養う英気
「……っただいまぁ!!」
家に帰り、大きな声で叫ぶも、玄関先に既にたっているアイビーと目が合う。
既にサクラのパーティーメンバーをこちらに誘い、ラングとライト、そして、サクラの3人を家に入れる。
「おかえりなさい、カル」
久しぶりにアイビーと会って思うのが、やはりサクラと違っておしとやかと言いましょうか……まぁいい
「おぉ、この子が噂の彼女さんか」
「お邪魔します……」
「おぉ!アイビー!お前には礼を言うのを忘れてたな、ありがとう、六十層での恩は忘れない」
そう言って律儀に感謝を伝えるサクラ。らしくない……
「い、いえいえ、そんな気にしないで……ささ、ご飯できてますから」
「おぉ!それは感謝する!是非頂こう」
皆には既に伝えてある。
アイビーの料理が壊滅的であることは、既に伝えてある。
食卓に着く。
普通の見た目の食事に『なーんだ』と言った顔のラングとライト。
しかし一口、口に入れた途端に血の気が引いていっている。
俺もまた、やはり壊滅的な食事にもはや驚きを感じる。
「うむ、美味いな……お、これもなかなか悪くない」
そんな中、ただ1人パクパクと舌鼓を打ちながら食事を続けるサクラ。
ラング……目がまん丸だ。
「ほ、本当ですか!?
私あまり料理が得意じゃなくて……いつもカルにやって貰っているんです」
「あれ?シアは来てなかったの?」
「んーん、来てもらったよ、やっぱり美味しいよシアさんのご飯」
「あの人一人暮らし生活長いからなぁ」
「そろそろ結婚考えないと、って言ってたよ」
シアさんらしく大人びた口調で話すが、どことなくあどけない。
微笑ましいおかげで胃の中の毒素が中和される……気がする。
「シアって?」
「あぁ、俺の友達、聖職者の人だよ」
そう説明すると、ラングが少し顔を顰めて
「聖職者?」
「あぁ、嫌いなのか?」
「いや、最近妙な噂があってな、あんたのシアの教会か分からないけど、冒険者ギルドとか、教会とか、あとは病院とかだな、そこら辺で不審者がよく見られるようになっててな」
「……それって、いつ頃から?」
「ん?あぁ……2週間前とかかな?」
その辺の日付には少し心当たりがある。
魔王様が襲われたのもその頃だった。
それを共有しているアイビーがこちらを向く。
「何か知ってんのか?」
ラングが投げかけてくるが
「いや、大丈夫だよアイビー、シアなら心配ない」
そう言うと、ラングもただただ心配していただけかと思いながら……スープの手を止めてパンを食べる。
各々雑談なんかをして、サクラだけ泊まっていくことになった。
「なーんでお前は……」
「なに、相棒だからな、それに明日の夕方どこに行けばいいかもわからんし、久しぶりに風呂に入りたい」
「あぁ、そゆことか……2人ともも、あんまり元気じゃなさそうだし……帰れる?」
アイビーは洗い物してくれている。できた子だ……
「あ、あぁ……大丈夫だ」
「……僕が引っ張って帰るよ」
「ありがとうライト、ラングを頼んだぞ」
「あぁ、放映楽しみにしてるよ」
そうとだけ言って帰って行った。
「しっかしサクラ、お前よくパクパク食えたな」
そう言うと、さも当然と言った顔で
「なに、出してもらった飯は残す訳にはいかんからな、それに、あの子の健気な様子を見ていると可愛くって仕方なくてな」
「そっか、可愛いだろ、アイビー」
「はっ、貴様の惚気話に付き合うのはサラサラごめんだが、確かに愛くるしい子だな」
へぇ、こいつ今愛くるしい子って言ったな?奴じゃなくて?
「マジで気に入ってんだな」
「あぁ、強いやつには惹かれるしな」
なるほど同感だ。
「アイビー、洗い物手伝うよ」
「お!なら私も手伝わせてもらう!」
そう言って三人並んで洗い物をする。
「ちょっと狭い……サクラ、向こう行けよ」
「お前が場所を取ってるんだろ!?」
「ふふっ、仲良いんですね」
「まぁ、相棒だから……な?」
「はぁ……すーぐ調子に乗る」
呆れた奴だが……なんだそのドヤ顔は?
「洗い物終わったな……っし、お湯張ってくるよ」
「あ!私がやりますよ!」
「大丈夫、俺がやるよ……そーだな、棚に食器戻しておいてくれ、サクラも手伝ってくれる」
そう言うと、仕方ないなといった様子で皿を持つサクラ。
案外あの2人、仲良さそうでよかった。
アイビーは不思議なやつだ、誰にでも愛される、神様にもきっと愛されてる。
だって、俺たちが帰ってきたら……めちゃくちゃに強くなってる。
武者震いが止まらない……下手をすれば、ハルマさんよりも……?
「……まさかな」
馬鹿な事だ、圧倒的すぎる強さを体感して、なにかおかしくなったのかもしれない。
本当にそうなのだろうか




