツと緊張感!
現代を生きる若者の中ではまず間違いなく最高峰の戦いが繰り広げられること間違いないでしょう!
今回は特別解説席に『ハルマ バルバ』様をお呼びしております!どうぞ!」
「あはは……ど、どーも剣聖のハルマ バルバです」
「「師匠!!??」」
つい最近まで見ていて当分見なくてもいいと思っていた師匠の顔。
頬にはこれみよがしに絆創膏をつけている。
どうせその下の傷はとうに癒えているだろうに。
「し、師匠!?」
「あはは、いきなりでし2人の戦いが見れることになって嬉しいよ、実は僕彼ら二人の特別講師を務めていてね、この顔の絆創膏は彼らに付けられた傷の戒めさ」
そう言って笑う彼の顔はいつもみたいに少し頼りなく、そしてそれでいて完結しているほどの剣圧を感じる。
「がんばれ、2人とも、そしてそんな2人に負けるんじゃないぞ、勇者2人とも!」
剣聖からの純粋なエール。
「2人とも勝てたら僕からご褒美だ、さっき竜狩りっていうピザ屋でね……」
「「やめてくれぇ!!!」」
「では、娯楽島での記念すべき第1回戦……初め!!」




